ジャストサイズ
圭君視点です。
森林浴をしていたところで、急に現れたミオさん。
ハルさんに用があって来たんだろうけど、どういう用事なんだろうか?
そういう事って、僕が聞いてもいいんだろうか……?
「少し意外でした」
「何がですか?」
「圭さんは意外と、女性のアクセサリーとか気にされる方だったんですね」
「え……」
「てっきり、ハル姉さん以外は眼中にないのかと?」
「……まぁ、ハル以外の女性に恋愛感情は抱かないと思いますけど、それは眼中にないというのとは違うと思います」
「はい?」
「僕の大切な人の、大切な人なんですよ? どんな人なのかが気になるのは当然じゃないですか」
それに何より、ミオさんが以前つけていたイヤリングは大きい飾りの目立つ物だった。
青髪のイヤリングの人として覚えていたんだから、気になるのは当然だと思う。
「ふむ、なるほどなるほど! 相変わらず、面白い方ですね!」
「ミオさんも相変わらず、僕達をからかうのがお好きそうですね」
「ふふっ」
今日は心を読んではいないんだろうか?
読んでるんだったら、さっきの僕の疑問である、ハルさんに用事なのかというのに答えてくれていても良さそうなのに……?
「ちなみに圭さん?」
「あ、はい」
「ハル姉さんが、普段からアクセサリーの類いをつけられていないのはご存知ですか?」
「そうですね。いつも特に何もつけてないですね」
「ハル姉さんがアクセサリーをつけられないのは、アクセサリーの類いが嫌いだからとか、金属アレルギーだとか、そういう事ではありませんよ」
「そうなんですか?」
てっきりアクセサリーがあまり好きじゃないんだと思ってた。
だからクリスマスプレゼントにも選ばなかったけど、好きじゃない訳でないのなら、今後のプレゼント候補にも加えられる。
でも嫌いじゃないのなら、どうしてつけていないんだろう?
「ハル姉さんがよく動物に化けて行動されているというのは、圭さんもご存知ですよね?」
「はい」
「その動物に化けている時、着用していた服やアクセサリー等の装飾品は、別空間に存在してる事になるんです。ですが、化けるのをやめて元の状態になると、装飾品はそのまま戻ってきます」
「それは自分の意思で戻している訳じゃないんですか?」
「そうです。勝手に戻ってきちゃうんです。なので、ずっと持ってなかった物を急に持つ感じになるわけですよ。そうなると、注意力散漫で落としやすいですよね?」
「そうかもしれませんね」
長時間動物になっていた状態から、人に戻ったとしたら、自分がどんな服を着ていたのかとかもあまり覚えていないかもしれない。
特にハルさんは、服装にそこまで頓着している訳ではないから。
アクセサリーも、自分がつけていたかどうかを覚えていなかったら、落としていても気付かないものなのかも……
「同じ理由で、ハル姉さんは私達への連絡手段も持ち歩きません。全く、困ったものですよ……」
「鞄とかもいつも持っていませんし、手持ちの荷物は異空間に入れてるみたいですからね」
「おぉ、それもご存知でしたか! そうなんですよ。異空間を便利なアイテムボックスと認識している節があって……って、そんな事よりですね、私が何を言いたいか分かります?」
「えっと、ハルさんにアクセサリーはプレゼントしない方がいいって事ですか?」
「惜しいですね」
「惜しい?」
惜しいってなんだろう?
今の話からして、アクセサリーをプレゼントしても、落とすのが嫌だからとつけてはもらえないって事だよな?
折角ならつけてもらいたいし、そうなるとやっぱりアクセサリーはプレゼント出来ないって事になるんだけど……?
「もう少し分かりやすいように言うとですね、落としにくいアクセサリーもあるという事です。そこにピッタリと収まっているような、ジャストサイズのアクセサリーであれば、そうそう落とさない訳ですよ」
「ジャストサイズの……」
「着ている服を落とす事がないのと同じです。常につけていても問題がなく、つけていた事を忘れたりしないくらいに当たり前につけているもの……そういったアクセサリーであれば、プレゼントに向いていると思いますよ」
「あぁ……参考にします。ありがとうございます!」
「いえいえー」
何を言っていたのかを僕が察したと分かったようで、ミオさんは優しく笑ってくれた。
ミオさんのお蔭でハルさんへのプレゼントの候補も広がったし、今から素敵なプレゼントを送れるように探しておこう。
ハルさんの誕生日は3月27日。
まだ少し先ではあるけど、そんな事を言っていたらすぐにその日は来てしまう。
ジャストサイズのアクセサリーとなると、用意するのにもそこそこ時間がかかってしまうし、今日ミオさんにこの事を聞けて良かった。
ハルさんの誕生日に向けて、ハルさんに喜んでもらえるものを探さないと!
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




