家族構成
圭君視点です。
「それにしても、ハル姉さんは圭さんの妹さんとお買い物ですかー。圭さんに妹さんがいるというのは、何というか、イメージ通りですね!」
「そうですか?」
「はい、優しいお兄ちゃん感が溢れ出てますよー」
「そ、それは……ありがとうございます」
僕はハルさんに出会って変われたから良かったけど、変わる前の僕だったら、そんな優しいお兄さん感なんてなかっただろうな……
珠鈴にとって、頼れる兄でもなかっただろうし……
「いいですねー、兄妹って」
「ミオさんは兄弟とか……」
兄弟とかいないんですかって聞こうとして、慌てて止めた。
何気なく喋っていたから普通に聞きそうになってしまったけど、そもそもハルさん達は普通の人達とは違う……
前にハルさんにも聞いてしまって、"私には家族とかはいません"って、悲しい顔をさせてしまったというのに……と、僕が聞いた事を後悔していると、
「私は1人っ子ですよ。兄弟とかはいませんねー」
と、ミオさんはあっけらかんと答えてくれた……
「どうかされました?」
「あぁ、いえ……」
"私は1人っ子"っていうのは、他の人は違うって意味に聞こえるんだけど……
僕に妹がいるからそう言ったのかも知れないけど、何か違和感がある気がする……
"兄弟とかはいません"というのも、兄弟はいないけど親はいるとか……
そもそも家族が誰1人としていないんだったら、こんな変な言い方はしないで、ハルさんみたいにいませんって言うはずだよな?
これ以上家族の話をされたって困るんだし……
ハルさん達みたいな人達は皆、特別な生まれ方をしてくるとかで家族はいないのかと思っていたけど、そうじゃないのか?
改めて考えてみると、ハルさんって幼稚園は卒業してるって言ってたんだよな……
人の記憶とかだって変えられるんだから、家族がいなくても、誰にも違和感を持たれる事なく幼稚園に通うというのは出来るはずだ。
でも、だったらなんで幼稚園だけなんだ?
そのまま小学校も中学校も行けばいいのに……
もし仮に、幼稚園生の頃のハルさんには家族がいたとすると……
「ミオさん、あの……」
「何ですか?」
「……」
「ん? 圭さん?」
ミオさんにハルさんの家族について聞こうかと思ったけど、それはハルさんに凄く失礼な事だと思う。
聞くのであれば、ちゃんとハルさんから聞かないと。
「さっきからどうされたんですか? 悩みがあるなら聞きますよ?」
「いえ、すみません。その……今日は僕の心を読んでいないんだなと思いまして……」
「そんな四六時中読んでたら疲れるじゃないですか」
「そうですよね」
この間は僕を見極めるという目的で読んでいたんだからな。
そういう事情のない時まで心を読んでしまっていたら、相当大変だ。
心の内容を確認しながら、普通に会話もしないといけないんだから。
心を読めるって便利なような感じがするけど、苦労が多いんだろうな。
というか、常に喧しそうだ……
「そうなんですよ、喧しいんですよー」
「……えっ?」
「あ、心を読んで欲しかったのかと思いまして」
「いえ、そういう訳ではないので結構です」
「そうでしたか、ふふっ」
こんな、何の変化もなく急に読んだり出来るものなんだな。
ハルさんが何か力を使う時って、結構光ったりとかしていたけど、心を読むのはそういう事にはならないみたいだ。
これなら相手に違和感を与える事なく読んだり読まなかったりと切り替えれるんだから、安心だ。
疲れてきたら、読むのを止めればいいんだし。
「ふふふっ」
「ミオさん?」
「あ、ごめんなさい。そっちかーい、と思いまして」
「はい?」
「まぁ、お気になさらないで下さい。それより、圭さんの妹さんは、私達が普通の人ではないという事をご存知ですか?」
「知ってますよ」
「では、私がいきなり現れてハル姉さんを拐っても、大丈夫ということですね!」
「えっ、ハルさんを連れて行っちゃうんですか?」
「ちょっとハル姉さんに出張の予定が入りましたので」
出張か……
また前みたいに長い間会えなくなってしまうんだろうか……
「今、妹を1人で行かせるのは危ないからと、ハルさんについていってもらっているんです。だから……」
「あぁ、ハル姉さんを今連れていかれるのは困るって事ですね! 分かりました」
「いいんですか?」
「問題ありません。そう急ぎでもないので」
「ありがとうございます!」
良かった。
僕も何の挨拶も出来ないままに、ハルさんが出張に行くことになってしまうのかと思った。
ただでさえ今日は全然ハルさんに会えていないんだから、そんなのは辛すぎる。
「では、私はこの辺りで待っていますので、ハル姉さんに私が来ているとお伝え下さい」
「ハルさんが帰ってくるのはまだ結構先になると思いますが……」
「じゃあ昼寝でもしてますねー」
「ここでですか?」
「はい」
ミオさんは当たり前の事みたいに言ってるけど……
「あの、ミオさんさえよければ、家に来ませんか?」
「あらまぁ、殿方のお家に誘われてしまいましたわ。どうしましょう、おろおろ」
「その方がハルさんが帰って来たのも分かりますし、僕がハルさんに伝えるより効率的だと思いますよ。昼寝もこんな森の中よりは落ち着いて出来ると思いますし」
「そんなっ! 圭さんの家で寝させてもらうだなんてっ! 私は一体どうしたらっ!」
「ミオさん達が特別な方なのは分かってますけど、やっぱり森の中に1人残していくというのは気が引けるので、是非家に来て下さい」
「……意外と冷たいんですね」
「それは、すみません」
ミオさんはずっとふざけたような感じだった。
どう返すのが正解なのかはよく分からないのでスルーさせてもらっていたけど、ミオさんが今までも相手からのこういう心配を、ふざけて誤魔化してきた人である事は間違いないと分かった。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




