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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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観察力

圭君視点です。

 まだ当分帰って来ないであろうハルさんを、ミオさんは森の中で昼寝でもして待っていると言った。

 でも、いくらミオさんが凄い人だとはいっても、どれだけ時間がかかるかも分からないこの状況で、森の中に1人残していくなんて事はできない。

 だから家でハルさんを待っていてもらえばいいと思ったのに、ミオさんはふざけた様子でその提案を断ってくる。


「私を家になんて呼んだら、変な噂がたっちゃうかも知れませんよー」

「大丈夫です」

「ご両親に私の事をどう説明するおつもりですか?」

「ハルさんの友人ですね」

「ご近所の目というのもありますし」

「家、敷地が広いので、ご近所さん家からうちの事なんて、敷地内に入ってこない限り見えませんよ」

「あらあら、圭さんはお坊ちゃまだったのですね」

「お坊ちゃまではないですけど……」


 ミオさんは明るくふざけた様子ではあるけど、しつこい僕に困っているという訳ではなさそうだ。

 本当に家に来てしまったら困る何かがある訳じゃなく、ただ純粋に遠慮してくれているだけなんだろう。

 だったらそんな遠慮は必要ないんだから、ちゃんと家に来て休んで欲しい。


「ハル姉さんに誤解されちゃうかもしれませんよ? 私との逢瀬だなんて思われてもいいんですか?」

「そんな事、思われるわけないじゃないですか。可愛いやきもちくらいなら、やいてくれるかもしれないですけどね」

「……素晴らしい自信ですね」

「はい?」

「分かりました。そこまで言っていただけるのであれば、お邪魔させていただきます」


 やっと来てくれる事になった。

 これで僕も安心できる。


「不束者ではございますが、どうぞよろしくお願い致します」

「僕、そういうのには、面白い反応出来ませんよ?」

「そうですか? 十分に面白いですよ! 芸人さんとかいうのになれるんじゃないですかね?」

「そんな事は初めて言われました」


 ミオさんと他愛ない話をしながら歩いて、一度作業場の方へと行き、皆さんに家に帰ると断りを入れておく。

 ミオさんの姿を見た皆さんは、噂の僕の彼女なのかとからかってきたけど、しっかりと否定しておいく。


「あの人は、僕の彼女の友人です。彼女と本当の姉妹のように仲がいい、とても大切なお客様です」


 そう言えば、全員納得してくれた。

 ミオさんも優しく笑っていたし、ハルさんに迷惑がかかってしまうような変な噂がたつことはないのだと、安心していたんだろう。


「圭さんは、たくさんの人に慕われているんですね」

「僕が慕われているわけではありませんよ。あの皆さんは、父さんの会社で働いてくれている方々ですから、息子である僕に優しいんだと思います」

「それだけでもないと思いますけどね」

「そうですか?」

「圭さんのその言い方だと、上司に気に入られたいが為に、その息子に媚を売っている方々だという事になってしまいますが?」

「そ、それは……」

「違いますよね?」

「はい……あの、ありがとうございます」

「いえいえー」


 やっぱり、色んな世界でたくさんの人の事を見ているからだろうか?

 ミオさんは人の事を見抜く力が本当に凄いと思う。

 それでいて、ちゃんと分からせてくれるし……


「おっ、なんだあの髪!」

「青か? しかも美人!」

「ってか、あれ瑞樹じゃね?」


 ミオさんの凄さを改めて感じていると、前方から中学の時の同級生3人が歩いて来ていた。

 僕だと分かっているみたいだ。


「よぉ、瑞樹! 久しぶりだな」

「……あぁ、うん。久しぶり」

「なんだよ、こんな美人と歩いて……」

「この間の美人と違う美人だよな?」

「うわっ! 浮気かよ。最低だな」


 僕等の行く手を阻むように道を塞ぎ、話しかけてきた。

 正直どう話したらいいのか困る……

 僕はもう、彼等を友達だとは思えないから……


「あの~? 先ほどから美人、美人と、誰の事ですか?」

「そんなの、お姉さんに決まってるじゃないですか」

「こいつ、彼女いますよ?」

「もしかして、あの彼女さんの知り合いの方ですか?」

「多分そうです! その美人の彼女さんの知り合いですよ。でも、私までを美人さんだなんて、ありがとうございます。是非握手をー」

「あ、はい」


 ミオさんは、彼等の手を優しく掬うように取って、笑って挨拶している。

 1人1人丁寧に、しっかりと顔を見ながら。


「本当に美人さんですね」

「こっちには遊びに来られたんですか?」

「俺等が案内しましょうか?」

「いえ、仕事で来ましたー。急いでいるので、今日は失礼致しますね。是非またお会いしましょう」

「あ、はーい」


 楽しそうに手を振りながら別れ、道を先に歩いて行ったミオさん。

 僕も後から小走りで追いかける。


「なんだあれ?」

「多分、あれだろ? 私の友達をお前なんかに任せられるかって、都会からあの人を連れ戻しにでもきた人なんだろ」

「瑞樹もビビって何も言えてなかったしなー」

「なら、あの彼女さん、連れて帰られるんじゃね?」

「てか、瑞樹が無理矢理連れて来てただけとか」

「ははっ、ありえるー!」


 わざと聞こえるような大き声で話しているんだろう。

 それなりに彼等と距離をとってから、やっと笑い声は聞こえなくなった。

 そしてミオさんに、


「必要とあらば、消しておきますよ?」


と、訪ねられた。


「いえ、必要ありません」

「そうですか。別にあの程度、消えても世界には何の影響もないのですが、圭さんがそう仰るのであれば、そう致しますね!」


 ミオさんは変わらず優しく笑ってくれていた。

 だから、何を消そうとしていたのかなんていう事は聞かないでおく。

 きっと彼等の"記憶"だったのだと、思っておきたいから……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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