客観的
圭君視点です。
「お前は覚えてないんだろうけど、麗華は中学の頃のミスコン、3年間全部優勝だったんだ」
「う、うん……」
「で、そっからさらに高校も制覇して、今は大学の1年目も優勝」
「凄いね」
「だよな」
僕がこれ以上康司君と麗華さんの事を聞くのは失礼だと思うし、不用意な発言もしてしまうからもう聞かないつもりだったのに、何故か康司君は麗華の事を話してくる。
話さなくていいと打ち切るのも悪いし、興味を持たないで聞いているというのも良くないと思って、この話に興味を持つべく考えてみたけど、ミスコンってそんなどの学年にもあるんだなって事くらいしか思えなかった……
「そんな麗華が、俺に付き合おうって言ってきたんだ」
「あ、如月さんの方から告白したんだね」
「あぁ、軽いノリでな」
軽いノリの告白……
中学の頃に僕に告白してきた時のような感じだろうか?
「大学入って、少し経った頃だったな」
「じゃあわりと最近なんだね」
「あぁ。別れたのは秋に入ってすぐくらい……文化祭でミスコンがあるって知ってからだな」
「ミスコンの為に別れたの?」
「どうだろうな? 麗華に、『そろそろミスコンだし、私は康司だけの私でいるわけにはいかないから』って言われたんだ。笑いながら、ふざけた感じで……」
康司君は苦しそうな顔をしてる……
互いに思い合ってるって思っていたところで、そんなふざけたように別れを切り出されたら、それは辛いに決まってる……
「お前はどう思う?」
「えっ……」
「今の話聞いて、どう思った?」
「そ、その……康司君が辛かっただろうなって……」
「他には?」
「他……」
どうしよう……
如月さんの方から告白したんだって事や、付き合っていたのがわりと最近だったって事には少し驚いたけど、もう既に言った事だし……
あと思った事なんて、そんなにミスコンを毎年やっていたのに、自分が全く知らなかったって事くらいで……
「ごめん康司君……他に特に思った事がなくて、どう言ったらいいのか分からない……」
「……」
「僕に話してくれても、康司君を不快にさせちゃうだけだと思うから、その……これ以上話さない方が……」
「いや、そんなお前だから話したんだよ」
「え?」
「麗華にフラれた時の言葉、教えたのはお前がはじめてだ」
僕にはじめて教えた……?
康司君が言われて辛かった言葉を?
康司君は友達だってたくさんいるはずなのに、そういう皆には相談していないって事なんだろうか?
「付き合ってたのも、フラれたのも皆知ってるけど、なんて言われたのかとかは誤魔化してた。からかわれて、バカにされるのが嫌だったからな」
「バカにされるって、友達でしょ?」
「友達だろうと、からかわれるもんだろ? それが悪いとは思わねぇけど、やっぱり嫌なもんだからな。特に、そんだけミスコン獲ってる奴と俺が、釣り合うわけないだろって言われるのが嫌なんだ。自分でも良く分かってるから……麗華が最初から本気じゃなかったって事くらい……」
よく分からないけど、康司君は今の話を聞いた友人達に、如月さんと釣り合わないって言われるのが嫌だったって事なんだよな?
でも釣り合うかどうかなんて、他人が決める事じゃないだろうに……
「でもお前は俺をからかわないから」
「そ、それは……」
「あんまり興味がないからだろ? だからこそ、客観的な意見が聞けると思ってな」
客観的な意見と言われても……
「お前は、俺がどうするべきだと思う? もしくは、どうしてたらよかったと思う?」
「え……」
「思った事をそのままいえばいいって。やっぱりさっき言ってたみたいに、俺から告白するべきだと思うか?」
「うーん? 康司君は如月さんの事が好きなんだよね?」
「あ、あぁ……」
「それなら告白はするべきだと思うんだけど……」
「けど?」
「そもそも、どうして別れたの?」
「は?」
「笑いながら、ふざけた感じで別れ話をされて、辛かったんだよね? それなのに、どうしてそれを抗議しないで、受け入れて、別れたの?」
「だ、だって、麗華が別れようって……」
「それは如月さんの意見であって、康司君は別れたくなかったんでしょ?」
「……」
あ、これは……僕がまた失礼な事を言ってしまっている感じだ……
でも、どうするべきだったのかって聞かれたら、そりゃ別れなければよかったんじゃないかとしか思えなくて……
「その、ちょっと話は違うかもしれないけど、僕はハルさんが離れようとした時も無理矢理に抱き締めたし、ハルさんが僕の告白を無視して遠くへ行ってしまいそうになった時も、無理を言って行かないようにしたから……」
「……そら、やべぇな」
「あ、うん。改めて言うとやばいかも……でも、そうしてちゃんと僕の思いも伝えたから、ハルさんにも分かってもらえたんだと思う」
「つまり俺は、俺の思いをちゃんと麗華に伝えるべきだったってことだな……」
参考になったかは分からないけど、僕の話を聞いた康司君は何かに気づいたみたいに、ふっと笑った。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




