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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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202/332

内心

圭君視点です。

「では、まずはあなたの名前を教えて頂けますか?」

「麗華だよ。如月麗華」

「麗華さん、ですね! あ、いきなり馴れ馴れしくてごめんなさい。如月さん」

「ううん、麗華でいい。そっちで呼ばれる方が好きだから」

「ありがとうございます。では、麗華さんと呼ばせていただきますね」

「じゃあ私もハルさんって呼んでいいの?」

「もちろんです!」


 珠鈴の話では、ハルさんは人の名を呼ぶ時は、固有名詞である名前の方を呼び、名字を呼ぶのは失礼だと思っていたらしい。

 だから初対面の僕の事もいきなり圭君だったし、熊谷さんの事も義勝さんと呼んでいた。

 でもそれは僕達と感覚が違うのだと珠鈴が説明してくれたから、今はこうして名字で呼ぶべきかを確認するようになったんだ。


 それでもこの人……如月さんが、名前の方でいいと言うなんて……

 しかもハルさんもハルさんって呼ばせてるし……

 本当にハルさんと仲がいいみたいになってしまったな。

 それが悪い事ではないんだけど、少し複雑だ。


「では、麗華さん? 麗華さんはどうして圭君と私の仲を拗れさせようとしたんですか?」

「そんなの、瑞樹君の事が嫌いだからに決まってるでしょ? 大っ嫌いな奴が美人な彼女と楽しく笑い合ってるだなんて、腹立つ事この上ないよ。だから壊してあげようと思ってね」

「なるほど?」

「……あの、確かに名前を覚えていなかったのは、本当に僕が悪かったと思う。でも、僕はそこまで君に嫌われるような事をした覚えはないんだけど……?」

「そうだろうね。瑞樹君にはそんな覚えはないと思う。なんなら何にも覚えてなんていないんでしょ? 何にも興味のない、心のない人間だったんだから」

「麗華さん、それは聞き捨てなりません。圭君はとても優しい方ですよ。心がないなんていう事は」

「ああうん。心がないっていうのは、非道って事じゃないよ。単に心がないの、感情がないというか……」


 それは、僕がずっと言われ続けていた事だ。

 何を考えてるかも分からない、感情のない奴……

 なんなら、昨日も如月さんは僕にそう言っていた。


 でも、そうじゃないってハルさんが教えてくれたんだ。


「昨日も言ったけど、僕にも感情はちゃんとあるよ」

「そうだったみたいだね。昨日は正直ビックリしたよ。あの瑞樹君がこれなのかってね。それと同時にかなりムカついた。だから少しからかってやろうと思ってたのを、ぐちゃぐちゃに壊してやろうと思ったんだ」

「え……」

「瑞樹君に感情がなければよかったのに……」


 嘘をつくのをやめ、普通に話してくれるようにはなったけど、やっぱり何を言ってるのかが分からない。

 僕に感情があろうとなかろうと、如月さんには関係のない事のはずだ。

 そんなのは嫌われる理由にはならないだろうに……


「圭君に感情がなかったら、麗華さんは圭君を嫌いではありませんでしたか?」

「うん、そうだよ。だって、感情のない奴が私を貶したとしても、そいつがおかしかっただけって思えるでしょ? なんならずっとそう思ってたし」

「僕が君を貶した? それはもしかして、あの告白の事を言ってるのかな?」

「それ以外に私と瑞樹君に接点なんてないでしょ? もっと早くに気づけよ」

「うっ、ごめん……」

「だから、うざいから謝んな」


 仕方のない事なんだろうけど、ハルさんに対しては普通に話しているのに、僕に対してはキツい……


 でも、僕はあの告白にちゃんと返事をしなかっただけで、如月さんを貶した覚えはない。

 そもそもあの告白を打ち切って会話を終わらせたのは如月さんの方だし、そのあとの接点なんて、僕が如月さん達が話しているのを盗み聞きしてしまったくらいのはずなのに……


「告白を断られた事を貶されたと思われた訳ではないんですよね? その告白は、麗華さんの方から打ち切ったんですから」

「そうだよ、別に告白の返事はどうでもいいの。私が打ちきらなかったらどうせオーケーだったんだから。でも瑞樹君はその前に、とんでもない事を言ってきた……」


 また凄い顔で睨まれた……

 あの時、如月さんとはそんなに話していないはず……

 だから僕が言ってしまったというとんでもない事も、すぐに思い出せるはずなのに、全く心あたりがない。

 そもそも僕はあの時も、如月さんの事をよく知らなかったから……ん? そうだ、僕はあの時……


「僕は、あの時も君の事を知らなかった……」

「うん」

「それが君は許せなかったんだね。だから、僕が君を知らないという言葉をあれ以上聞かないようにするために、あの告白も打ち切った」

「……そうだよ。やっと分かったんだね、()()()()()()()


 凄く嫌みがかってる言い方だ。

 僕が有名人か……


 確かにそうだろう。

 家はこのあたりでは一番大きな農家だし、僕とは仲良くしておくように言われていた人までいたくらいなんだから。


 そんな僕に存在を知られていなかった如月さん。

 それは僕からしたら何でもない事だけど、如月さんにとってはかなりの屈辱的な事だったんだろう。

 価値観は人それぞれ違うものだから……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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