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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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193/332

タイプ

珠鈴視点です。

「それで、その出張はいつから行くの? 明日?」

「いえ、出来れば今からです」

「今から?」

「では、行ってきますね」

「え、は? ちょっと待って!」


 ハル姉は今から出張に行くとかで、行く気満々な様子で立ち上がった。

 でもそんなのまだ心の準備が出来ていない。

 それにお兄ちゃんだって……


「えっと、あの……お気をつけて」

「はい! なるべく早く帰ってきますからね」


 お兄ちゃんはハル姉の手をとって、見つめあっている。

 さっき抱き締めてたのも、当分会えないという事が分かってたからなんだろうから覚悟はしてたんだろうけど……

 そういえば、ハル姉がこうして来てくれる前にも、お兄ちゃんが彼女に会えなくて落ち込んでるってお母さんが言ってた時があった。

 あれもこんな感じの出張だったのかな?


 あの時はお兄ちゃんはそんなに弱い人じゃないから大丈夫だと当然のように思えていたけど、これだけお兄ちゃんがハル姉の事を愛してるのを見ちゃった後だと、逆に心配になってしまう。

 ハル姉欠乏症とかで倒れないかなって……


「ちょっと、夜ご飯もまだなのよ? そんなに急がなくてもいいじゃない」

「純蓮さん……」

「ミオちゃんがあれだけ待っていられたって事は、そこまで急ぎではないのでしょう? それとも、もうタイムリミット?」

「いいえー、大丈夫ですよー」

「それなら夜ご飯を一緒に食べていってちょうだい。ミオちゃんも手伝ってくれたんだし」

「いいんですかー? では、お言葉に甘えますねーと言いたいところですが、私は遠慮します。食べる必要はありませんので」

「そんな事言わないで、食べましょう?」

「大丈夫ですって~」


 お母さんが引き留めてくれた事で、ハル姉達はもう少し居てくれるみたいだ。

 それにしてもお母さん、ミオさんと凄く仲良くなってる感じがするな……

 お母さんはもともと誰とでもすぐに仲良くなるタイプだけど、ここまで親しい感じがするのは珍しいと思う。

 これはミオさんもお母さんと似たタイプの人だからなんだろうか?


 でも、ハル姉もそんなお母さんとミオさんの様子を不思議に思ったみたいで、


「え、ミオ? どれだけここで私を待たせてもらっていたんですか?」


と、質問している。

 私達の買い物はかなり長くなっちゃったし、ずっと待たせてたとかだったら申し訳ないな。


「お昼くらいからですよ」

「それは……」

「問題ありません、見ての通りですから!」

「……そうですか」


 見ての通り?

 何がどう見ての通りだったら、ずっと待たせていた事を納得出来るんだろう?

 ハル姉は絶対にそういうの気にしちゃうタイプの人なのに。


「あの、見ての通りってなんですか? 私にはミオさんは可愛らしい女性にしか見えないんですけど?」

「まぁまぁ! ありがとうございます。でも珠鈴さんの可愛らしさの前では、私なんて霞んでしまいますよ」

「そんな事ないですよ」

「いえいえ、本当に……ほら! 霞んできましたよ」

「はい?」


 ミオさんは立ち上がって、私に自分の足元を見るようにと促すように手を振った。

 そこで見えたのは、膝から下くらいがぼんやりとぼやけているような、ミオさんの後ろの景色が見えるような感じになっていて……


「ミオさんって、幽霊タイプの人だったんですか?」

「わぁお! 斬新なご返答。流石は圭さんの妹さんですね!」

「僕はそんな斬新な事なんて言ってませんよ。でも、どうして透けてるんですか? それも何かの力ですか?」

「ま、そんな感じですね。簡単に申し上げますと、今ここにいる私は本体じゃないんですよ。分身的な?」

「分身!」

「ですのでいくら待たされていようと、本体の仕事に影響はありません。ただ、本体から最初に持たされていた力がなくなると、こうして消えます」

「消えるって……」

「あ、死ぬとかじゃないですよ? 私が経験した事等の全てが、本体に伝わるんですよ~」

「なるほど?」


 ハル姉は見ての通りで分身さんなんだってすぐに分かったのか。

 だから納得してたんだ。

 夜ご飯を食べる必要がないっていうのも、こういうことか。


「じゃあ分身さんが夜ご飯を食べたら、本体さんにちゃんと味が伝わりますか?」

「それはもちろん伝わりますが、私は分身なんですよ? 夜ご飯は必要ありません」

「でも折角なので……」

「今頃本体は、超豪華ディナーを食べてるかもしれないんですよ? そんな奴に皆さんがご馳走して下さる必要はありませんから」

「超豪華ディナーには負けますけど、食べていってほしいです」

「そうよ、ミオちゃん! 分身だろうと関係ないわ」

「えっと……」

「ミオ、いただいていきましょう」

「……はい、分かりました。ありがとうございます」


 ミオさんは笑って座り直してくれた。

 透けてた足も元に戻っていく。

 きっと分かりやすくするために透けさせてくれてただけで、別に今すぐに消えちゃうって訳じゃないんだ。


 ハル姉以上に変わった人みたいだけど、きっととても優しい人なんだろうな。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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