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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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思い直し

珠鈴視点です。

「あの……今日はありがとうございました。えっと、()()()……」


 お兄ちゃんに渡す誕生日プレゼントやケーキの材料を買い終えて、都会の街観光を楽しませてもらった。

 そして、そろそろ帰るかと熊さんと別れようとしていたところで、ハル姉はそう言ってくれた。


「ハ、ハル姉? 今、"熊さん"って……聞き間違いじゃないよね?」

「ハル、無理をしなくていいんだぞ?」

「いえ……その、今日も先日も、大変お世話になりましたし、私はずっとあなたの事を誤解していたみたいですから……」


 やっぱりちゃんと聞き間違いなんかじゃなしに、ハル姉は熊さんって呼んだんだ。


 買い物や観光の間、何度も現れたナンパ野郎達を熊さんが毎回迅速に片付けてくれていたし、道を歩く時も危なくないようにと気を遣ってくれていた。

 それでいて、道に迷っていた人を3人助けていたし、元々の熊さんの知り合いと思われる子供達からも、明るく挨拶をされていた。

 熊さんが本当に優しくて、皆に頼られている人なんだと分かるには、十分だったんだ。


「まぁ、お前が無理をしていないならそれでいい。俺はもう行くからな。帰りも気を抜くんじゃねぇぞ」

「はい。本当にありがとうございました」

「ありがとうございましたー!」


 嬉しそうに笑ってくれていた熊さんと別れ、駅に向かう。


「今日はずっと私がハル姉と一緒だったから、お兄ちゃんも羨んでるだろうねー」

「ふふっ、そうだと嬉しいです」

「きっと早くハル姉に会いたい~って、壊れてると思うよ?」

「圭君はしっかり者ですから、壊れませんよ。でも、私も早く圭君に会いたいですから……」

「壊れそうなの?」

「こ、壊れはしませんが……」

「あははっ、本当に大好きなんだねー」

「……もうっ! 珠鈴ちゃん!」


 ハル姉をからかいつつ、電車に乗る。

 あっち方面に向かう人は少ないようで、中はガラガラだった。

 座っても大丈夫そうなので、買った荷物も置いて、座らせてもらう。


「わぁー、本当に楽しかったなー」

「それは良かったです」

「ありがとうね、ハル姉」

「いえ……」

「ハル姉?」


 楽しそうに笑っていたハル姉の表情が、急に暗くなった。

 どうしたのかと思っていると、


「お姉さん、お久~」

「次の駅で降りて遊ぼうよ」

「まさかまた会えるなんてねー、これはもはや運命だよねー」


と、私達が座っていた席の前に、私達を囲うように3人の男が現れた。

 あのタワーで絡んできた人達だ。

 まさかずっと私達をつけていたんだろうか?


「はぁ、反対側にいらしたのに、わざわざこっちにきたのはこの為ですか?」

「おっ! お姉さんも俺達に気付いてくれてたんだね」

「やっぱり一緒に行こうよ」

「なんなら家までついていこうか?」


 ハル姉とのこの会話……

 つまり、駅で私達を見かけたから追いかけてきたという事みたいだ。

 ずっとつけられていたのなら流石に気持ち悪いと思ったけど、そういう訳じゃなかったようで安心した。

 まぁ今は、全然安心できる状態ではないんだけど。


「私達はもう家に帰ります。あなた方について来ていただく必要はありませんし、あなた方と遊ぼうとも思いません」

「そんな事言わないでさ、ほら……ね?」

「妹ちゃんも……」


 座っている私達と目が合うようにしゃがんできた。

 しかも、ハル姉の肩の方へと手を伸ばして、触ろうとまで……


パンッ!


「触らないで下さい」

「冷たい事言わないでさー」


 ハル姉が手を強く弾いたのに、全くめげる気配もない。

 女2人だからと、弱く思われているんだろう。

 ハル姉もかなりイラついてしまってるみたいだし……

 前みたいに凄んで追い払ってしまおうとしているのかもしれないけど、こんな人達にあれは通用するのかな?

 それにあの時のハル姉……かなり困っていたみたいだし……


「お姉さんがそんなに冷たいんなら、妹ちゃんと先に遊ぶわ」

「さ、行こうか」

「やっ!」

「珠鈴ちゃんから離れなさいっ!」

「怒らないでよ、お姉さん……って、いててててっ!」

「は? え、うわっ!」


 ハル姉を止めようとした男の手を持ったハル姉は、その手を変な方へとひねった。

 護身術、的な?

 痛がる男を放置して私の方へと来ると、私の腕をつかんでいた男の手にも手刀を加えた。

 凄い早さだ……


「ったぁ~、これはさ、ちょっと酷いんじゃねぇの?」

「こっちが優しくしてやってたのにさぁ」

「まじありえねぇんだけど」


 なんか、怒らせてしまったみたいで、かなり悪い展開だ。

 ハル姉は強いみたいだし、このままこの3人と戦って倒すつもりなのかもしれないけど、それはきっとハル姉にとってもよくない行動のはずだ。


「あ、あのっ! これ以上私達に構うんだったら、さっきの刑事さんに連絡しますからね!」


 離れて欲しくて警察を呼ぶといってみたけど、


「ご自由にどうぞ?」

「ははっ、捕まるならそれはそれで、遊んでからにするわ」


と、笑われてしまった。


「だから大人しくしろよっ!」


パシッ!


「なっ、くそっ!」


ドゴッ!


「ぐっ! 調子に乗るなっ!」


 ハル姉が護身術に特化してるとわかったからか、さっきよりもハル姉を押さえつけようとするのに力が入っているようにみえる。

 ハル姉は3人共を払っているけど、このままじゃ本当に乱闘みたいになってしまう……

 どうしたら……


「あら~? こんなところで何をされているんですかぁ?」

「あ?」

「お、美人……」

「お兄さん達、凄いイケメンさんじゃないですか! それにこの筋肉、たくましいですね!」

「そ、そうっすか?」

「もし良かったら、次の駅で降りて、私と飲みませんか?」

「あ、全然いいっすよ」


 どうしたらいいのかと困っていると、急に隣の車両から青色の髪の女の人が現れて、男達を誘惑するみたいに体に触りながら、ハル姉から引き剥がしてくれた。

 そしてそのまま、次の駅で男達と一緒に降りていく……

 助けてくれたんだろうけど、ちょっと心配だ。

 なんか、男の人の扱いに慣れてるみたいだったけど、相手は3人もいたんだし……


 でも、あのままだったらハル姉は怒ってしまっていて、もっと大変な事になっていただろうから、これで良かったと思う。

 ハル姉は自分の事はあまり大切に出来ないみたいだけど、私の事となると、周りも気にせず戦っちゃうみたいだし……

 私ももっと、自分の行動に気をつけないといけないな……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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