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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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新しい日課

圭君視点です。

 今日から僕の日課は、正午に目覚ましで起きてからまず一番に、ベランダを開けることから始まるようになった。

 ベランダの戸を半分くらい開け、網戸をする。

 心地よい風も入ってくるので、案外気持ちいい。


 僕が起きて、昼ご飯を作り終わったくらいのタイミングで、ベランダから鳥が室内に入ってくる。

 くちばしを器用に使って網戸を少し空け、部屋の奥にまで飛んでから光る鳥。

 そして、その鳥は人の姿になる。


「おはようございます、圭君」

「おはようございます、ハルさん。今日のお昼はキャベツチャーハンです」

「ありがとうございます」


 ハルさんが入ってきた後は、ベランダを開けておく必要がなくなるので、戸を閉めて厚手のカーテンもする。

 もう刑事さん達が張り込んでいたりはしないけど、どこで誰に見られてしまうかも分からないから。


 昼ご飯を食べた後は、僕は勉強でハルさんはクッキー作りだ。

 作り方は先に説明したし、一応メモを渡してある。

 ずっとハルさんの横にいて、一緒に作ろうかと考えていたんだけど、それだとハルさんは僕の勉強を阻害してしまったと気にしてしまうので、先に説明する事にした。


 でもまぁ、ハルさんなら多分大丈夫だろう。

 料理が出来ないっていうのも、単に今まで料理をしたことがないというだけで、教えてもらえば普通に出来る人だから。

 このまま料理の楽しさに目覚めて、毎日ちゃんとご飯を食べるようになってくれるといいんだけど……


「圭君、出来ました。どうぞ」

「ありがとうございます、いただきます」


 今日ハルさんに作ってもらったのは、絞りタイプのクッキーだ。

 初めて作ったにしては形も揃っているし、市販の物と遜色ないように思う。

 やっぱりハルさんは器用だな。


「凄く美味しいです。これで勉強も捗ります」

「それは良かったです」


 分量を間違えるとかの失敗もないし、砂糖と塩を間違えるとかみたいな、ドジっ子の可能性も一応考えていたけど、大丈夫だった。

 寧ろ、ここまで上手いのにどうして今まで一切料理をしていなかったのかの方が謎だ。


「この絞りクッキーは特に何のアレンジもしていませんが、明日は少しアレンジしてみますか?」

「アレンジですか?」

「ジャムを入れて焼けばジャムクッキーになりますし、生地にココアやチョコを混ぜればチョコ味にできますよ。ただチョコ味は生地が分離しやすくなりますし、絞る時も少し固くなって難しいですけどね」

「なるほど~、クッキーは奥が深いんですね」


 今日の感じからすると、ハルさんは結構料理に興味をもってくれたと思う。

 このまま料理にも挑戦してくれるようになるといいけど……


「絞りクッキー以外にも、型抜きのクッキーや、冷蔵庫で固めながら作るアイスボックスクッキーとかもありますよ」

「いろんな種類があるんですね」

「そうですね。ハルさんは覚えるのも早いですし、沢山作ってみて下さいね」

「ありがとうございます。早く覚えて、皆を喜ばせたいです」


 皆を喜ばせたい? 

 ハルさんには、手料理を振る舞いたい相手がいるみたいだ。

 ……誰にだろう?


「あの、皆って?」

「私の大切な友人達です。勿論、圭君も」


 大切な友人か……

 それも、僕も入っている。

 なんだろう、このもやもや感……


「圭君?」

「あ、ありがとうございます。楽しみにしていますね」

「はい。でも教えてくれているのは圭君ですよ?」

「僕は基本的な作り方を教えているだけなので、慣れてきたらハルさん流のアレンジ加えて、ハルさんのオリジナルクッキーを作って下さいね」

「なるほど~、考えておきますね。ではそろそろお暇します」

「クッキー美味しかったです。ありがとうございました。また明日も来てくださいね」

「はいっ!」


 ハルさんはクッキーを作り終えると、また鳥になって仕事に戻っていく。

 どんな仕事をしているのかはよく分からないけど、忙しいんだろう。


 キッチンに行ってみると、ハルさんが使った器材は新品みたいにピカピカになっていた。

 多分浄化の力を使ってくれたんだ。

 片付けは僕がやるからいいって、一応は言ったんだけどな……

 洗濯物とかも、相変わらず浄化してくれているし、洗濯要らずなのはありがたいけど、僕ばかりが貰いすぎていて申し訳なく思う。


 勉強も切り上げ、夕飯を作り、1人で食べる。

 本当はハルさんにも夕飯を一緒に食べてほしいけど、さすがにそれは言えなかった。


 夕飯後、バイト先のコンビニへ向かう。

 いつもと変わらない道だけど、前とは違う。

 ハルさんも外で仕事をしている。

 だから空を見て、鳥が飛んでいるの見つけると、あの鳥……もしかしてハルさんかな? なんて事も考えながら向かうようになった。


「最近、元気なかったから心配してたけど、もう大丈夫そうだね」

「そうですか? ご迷惑お掛けして、申し訳ありませんでした」

「迷惑なんてかかってないよ。でも本当によかったよ」

「ありがとうございます」


 仕事中、店長にそう言われた。

 最近は店長に心配されてばかりだったからな。

 もう絶対に、迷惑はかけないようにしよう。


「そういえば瑞樹君、今度あの山の神社でお祭りがあるのは知ってる?」

「お祭りですか?」

「そう。毎年あるんだけど結構屋台とかも出るし、花火もあるからね。よかったらバイト前にでも行っておいで。お友達とか誘ってさ」

「そうですね。行ってみますね」


 お祭りか……

 ハルさんは、誘ったら一緒に行ってくれるだろうか?

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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