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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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森林浴

圭君視点です。

「圭君、そろそろ休んだら?」

「そうですね、ちょっと休憩させてもらいます」


 少しでも家の手伝いをと思って、畑作業を手伝っていたけど、従業員の皆さんに気遣われてしまった。

 社長の息子でもあるんだし、丁寧に扱われるのは当たり前でもあるんだけど、そういうのとは違う優しい感じだ。

 久しぶりに帰ってきた僕を心配してくれているんだろう。

 お言葉に甘えて、休ませてもらう事にした。


 休むといっても、あまり皆の近くにいては、それはそれで気を遣われてしまうだろうし、家に帰るのはちょっと遠い。

 帰って誰かがいるのなら帰るけど、今日はハルさんも珠鈴と買い物に出掛けたからいないし……

 ちょっと森林浴でもしようかな?

 少し森に入ったところの切り株とか、まだ残ってるかな?


 木々の生い茂った森の中、中学生の頃によく来ていた懐かしい道を辿って進んでいくと、僕がよく座っていた切り株は残っていた。

 少し苔が増えたみたいだけど、変わらずにあるというのは嬉しく思う。

 あの頃と同じように、久しぶりに腰を掛ける。

 前はよくここで、1人で色々悩んでいたな……


 こうして落ち着いて1人で考える時間も大切だとは思うけど、誰かに相談する事も大切だ。

 ハルさんは僕にその大切さを教えてくれた。

 人に自分の思いを伝える事の大切さ、言葉の力を……

 本当に、僕はハルさんのお蔭で変われたんだ。


 ハルさん……

 今頃、珠鈴と楽しく買い物が出来てるかな?

 変な人に絡まれたりしてないといいけど……

 いや、それは無理か……

 僕も一緒に行けたら良かったけど、僕の誕生日プレゼントのための買い物に行ってくれてるんだもんな。

 楽しく過ごしてくれてる事を信じよう。


ズザザザザーーッ!


「えっ……?」


 切り株に座って少し考え事をしていると、後ろの方で凄い音がした。

 何かが滑り落ちていったような?

 こっちからかな?


「痛っ! わー、もう最悪……」


 音のした方に向かってみると、見覚えのある青髪の女性……ミオさんが森のなかで転んでいるところだった。

 滑り落ちた勢いで、そのまま尻餅をついてしまったんだろう。


「あの、大丈夫ですか?」

「おっと! 人に見られたかと思えば、圭さんではありませんか! これはラッキーですね。記憶を消す手間が省けました」

「えっと……大丈夫なんですか?」

「はい、問題ありません。よくあることなんで」

「滑り落ちることがですか?」

「ふふっ、滑り落ちる事も、人に見られる事も、記憶を消す事もですよー!」

「……そうなんですか」


 相変わらずよく分からない人だ。

 とても楽しそうに笑いながら、結構重い事を言ってくる。


「いつもはハル姉さんの家を目的地として来るのですが、ハル姉さんは旅行中との事でしたから、今回はそれが出来なくて。ハル姉さんの旅行先で、人目のないところを目的地として来たんですよ。でもまさかいきなり、急斜面の森に出てしまうとは思っていませんでしたので、滑り落ちてしまいました」

「それは、えっと……」

「簡単に言うと、着地に失敗しただけです」


 多分、別の世界から来たんだよな?

 この世界に来てすぐに足をついた先が、斜めった地面だったと。

 やっぱり世界を移動するのって、大変なんだな……


「怪我はありませんか?」

「ありませんよ。私、怪我をしないので」

「そうなんですか? 良かったです」


 怪我をしない?

 この地面の跡から見ても、相当高い所から滑り落ちている。

 普通だったら大怪我をしてるところだろうけど、見たところミオさんにはかすり傷の1つも見当たらない。

 ハルさん達は特別な力を使える人達なんだし、何か怪我をしないように身を守っていたのかもしれないな。


「ん、あれ?」

「どうかなさいました?」

「あ、すみません。以前お会いしたときは、綺麗な耳飾りされていたのに、今日はしていないんだと思いまして」


 ミオさんに怪我がないかと思って見ていると、ミオさんがあの大きなイヤリングをつけていない事に気がついた。

 女性がアクセサリーを変える事なんて当たり前だし、つけていないからっておかしい訳じゃないけど、なんか気になる。

 違うイヤリングをしていたのならまだしも、今のミオさんは何もつけていないし……

 確か初めて夢で会った時もしてたし、この間もしていたから、僕の中で"ミオさん=イヤリングの人"という認識になっていたのかも知れないな。


「耳飾り? あぁ、あれは先日落としてしまって……」

「えっ、探すの手伝いますよ」

「いえ、大丈夫です。もう見つかりましたから」

「それなら良かったです」

「ただ、やっぱりつけてて落としちゃうのは嫌だなーっと思ったので、もうつけるのやめたんです。とても大切な物ですからね」

「そうだったんですね」


 ミオさんは自分の耳を触りながら、少し寂しそうに話してくれた。

 やっぱりあれは、ミオさんの大切なものだったんだな。

 勝手に"="で結びつけてしまう程には、本当によく似合っていたと思うし、つけなくなってしまったというのは少し残念な気がするな……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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