魔法需要
圭君視点です。
ハルさんを迎えにきたミオさんも夜ご飯を一緒に食べる事になった。
最初は断わろうとしていたし、食べている間も遠慮ばかりしていたけど、そういうのは必要ないとミオさんも分かってくれたようで、喜んで食べてくれたので本当に良かったと思う。
「私は全能ですからね~。するかしないかは別として、出来ない事なんてありませんよ」
「えっ、凄い! じゃあ魔法とかも使えるって事ですよね?」
「魔法ですか? 例えば、どういったものが?」
「やっぱり、炎と水と雷ですかね!」
「あぁ、こういう感じですか?」
ブォォオオ!
チャプンッ!
「そんないきなり出来るんですか!」
「こんな事も出来ますよ~」
「わぁお~! 綺麗!」
食事中にすっかり意気投合した様子の珠鈴とミオさんは、楽しそうに遊んでいる。
珠鈴が無理を言ってミオさんを困らせているんじゃないかと心配もしたけど、ミオさんは右手に炎の玉、左手に水の玉を生み出してくるくると回してくれているので、ミオさんも楽しんでいるんだと思う。
ハルさんもそんな2人の様子を笑って見ているし。
このままミオさんと遊ぶ時間がもっと続いて、ハルさんが出掛けるのが遅くなればいいのにな……
「珠鈴さんは変わってますねー。私一応全能なんですけど……そんな普通の力を見たいと言われたのは初めてです」
「えっ、ごめんなさい。失礼でした? 私、全能とか言われてもよく分からなくて……」
「失礼とかではないんですが、全能だと言うとなかなか突拍子もないことをしろとよく言われるので」
まぁ、普通はそうだろうな。
もしかして、今ミオさんは珠鈴の事を試していたんだろうか?
こういう特別な力を利用したりしないかを……
「ねぇ、ハル姉も何か魔法が使えたりするの?」
「え……」
「いや珠鈴、動物に変身出来てる時点で魔法だろ」
「あ、そっか。何か私のなかでは、炎とか水とかを使えるのが魔法ってイメージになっちゃってた。あはっ」
「ゲームのやりすぎだ」
「はーい」
「あの、雷だけでしたら、私も使えますよ?」
バチッ! ビリビリッ!
ハルさんは手の上に小さな稲妻みたいなものを生み出してくれている。
「まぁ、ミオに教えてもらったものなんですけどね」
「ハル姉さんは攻撃系の力を何も持ってませんでしたからね。雷くらいは護身用に持っていて欲しかったんですよ」
「はい、ありがとうございます。結構助かってますよ。少し雷を纏った状態で人に触れれば気絶させられますからね」
「あぁ、スタンガン的な?」
「そうですね」
そういえば前に僕が捕まった時、石黒さんの部下の人とか沢山倒してたけど、あれもこの力を使ってたって事なんだろうか?
何か稲妻みたいなのも見えてたし……
それを考えると、あの時助かったのもミオさんがハルさんに雷の力を教えてくれていたからこそなのかもしれないな。
その力が使えなかったとしても、ハルさんは全員を倒していただろうけど、もっと危なかったかもしれないんだし。
「あの、スタンガンとは?」
「この世界に存在する、電気を発生させられる道具ですね。防犯用として存在していますが、たまに悪用されます」
「あらら~、ですがこの魔法の存在しない世界で、そのようなものがあるとは驚きですね」
「この世界は文明の発達が凄いですからね。科学の力でわりと何でも作ってしまうんですよ。炎も雷も、どこでも簡単に起こす事が出来る道具もあります」
ミオさんは以前この世界を平和だと言っていたし、当然文明の発達していない世界だってあるはずだ。
僕達にとったら原始的とも思えるような方法で生活している人達を、ハルさんもミオさんもたくさん知っているんだろう。
「それにしても、本当に凄いですよね~。ですが今私が何よりも驚いたのは、魔法が存在しない世界なのに、珠鈴さんが魔法というものを知っていた事でした。さっき圭さんが仰られたゲームとは何ですか?」
「ゲームはえっと、玩具の1つですね。どう説明すればいいのか……珠鈴が好んでるRPGとかは、架空の世界の中で色んな魔法を使っていくものなんですが……」
「お兄ちゃん! そんな説明よりやってもらった方が早いよ! ミオさん、こっちに来てー」
珠鈴の勧めでミオさんがゲームを始めてくれた。
こうしてどんどんハルさんが行くのが遅くなればいいと思っていたけど……
「嘘っ! 私もまだそこクリアしてなかったのにーっ!」
「ミオは何でも上手いですからね」
「上手すぎだよ~」
「えっと、何か申し訳ないですね……あ、でもとても楽しかったです」
「それなら良かったです!」
残念な事に、ミオさんはゲームがかなり上手だった。
流石は全能だ……
「では、圭さんに恨まれそうではありますが、そろそろハル姉さんをもらいますね!」
「はは……」
「圭君、ちょっと寂しいですけど、出来る限り早く終わらせますので」
「はい、待ってますね」
「ハル姉、私も待ってるよ!」
「ハルちゃん、私達もよ!」
「はい、ありがとうございます! 行ってきます」
「「「行ってらっしゃい」」」
ミオさんが作った歪みの中に、ハルさんは入って消えていった。
残ったミオさんは、
「とても楽しい時間を、ありがとうございました」
と、僕達に深々と頭を下げて、そのまま光の粒子となって消えていってしまった。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




