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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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197/331

来客

圭君視点です。

「圭、いよいよ明日ね」

「うん。早く明日になって欲しいよ」


 明日でハルさんが仕事へと出掛けていってから、1週間が経つ事になる。

 つまり、ハルさんが帰って来るんだ!


「そういえば最近、うちで働いてくれている従業員の皆さんから、圭の話をよくされるのよ?」

「え? あー、彼女に会えなくて寂しそうみたいな?」

「ふふっ、違うわ。圭が明るくなったって話よ」

「明るくなった?」


 いや、ハルさんに会えてないんだから、寧ろ暗くなってるんだけど?


「彼女が出来た事で、前よりもかなり明るくなったって。私もそう思うのよね。やっぱりハルちゃんのお蔭かしらね」

「それはそうだろうけど……」


 何でハルさんのいない時に、そんな風に言われているんだろう?

 そもそもこっちに帰ってきてから、僕がハルさんと一緒にいられてるのは、この家で過ごしている時くらいだ。

 どちらかと言えば珠鈴の方がハルさんと一緒にいるし、僕とハルさんが一緒にいるところを見てる人もそういないと思うんだけど……


ピンポーン!


「ごめんくださーい!」

「はーい! 誰かしらね? 圭、行ってあげて」

「うん」


 母さんと話をしていたら、お客さんが来た。

 でも今日は来客の予定はないはずだけどな……と、思いながら玄関の戸を開けると、


「わぁー! ホントに瑞樹君じゃーん! 久しぶりー」


と、少し派手めの女性が立っていた。

 見た目の雰囲気は大分変わってるようにも思うけど、この顔には覚えがある。

 声や話し方からしても、中学の時の同級生の人だ。

 それも、僕に面白半分のように告白をしてきた……


「何か、用?」

「えー、冷たーい。私、瑞樹君が都会に行っちゃってからも、ずっと瑞樹君の事を考えてたんだよ? なんなら私も追いかけて行こうと思ってたくらい」

「……なんで?」

「決まってるじゃーん! 私、瑞樹君の事好きだから!」

「……そうなんだ。でも僕は君の事を好きじゃないから……用がないなら帰ってくれるかな?」

「ちょっと! それは流石に冷た過ぎでしょ!」

「でも、用はないんでしょ?」


 一体何をしに来たんだろうか?

 こんな家までわざわざ来るなんて……?

 この人が僕に対して好意を持っていない事なんて分かってるし、この人だって僕がその事に気付いていると知ってるはずだ。

 何よりこれだけ僕とハルさんの関係が広まってる今、来る必要なんてどこにもないだろうに……


「用はあるよ! 私、瑞樹君に彼女が出来たって聞いてショックだったのっ! 私はやっぱり瑞樹君の事が好きだから!」

「……」

「ねぇ? あの時私が告白した事、忘れてなんていないよね? あの時は恥ずかしくなっちゃってああ言っちゃったけど、私は本当に瑞樹君の事が好きなんだよ?」

「……僕は感情もないし、何考えてるかも分からない奴だよ?」

「それでもだよ! そんな瑞樹君も好きなのっ!」

「そう……」


 何をそんな必死に言ってるんだろう?

 こんな事をして、この人に何の得があるんだろう?


「ホントだよ! 信じてよ!」

「別に信じてもいいけど、興味はないから。僕は例え君が僕の事を本当に好きなんだとしても、その気持ちには応えられない。今の僕にはとても大切な人がいるからね」

「……それって、あの時私がああ言わなかったら、彼女にしてくれてたって事だよね? あの時ならまだ、そのとても大切な人はいなかったんだから」

「それはそうかもしれないけど……」

「でしょ? それに、私はあの時からずっと瑞樹君の事が好きなんだよ? そんな最近出会った女なんかより、絶対に私の方が瑞樹君を愛してる!」

「それはあり得ないな」

「なっ!」

「彼女は僕の事をとても大切に思ってくれてるからね。君よりも確実に」


 あの頃は、ずっとまわりに流されて生きていた。

 本当の友達というものもつくれなかった。

 そんな時だから、本当に大切な彼女というのもつくれなくて、この人と付き合っていた可能性は十分にある。

 でもそんな関係がそのままずっと続く事はなかっただろうな。


「なんで、そんな事……彼女が今いる訳でもない癖にっ!」

「そもそも僕にはちゃんと感情があるんだよ。だからこうして君と話してる。それに僕の彼女は、僕が何を考えているのかも知ろうとしてくれる人だ。感情がなくてもいいとか、何を考えているかが分からないままでいいなんて事は言わない」

「……」


 僕を睨むようにして、怒ったように見上げてくる……

 さっきより顔が赤いのは、単に怒っているからなのか、自分の言動を恥ずかしく思ったからなのか、どちらだろうか?


「君は、何をしに来たの?」

「……つまんない」

「え?」

「こんなのつまんないっ! 私だよ? 私が告白してるんだよ?」

「うん?」

「なのになんでっ!」

「ごめん、君が言いたい事がよく分からないんだけど?」

「あぁ、彼女が私より美人だからか……皆が噂してるもんね、かなりの美人だってさ」

「確かにハルさんはかなりの美人さんだけど、別に顔がどうこうって話じゃなくて……」

「へぇー、ハルさんっていうんだね。分かったよ……」


 何が分かったんだろうか?

 なんかこの人、様子がおかしいんだけど……?


「そのハルさんに言っておいてよ……瑞樹君の事は私の方が愛してるんだからってさ!」

「そんな事、言うわけないでしょ?」

「ふーん、まぁいいや。じゃあまた来るね!」

「あっ! ちょっと……ハルさんに何か危害を加えるとか、そういう事は絶対に止めてくれよ!」

「はいはーい……」


 不気味な感じに笑いながら、帰って行ってしまった。

 本当になんだったんだろうか?

 でも、なんか嫌な感じはする……


「圭、誰だったの?」

「同級生の人……」

「何の用事?」

「分かんない……ただ、ハルさんに何か迷惑をかけそうな感じ……」

「それは心配ね……」


 ハルさんには早く帰ってきて欲しいけど、ハルさんに危害が及ぶかもしれないと思うと……

 何事もなく、楽しく過ごせるといいんだけどな……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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