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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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200/332

上手い言い方

圭君視点です。

 ハルさんと元同級生さんが話しているのが分かって、急いで近いたけど、ハルさんに変な誤解をされている訳じゃなかった。

 そんな僕達よ様子が気に入らないようで、元同級生さんは怒ってしまっている。

 しかも、


「あなたが何をしたいのかは分かりかねますが、私にこのような偽証は通用しませんよ?」


 と、ハルさんは元同級生さんに言ったので、余計にハルさんを睨んでいるし……


「偽証って……私は別に、嘘なんてついてないっ!」

「そうですね。確かにあなたは嘘をついている訳ではないのかもしれません。ですが、相手が勘違いをするようにと、敢えて混乱させるように話していますよね?」

「な、何言って……」

「私はこれでも、偽証を暴く仕事をしていますからね。全ての嘘とまではいきませんが、分かりやすいものは分かります」

「……」


 とても冷静に、相手を宥めるように話すハルさん……

 ちょっと僕の記憶を消した時とも雰囲気が似てる気がする……


「最初に私に自分を圭君の元カノさんなのだと仰いましたよね?」

「だって、私次第で瑞樹君と付き合えていたんなら、彼女かどうかは私が決める事じゃん! それは瑞樹君も昨日認めてる事だから。それなら元カノで間違ってないでしょ? 私は正真正銘の瑞樹君の元カノなの!」

「では、そういう事にしておきましょう」

「は?」

「ハルさん?」


 そういう事にされるのは嫌なんだけどな……


「これは認識の違いですからね。あなたが自分は圭君の元カノだと()()()認識しているのなら、それでいいです」

「……」

「問題なのは、そういう状況で圭君の元カノさんになったのにも関わらず、そこの説明はしないで、私に自分は圭君の事が好きだとか、圭君を返してと言った事です」


 この人、そんな事も言っていたのか……

 本当に何がしたいのか分からないな……


「それの何が問題だって言うの? 私は自分が思っている事を言っただけじゃない」

「元カノさんという情報、そして好きだと言う感情、更には返してだなんて……そんな事を言われれば、あなたと圭君はとても思い合っていた恋人同士のように相手が思ってしまうではありませんか。あなたは私にそう思わせたかったんですよね?」

「……」

「私が圭君を誘惑したとか、美人で顔がいいなんていう事を無駄に強調したのも、圭君が私の容姿だけを好きになってくれているのだと思わせるため。自分達は思い合っていた恋人だったけど、私は容姿が気に入られているだけだと言いたいんですよね?」

「……」

「更に言えば、昨日圭君があなたに会ったという話ですが、あなたから会いに行ったんですよね? とても上手い言い方だったと思います。私がいない隙に圭君が会ってくれた、それが圭君があなたの事をまだ好きな証拠だなんて言われたら、まるで圭君から会いに行ったみたいではありませんか」

「……」

「用事なんてなかったのに会いに行ったのはあなたの方。私がいない隙を狙ったのもあなた。でもそう思わせない為にあなたは、圭君に昨日会ったという事を認めさせようとしていた……」


 ハルさんはずっと優しい口調のままだ。

 そして完全に看破されている元同級生さんは言葉を失っていて、ただただハルさんを睨む事しか出来ていない。


「さて、これだけ言えばもう十分でしょう? 何故こんな事をしたんですか? 私に勘違いをさせて、何がしたかったんですか?」

「……何なのよ」

「はい?」

「あんた、なんなの? なんで騙されないのよっ!」

「そう簡単に騙されないようにと、日頃から人の言動には気を付けていますから」

「はぁ?」


 それに関しては僕も詳しく聞きたいところではある。

 さっき言ってた"偽証を暴く仕事"っていうのも気になるし……

 でも今はそれを気にしてる場合じゃないな。


「ですがまぁ、私が騙されにくいという事を抜きにしても、今回のこの話には無理があったと思いますけどね」

「何が無理だったって言うのよ」

「圭君が私の容姿を気に入ってくれているだけだという話ですよ」

「そんなの事実じゃない! 瑞樹君は、あんたが美人だったからあんたに声をかけたんでしょ!」

「いえ、私達の出会いは、圭君が怪我をして困っていた私を助けてくれた事なんです」

「だからっ! 美人が困っていたから助けただけでしょって言ってんの!」

「今の私の事を美人だと言って下さるのはありがたいのですが、圭君と出会った時の私は、人に見せられる顔ではありませんでしたよ?」

「は?」

「言ったじゃないですか、怪我をしてたって」

「なっ……」


 さっきハルさんはこの人に、勘違いをさせるための上手い言い方だったと言っていたけど、それはハルさんの方だと思う。

 こんな風に言われたら、顔に余程の大怪我でもしていたみたいに聞こえるだろう。

 人に見せられない顔っていうのも、猫に変身してたからって話だし……


「本当に、気味の悪い存在だった事は間違いありませんね」

「そんな事はありませんよ」

「あっ、圭君……」

「こういう時でも、そういう発言は止めて下さい」

「……はい、ありがとうございます」


 この人に、僕がハルさんを容姿だけを好いている訳じゃないと分かってもらうための発言なのは分かっているけど、こういう事は聞きたくない。

 だからハルさんを後ろから抱きしめた。


 ハルさんは嘘をつかない人なんだから、きっと今の発言は本心なんだろう。

 変身の出来る自分を、気味の悪い存在だと思っているんだろうな……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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