相互
圭君視点です。
康司君に友達になってもらえるように頼むと、それはおかしいと言われてしまった。
ハルさんもどちらかといえば嫌なようで、僕を心配してくれている。
でも、今こうして話していて思ったけど、やっぱり僕は康司君とちゃんと友達になりたいと思うから。
「これは僕の自己分析なんだけど、僕は結構衝動的に行動してしまうみたいなんだ」
「そうか?」
「うん。ハルさんは僕の事を物事の受け入れが早いって言ってくれるけど、多分その反面、受け入れられない事に対しては衝動的になってしまうんだと思う」
「あー、でもそうかも……昨日とか、急に抱きしめてたよね……」
「それは私も思いますよ。圭君は結構突発的に……あっ、いえ……」
「えぇ? なになにー? 今何を思い出したのかなぁー?」
「かっ、からかわないで下さい……」
「あははっ、可愛いー」
僕が自分の事を分かってもらおうと自己分析を話すと、同意してくれたハルさんは急に顔が真っ赤になった。
それを如月さんにからかわれている。
確かに、凄く可愛い……
「そ、その人……お前と正反対なんだな」
「え?」
「感情がめちゃくちゃ表情に出てる……」
「あぁ、そうだね」
康司君がボソっと、盛り上がっているハルさん達には聞こえないくらいの声量で、話してくれた。
ハルさんの可愛い姿が色んな人に見られてしまうというのは、なんか勿体ないような、悔しいような気持ちにもなるけど、ハルさんの事を恐ろしい人だと誤解されたままなのは嫌なので、こうしてハルさんの可愛さが分かってもらえた事は良かったと思う。
「でもそうかー、俺等の話聞いて都会の方に行ったんだもんな。確かに衝動的か……そういやお前、俺達と遊んでた時に急に走って帰った事あったよな」
「え、ごめん……覚えてない」
「俺達に何にも説明しないでさ、いきなり走り出したんだ。次の日に昨日のは何だったんだって聞いたら、珠鈴が心配だったって。しかも、別に何もなかったとかって……」
「……うーん? ごめん、本当に全く思い出せない」
「おいっ!」
珠鈴の事を心配して急に走って帰った事か……
全く記憶にないけど、父さんも母さんも基本的に家にはいなかったし、お手伝いに来てくれる人の都合で、珠鈴が1人になっちゃう時もあったんだよな。
それで結構珠鈴の事ばかり考えてた時もあったから、そういう頃の話だとは思うけど、全く記憶にない。
でも、説明もせずに急に帰ったんだから、それは一緒にいた康司君達にとても失礼だったんだ。
「凄く今更だけど、ごめん……」
「別に俺も今なんとなく思い出しただけだから。言われてみたら確かに衝動的だったなって」
「妹思いの、優しいお兄さんじゃないですかー」
「いや、でも普通妹が心配だから帰るくらいは言うでしょ? 何もなくて良かったなら、それも康司から聞かれる前に自分で言うべきだし」
「本当そのとおりだと思う。僕はそうして康司君に聞いてもらえる事に甘えてたんだ」
「それ、甘えっていうのか?」
「うん」
「心配が落ち着いて安堵した事で、うっかり忘れるというのはよくある事ですよ。だから圭君のそれは甘えではありません」
「ハルさんは瑞樹君に甘すぎなんじゃない?」
「そんな事はっ!」
「それは僕もそう思うよ」
ハルさんは僕を庇ってくれるけど、僕が失礼だった事は間違いない。
しかも覚えてないんだから、最低だよな……
「それで結局のところ、瑞樹君は衝動的にハルさんに何をしたの?」
「え……」
「あー、また真っ赤になったー」
「お前ホントに何したんだよ」
「ハルさんに対して衝動的になった事が多すぎて、どれの事を言えばいいのか……僕と離れようとしていたハルさんを無理矢理引っ張って抱きしめたりとか?」
「わぁおっ! 思った以上に過激!」
「お前、この人にそんな事したのか!? てか離れようとしてたって、振られそうになってんじゃねーか! あんだけ相思相愛だとか言ってた癖に」
あ、これは否定しないと!
僕の言い方が悪かったせいで、別れ話をしてきた恋人を無理矢理抱きしめたみたいな話になっちゃってる。
「違うんだ。これはまだハルさんとちゃんと恋人になる前で、離れそうだったっていうのも別れるとか僕の事が嫌いとかじゃないから!」
「それはそれでやべぇだろ! 何で恋人でもない人を抱きしめてんだよ!」
「それは、その……無事だった事に安心して……その前に交通事故とかの話も聞いてたし、ハルさんの怪我が完治したかも分からないのに、ハルさんがいなくなってたからで……」
「いなくなった?」
どう説明しようか……
ハルさんが猫だったとかは言えないし……
「私が怪我をしていたところを圭君に助けてもらったんです。それで少しの間圭君のお家でご厄介になっていたのですが、怪我も治ったので帰ったんです。でもちゃんと、お手紙を残しましたよ?」
「それならハルさんは悪くないね! 何も言わないで走って帰る奴と違って」
「ごめん……」
「いや、世話になってたんなら、ちゃんと本人がいる時に挨拶をして出ていくもんだろ? それを手紙で終わらせるとか」
「確かにそうでしたね……後で改めてのご挨拶には伺おうと思っていましたが、手紙にその事を書きませんでしたし……」
「あの時のハルさんには用事もあって、急いでたんですから仕方ないですよ。僕が勝手に心配してただけですから」
「お前、彼女に甘すぎだろ……」
「そんな事はないけど?」
「いえ、ありますよ!」
「そうかな?」
「ってか、この会話」
「あぁ」
「そうだね」
「ふふっ、そうですね」
相互で同じような会話を繰り返していたおかしさに、思わず4人で笑ってしまった。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




