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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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204/331

切っ掛け

ハルさん視点です。

 麗華さんは"有名人"という事にとても執着している方でした。

 自分が有名人になるためにとたくさんの努力をされていたのも分かります。

 ですがやはり、そのために圭君が利用されそうになっていたというのは、聞いていてあまり気持ちのいい話ではありませんね。


「事情は分かりましたが、有名人になるために圭君を利用しようとして、失敗したからと圭君を恨むというのは、あまり感心しませんね」

「それは分かってる……でも、私の魅力が伝わらないのは感情のないロボットだからだって納得してたところで、それは違ったんだって気づかされたんだもん……そんなの、腹立って仕方ないじゃん」

「……ハルさんの事を聞いたから?」

康司(こうじ)に言ったらしいじゃん。自分は彼女と相思相愛だって」

「あ、うん。言った……」

 

 康司さん? その方も圭君の同級生の方でしょうか?

 ですが、圭君の話でご友人は出来なかったとの事だったので、その人は圭君にとってあまりいい思い出のある方ではないという事になります。

 彼女と相思相愛だというような、そんな照れる発言をした相手が仲のいい友人ではないとなると、おそらく圭君はその康司さんに何かからかわれるような事を言われ、言い返したという事なのでしょう。

 そしてそれは、圭君を感情のないロボットだと称する方達には、かなりの衝撃だったと……


「私達の知ってる瑞樹君は、そんな事をいう人じゃない。しかも康司の話では、瑞樹君の彼女はとんでもない美人だっていうの」

「私はその康司さんに会ってます?」

「うん、なんか怒られたって言ってたよ?」

「あぁ……」


 以前珠鈴ちゃんと買い物に行く道中でお会いした人達の事だったんですね。

 確かにお会いしていますし、なんとなく納得です。


「私には瑞樹君をロボットから人に変える事は出来なかったけど、その美人には出来た。しかも私以上の美人……それじゃあまるで、瑞樹君が私を知らなかったのは、私に何の魅力もなかったからみたいじゃない!」

「それで、僕達の仲を拗らせようと?」

「……そう。でも、全然思ったようにいかなかった……ロボットじゃなくなった瑞樹君なら、私を見て何か思う事があると思ったのに、相変わらず私の事は知らないし」

「ご、ごめん……」

「しかも感情なんてないと思ってたのに、しっかり感情があるし……」

「圭君は、私が初めて出会った時から、ずっととても優しい人ですよ。感情がないなんて事はありません」

「……そうだったみたいだね」


 これは、圭君がずっと悩んでいた事でもあります。

 周りの人達も本当にずっと圭君を誤解したままだったんですね。

 ちゃんと誤解は解いておきたいと思います!


「圭君は優しすぎるが故に、物事の受け入れが早すぎるんですよ。だからあまり動揺していないように思われますし、表情もあまり変わりませんね。ですが、だからこそといいますか、笑った時には尋常ではない可愛さがありますし、行動力もあって凛々しいですし、とても家族思いで……」

「ハルさん、ハルさんっ! そういうのは、いいですから……」

「えっと……」

「ははっ! ハルさんって、本当に瑞樹君が好きなんだね」


 麗華さんはとても楽しそうに笑っています。

 圭君を褒めている話を聞いて、こんな風に笑えるんですから、もう圭君への怒りというのは落ち着いたと思っても良さそうです。


「感情、あったんだね……本当に、単に私に興味がなかっただけ……」

「それは、僕の悪いところでもあるから……本当にごめん」

「……は? 何が?」

「僕はずっと受け身で過ごしてたんだ。自分から何かを知ろうと行動することもしないで、ずっと皆に甘えて過ごしてた」

「……瑞樹君が、皆に甘えてた?」

「うん。康司君の事もそうだけど、僕は話しかけてくれる皆に甘えて、自分で何かをしようとはしていなかった。ずっと周りの皆に合わせていただけで、自分から行動した事なんてなかったんだ。だから確かに指示された事だけを実行するロボットだったとも言える」


 圭君は頼まれれば何でも請け負ってしまうタイプです。

 しかも優し過ぎるが故に、頼まれても本当に嫌だと思う事はないんでしょう。

 嫌だと示す事もなければ、やりたいと示す訳でもない。

 となれば、感情がないように思われてしまうのかもしれません……


「でも、それはハルさんと出会えて変われたと思うんだ。そしてハルさんに出会う事が出来たのは、如月さんのお蔭でもある」

「は? 何で?」

「如月さんと康司君が僕の事を話しているのを聞いたから、僕は都会に行こうと思ったんだよ。家の事なんて関係なしに、僕を僕として見てくれる人に会いたくてね。まぁ皆に甘えてた分、人にどう話しかけていいのかが分からなくなって困ったりもしたけど」

「そうなんだ……でも、ハルさんに会えたんだね」

「都会に行ってなかったら会えなかった。あまりいい思い出がないとはいえ、あの中学の頃があったからこそハルさんに会えたんだと思えば、それは良かったとも思えるんだ。だから、ありがとう」

「なんか、お礼を言われるのは違う気がするけど……でも、良かったね。私もなんか、話してたらスッキリしたし、ハルさんに会えて良かったと思う」


 圭君も麗華さんも、私の方を見ながら優しく笑ってくれています。

 私が特に何かをしたという訳ではありませんが、こうして穏やかに笑う2人を見られたというのは、とても嬉しく思いました。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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