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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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置き換え

圭君視点です。

「やっぱりカジュアルな感じがいいよな」

「え、あ、うん……」

「お前、何色が好きなんだっけ?」

「黒かな?」

「黒? ならこっちとこっちならどっちだ?」

「どっちもいいと思うけど……」

「……そうかよ」


 何故か僕の服も買う事になったので、康司君がコーディネートを考えてくれている。

 ただ僕はこういう事に疎いから、曖昧な返事しか出来なくて、康司君も少し苛立ってしまっているみたいだ。


「その、ごめん……」

「あ?」

「折角考えてくれてるのに、曖昧で……」

「別にいい。因みにだけどさ、あの人は何色が好きなんだ? ピンクか?」

「ハルさん? ハルさんはコバルトブルーが好きだよ」


 ハルさんの髪がピンク色なのは地毛らしいし、ピンク色が好きで染めている訳じゃない。

 でも地毛がピンク色の人なんている訳がないと誰もが思うからこそ、好きな色に染めているんだと当たり前に思われてる。

 もちろんそれを話す事は出来ないけど。


「コバルトブルー? なんだその拘り……」

「前に僕が好きな色を聞いた時、そう言ってたんだ。普通に青って言わなかったから、コバルトブルーが特別好きなんだと思うよ」

「それなら、コバルトブルーっぽい色のワンポイントがあった方がいいな。フォーマルな感じにして、カフスボタンとか……でも、やっぱりカジュアルな方が……」


 僕の服のコーディネートを凄い真剣に考えてくれている。

 それも、これから見せる相手を喜ばせる配慮までして……


「ありがとう、康司君」

「こ、これは、俺と麗華との勝負でもあるんだ。別にお前の為だけにやってる訳じゃないし……」

「康司君って、如月さんと付き合ってるの?」

「……って、はぁ!? お前、バカっ! 何、急に言い出してんだよっ!」

「あれ? 違った?」


 小学生の頃の事はあまり記憶にないけど、中学生の時はああして話すような仲だったんだし、今もこうして気にしてるんだから、てっきりそうだと思ったのに。

 まぁ如月さんはミスコンに優勝してるくらいだし、皆から好かれる人であろうとしてたんだから、康司君が如月さんを好きだとしても付き合ったりはしてなかったのかな……と、思った矢先、


「付き合って()じゃなくて、付き合って()なんだよ……」


と、康司君は残念そうに言った。


「なんか、ごめん……」

「別にいいよ。こっぴどくフラれたとかじゃねぇし」

「今も仲いいもんね」

「麗華は俺以外とも仲いいさ」

「そうなんだ」


 嫌われてた僕と比較したってしょうがないけど、如月さんの康司君と話す感じは気楽だった。

 如月さんも康司君の事をそう悪くは思ってなさそうだったのに。


「また付き合ったりしないの?」

「……お前さ、結構直球だよな」

「え?」

「こんな話、恥ずかしいし、普通はしないだろ?」

「あー、そうだね……」


 前に熊谷さんにも恥ずかしくないのかと言われた事があるし、多分僕は羞恥心にも疎いんだ。

 ……いや、それ以前の問題か。

 これは、相手の気持ちが全く考えれていない結果なんだから。


 今の状況を自分に置き換えて考えると、僕がハルさんと別れる事になったとして、それでもまだ友人のような状況でありつつ、僕はハルさんの事が好きだという事になる。

 そしてそんな時に部外者にまたハルさんに告白しろだなんて言われたんだ。

 その相手を鬱陶しいと思うに決まってる。

 そんな事も考えられず、思った事を口にしてしまうだなんて……


 こんな事を聞いてはいけなかったんだ……

 康司君に悪い事をしてしまった……


「本当にごめん……あ、あっちの服屋さんに行ってみよう?」

「瑞樹、今なんでそんな事を言ってきたんだ?」

「え?」

「俺の恋話に興味があったのか?」

「そ、それは……」


 もう聞かない方がいいと思って、話を変えようと思っていたのに、康司君から聞かれてしまった。

 これはどう答えるべきなんだろう?

 正直に言うのが失礼だっていうのは分かってるけど、さっきこれからは思ってる事を素直に話すって約束したばかりだし……


「その……正直に言うとそんなに興味はない、かな?」

「……」

「興味なかったから、好きなら告白すればいいのにってくらいの感覚で言っちゃったんだけど……えっと、それって凄く失礼だった事に後から気付いて……」

「……気付いただけ成長だな」

「う、うん……」


 この事に気付けたのは、自分にも大切な恋人がいたからだ。

 人を好きになる気持ちも、告白する勇気を捻り出す経験もしてきたから、自分に置き換えて考えれた結果で気付けただけだ。

 つまり僕は興味のない事に対して、ただ思った事を言ってしまう最低な奴だという事で……


「なんかいっそ、清々しいわ。お前は俺をからかうつもりもなんもなく、ただ思った事を言ったんだもんな」

「ごめん。今までもそういう失礼、あったよね?」

「俺が頑張っておどかしてた時、そんなところにいたら怪我するよって、真顔で言ってきた時とか?」

「うん、覚えてないけど……」

「興味なかったんだろうな」

「……ごめん」

「もう謝んなって」

「……ありがとう、康司君」

「ったく……」


 ハルさんはまるで長所のように物事の受け入れが早いと言ってくれるけど、それはすぐに受け入れてしまって興味を持たないって事なんだ。

 なんでもそういうものなんだって納得して、納得出来なかった事に対しては衝動的に対応する。

 相手の気持ちも考えないで突発的に抱きしめたり、思った事をすぐに口に出したりして。

 こんなのは間違いなく僕の短所だ。


 自分が壁ばかりつくってしまっているのは分かっていたけど、こんなんじゃ相手にも壁を作らせてしまう。

 こうして気付けたからには、ちゃんと改善していけるといいけどな……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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