如月麗華
珠鈴視点です。
学校から帰ってきた私は、衝撃を受ける事になった。
それはハル姉が帰って来てくれていたという事じゃない。
もちろんそれは嬉しいことだけど、そのハル姉は楽しそうにとんでもない事を言ってきたんだ。
それはなんと、明日お兄ちゃんとハル姉はあの如月麗華と一緒に買い物に行くことになったというんだ!
正直全く信じられない……
というか、心配でしょうがない……
如月麗華はこの辺ではかなりの有名人で、お兄ちゃんの同級生でもある。
そして、お兄ちゃんの事をバカにしまくっている奴だ。
お兄ちゃんは名前も覚えていなかったみたいだけど、昨日家に訪ねてきたっていうのも、特徴から考えて如月麗華で間違いなかった。
如月麗華のせいでお兄ちゃんがまた暗くなっちゃったらどうしようとか、お兄ちゃんにお客さんの対応をさせたのが失敗だったとかって、昨日はお母さんも心配していたのに、何がどうなってそんな事になってしまったんだろう?
「麗華さんはデパートに行こうと言っていました。こちらのデパートがどんなところなのか、とても楽しみですね」
「あ、うん……」
「一応は麗華さんと私の服を買う予定なのですが、珠鈴ちゃんは何か買って来て欲しいものとかありますか?」
「ううん……」
ハル姉は明日を楽しみにしているみたいだから、余計な事が言えない……
何か嫌がらせ目的で、ハル姉を騙してるんじゃ……
でもハル姉は簡単に騙されたりはしないだろうし、何か嫌な事を言われてもちゃんと言い返せる人だから、そういう心配はしてないけど……
でもお兄ちゃんも一緒だっていうのがなぁ……
私も一緒に行きたいけど、学校があるから……
「珠鈴、心配してくれてありがとう。でも大丈夫だ、ちゃんと話したから」
「そ、そうなの?」
「如月さんは、本当にハルさんと仲良くなりたいだけだよ。でも、それだと僕が寂しいままだから、着いていくっていうだけ」
「うん……」
そういうお兄ちゃんは優しく笑っていて、本当に心配は必要ないように思えて来る。
でもお兄ちゃんは如月麗華がどんな人なのかを知らない……
ちゃんと話したとは言ってるけど、お兄ちゃんもハル姉も優しすぎるんだから、簡単に如月麗華を許してしまっているに決まってるら。
……と、そんな事を考えていたんだけど、次の日の朝、家を訪ねてきた如月麗華は、私の知る如月麗華じゃなかぅた。
「ごめんくださーい」
「はーい、あっ! 麗華さん。おはようございます」
「おはようございます、ハルさん。ちょっと早くきすぎちゃったかな?」
ハル姉に笑って迎えてもらって、とても楽しそうに笑ってた。
それに、前はアクセサリーをもっとじゃらじゃらと着けてて、威張ってる感じの人だったのに、今は軽くしか着けていない。
全体的に雰囲気がかわって、普通に綺麗なお姉さんにみえた……
「如月さん、本当に早いね。でももう少し待ってもらうから」
「私はハルさんと買い物に行きたいだけだし、瑞樹君は来てくれなくてもいいんだけど?」
「それは無理だね。とりあえず、上がってて」
「まぁいいか。お邪魔しまーす……あ」
「……どうも」
「はじめまして、珠鈴ちゃんだよね? よろしくー」
「……学校があるので」
「うん、頑張ってね~」
お兄ちゃんとも本当大丈夫そうに話したかと思うと、私にも話しかけてきた。
私が知っていた如月麗華のイメージとは違い過ぎてるな……
でも、これなら本当に心配しなくても大丈夫そうだ。
「ねぇ、ハルさん。一応色々と雑誌持ってきたんだけど、ハルさんはどっちが好き? こっちも似合いそうだけど、これとか良くない?」
「私はこっちの色が好きですね」
「ハルさんって結構大人しめの服が好きなんだね。たまには冒険って感じで、こういうのもいいと思うよ」
「うーん、そうですね~」
「今日はたくさん試着しましょうね!」
「はい、ありがとうございます」
なんか、大丈夫そうなのはいいんだけど、異様にハル姉と仲良くなっているようにみえる。
あれだと流石に私も嫉妬しちゃうな……
嫌がらせとかの心配は必要なさそうだけど、お兄ちゃんが如月さんに嫉妬してしまわないかが心配だな。
ん? これは、そういう嫌がらせなのか?
でもそんなのはハル姉が防ぐはずだし……
やっぱり気になる!
私も一緒に行けたら良かったのにな。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




