打ち解け
ハルさん視点です。
圭君と麗華さんと一緒に、デパートへとやって来ました。
こういう大きなお店というのは、やっぱりテンションが上がってしまいますね!
「まずはあのお店だね!」
「はい!」
麗華さんはこのデパートにはよく来るそうで、殆どのお店に何があるのかをご存知だそうです。
ですので麗華さんの案内のもと、色んな服屋さんを回っていきます。
そして、このお店でも、
「ハルさん、これとかどう? あ、こっちも! 試着してー」
と、麗華さんに試着を勧められ、
「ハルさん! 本当によくお似合いですよ! とても可愛らしいです! ハルさんは本当に何を着ても似合いますね!
と、圭君が褒めてくれるんです。
なのでどんどん買うものも増えていってしまって、荷物持ちをしてくれている圭君に申し訳なくなってきました。
「圭君、私も持ちますよ?」
「いえ、僕が持ちたいですから」
「そうですか?」
「はい」
圭君は笑ってくれていますが、やっぱり心配です。
服とはいえ、これだけの量では重いですからね。
「次はー」
「れ、麗華さん……少し休憩所しませんか?」
「ん? あー、そうだね。じゃああっちのカフェに行こう!」
「そうですね」
圭君に休んでもらう為にと休憩を提案し、カフェに向かう事にしました。
その途中で、
「麗華……?」
と、声を掛けてきた男性が……
ん? この方、見覚えがありますね。
以前珠鈴ちゃんがぶつかってしまった人です。
「あ、康司。康司も来てたんだ」
「あぁ、てかお前……誰と一緒に……」
「ハルさんだよ。それにほら、瑞樹君も」
「は? え……なっ!」
「これはこれは瑞樹さんの! いつもお父様には良くしていただいておりますよ」
「あ、はい。こちらこそ、いつもありがとうございます」
この人が昨日も少し話に登場していた康司さんだったんですね。
康司さんはご家族での買い物に来られていたようで、お母様と思われる女性と、弟さんと思われる少年と一緒でした。
そしてその康司さんのお母様は、圭君にすぐに挨拶に行っています。
圭君は優しく笑って対応していますが、少し困っているようにも見えますね。
「この子とも仲良くしてもらって、本当にありがとうございます。ご両親にもよろしくお伝え下さいね」
「ちょっと母さん!」
「ほら康司! あなたもちゃんと挨拶をしておきなさいな。いくらお友達でも、礼儀は大切なのよ?」
「いや、だから……」
なかなかに溌剌とされたお母様ですね。
康司さんもたじたじです。
そして、若干ですが……腹立たしいです。
私が怒るのは筋違いだというのは分かっているのですが……
「ねぇ、あんた誰?」
「え、はい?」
「あんた、誰なんだよ?」
「私はあちらの圭君とお付き合いさせて頂いてる、ハルというものです」
「ふーん……ってことは、この間兄貴がビビって……」
「わぁーっ! バカ! それ以上言うな!」
弟さんと思われる方が私に声を掛けてくれていたので話していると、康司さんが慌てて弟さんを止めにきました。
何を言おうとしていたのかは少し気になりますが、それよりも今、折角こうして康司さんが私の前に現れたんですからね。
このしっかりとお話するチャンスを逃すわけにはいきませんね。
「お久しぶりですね、康司さん」
「あ、あぁ……その、お久しぶりです……」
「少しお話をいいですか?」
「いやっ、そのっ! これは不可抗力ですっ!」
「はい?」
「俺にはどうする事も出来なくてっ! だからっ! そ、その……すみませんっ!」
「えっと……」
いきなり謝られてしまいました。
それに、どうも怯えられているみたいですね。
「あの、康司君のお母様。もし良かったら康司君と少し話をさせてもらえませんか? 僕も久しぶりに話したい事がありまして」
「ど、どうぞどうぞ。康司は荷物持ちに連れてきただけですからね~では」
「あ、ちょっと……」
圭君がお母様の方に話してくれた事で、この場には康司さんだけが残りました。
あのお母様の方にも言いたい事があったのですが、どうも圭君はそれを望んではいないようですね。
「あの……」
「さっきの不可抗力とは、どういう意味ですか?」
「それは、その……」
「まぁまぁハルさん。康司君、ちょっと落ち着いて話そうか」
「あ、あぁ……瑞樹、お前凄いな……」
「そうかな?」
「……うん、私も凄いと思うよ」
圭君は康司さんに笑い掛けています。
そして、そんな圭君に康司さんは凄いと褒めていて……麗華さんも……?
妙に打ち解けているようにも見えますが、一体圭君の何がそんなにも凄いと思われたのでしょうか?
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




