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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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220/331

失敗

圭君視点です。

 康司君はお母さんに向き直って、しっかりと見つめている。

 さっきまでは視線を合わせないようにと俯いていたので、康司君のその変化にお母さんは戸惑っているみたいだ。


「母さん、ちゃんと俺の話を聞いて欲しい」

「え、えぇ……」

「まずあの女性の事だけど、あの人は瑞樹の大切な彼女だし、あの人と瑞樹は相思相愛だ。俺は2人の関係を壊したりしてないから」

「そう……2人の邪魔をした訳じゃないのなら、良かったわ」


 これで変な誤解はちゃんと解けただろう。

 そもそもそんな誤解をする方がどうかと思うけど、それは康司君のお母さんの中でそれだけ僕が問題だったという事でもあるし、僕自身が改善していくべき課題だ。

 そして康司君のお母さんにも課題はあるように思う。


「それから俺、さっき瑞樹とちゃんと友達になった」

「……え?」

「めっちゃ仲良くなって、一緒に買い物もした」

「そうなのね! 流石よ! 子供の頃は失敗しちゃったかもだけど、今こうして上手くいけたなら本当に良かったわ!」

「うん、俺も良かったと思うよ。でもさ、それで別に母さん達の立場は変わらないから」

「……は?」

「だから、俺と瑞樹が仲良くなろうと、あんたらに何の影響もないって言ってんの」

「康司?」


 急に凄く冷たい言い方。

 僕をからかっていた時によく似ている。


「あんたはさ、俺と瑞樹がダチにならなかった事をいつも失敗だって言って来てたよな?」

「……」

「なんで失敗したか、分かってんのか? あんたらのせいなんだぞ?」

「何を言ってるのっ! 大体そんな口の聞き方はね!」

「うるせぇんだよっ!」

「なっ!」

「いっつも人の話を聞かねぇで、自分等の意見ばっかり言いやがって! 親だからって、俺の事を自分の駒だと思ってんじゃねぇよ!」


 ……見守るとは決めたけど、これ大丈夫かな?

 なかなかに騒いでしまってるし、他のお客さん達の迷惑にもなっちゃってるんだけど……


「康司……あなた何を言って……?」

「俺は、あんたらが瑞樹家に気に入られるための道具なんかじゃない!」

「私達はそんな風に思った事なんて……」

「だったらなんで俺に瑞樹と仲良くするように言った? ガキの頃から何度も何度も……それがウザかったから、俺は瑞樹とダチになれなかったんだ!」

「それは違うわ! あなたは誤解してる! 瑞樹さんのところの子と仲良くしてあげてって私達が言っていたのは、あの子が寂しい子だったからよ! 無口で友達の1人もいないなんて、可哀想でしょ?」


 凄い怒り顔で康司君のお母さんを睨んでいるハルさんの頭を撫でると、驚いたように目を見開いてから照れたように笑ってくれた。

 僕のために怒ってくれている事を本当に嬉しく思う。


「それなら俺が瑞樹と仲良くやってるって言ったのを、どうして信じなかった?」

「だってそれは……」

「瑞樹家の人達の態度が何も変わってなかったからだろ? だから俺にもっと仲良くしろって散々言ってきたんだもんな?」

「違うわよ。あなたとあの子が全然仲が良さそうに見えなかったから、心配で……私達はちゃんとあの子の友達になってあげて欲しかったの! あの子が寂しい思いをしないように」

「これはさっき瑞樹本人から聞いた事だけど、あいつは俺の事をずっと友達だと思ってたんだとよ」

「え? それならなんで?」

「だよな、なんで親に俺と仲がいいって話をしないのかって、気になるよな?」

「……」

「家族の事とかで大変だったからだよ。家族思いの優しい奴だからさ……」


 康司君は静かに話していて、さっきみたいに他のお客さん達の迷惑になるような大声は出していない。

 でもその話にはちょっと語弊があるかな?

 僕が自分の話を親にしなかったのには、僕の性格が原因でもあるし……


「それに、仮に話してたとしても、あんたらが職場で厚待遇になるなんて事はねぇから。瑞樹の親がそんな人達な訳ねぇし」

「……だからそんな事は考えてなくて」

「それならこれからも期待するなよ。俺は瑞樹とダチになったけど、それであんたらに何か変わるわけじゃない。それを失敗だとも思うな」

「も、もちろんよ! これからも瑞樹さんのところ子と仲良くね! 今までは私達が言い過ぎだったから、変な勘違いをしてしまっていたのね。でももう大丈夫だから! 私達は何も言わないわ!」


 康司君の呆れたような顔……

 康司君のお母さんの事をよく知らない僕でも分かる。

 今のはどう考えても康司君の話を理解していない人の態度だ。

 これはおそらくまだ、僕と康司君が友達になった事で、自分達の環境がよくなると思ってる……


 そもそも僕と康司君が本当に友達になって一緒に遊んだりしていたら、そんな話はすぐに広まっていく。

 なんなら自分達で広めればいい。

 自分の子供は瑞樹の家の子供と仲がいいって。

 それがどの程度でこの人達の仕事に影響するのかは僕に判断出来る事ではないけど、それなりに影響する事は間違いないんだから。


 だからもう、康司君もこうするしかないんだろうな……


「あぁ、あんたらに何か変わるわけじゃないって言うのは違ったわー」

「ん?」

「もしかしたらあんたら、クビになるかもな?」

「今度は何を言い出したの?」

「全然気付いてねぇみたいだけどさ、ほら……」


 康司君はお母さんが向くようにと促した。

 手をしっかりと繋ぎ、寄り添い合っている僕とハルさんの方へと。


「……へ?」

「だから、さっきも言ったろ? 瑞樹とあの彼女さんは相思相愛なんだって」

「ま、まさか……」

「そ。あれがさっき一緒に買い物して作った、俺のコーディネート瑞樹」

「はあぁぁあ!?」


 それなりに事実でもあったけど、明らかに僕に聞こえる声で僕の悪口を言っていたんだ。

 康司君のお母さんからしたら、大失敗以外の何物でもないだろうな。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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