金銭感覚
ハルさん視点です。
塔の展望台スペースから降りて、下の方にあるお店のたくさんあるエリアに来ました。
変わらず熊谷さんはついてきていますが、手を繋いで歩く私と珠鈴ちゃんの3歩ほど後ろを歩いているので、そんなには気になりません。
「本当に広いよね」
「そうですね」
「売ってないものなんて、何もないんじゃないかと思えてくるね」
「ふふっ、大抵のものは揃いますからね。圭君へのプレゼントはもちろんですが、珠鈴ちゃんが欲しいものも是非買って帰りましょうね」
珠鈴ちゃんはとても楽しそうにお店を見渡しています。
やっぱり圭君達の地元の方では、なかなかこういうたくさんのお店が並んでいる場所というのはありませんからね。
「でも、さっきから結構値段も見てるけど、わりと高いよね。まだお昼ご飯とか、帰りの交通費とか、ケーキの材料とかも買いたいし、私の物を買う余裕はないかな……」
「向こうに比べると、全体的に物価も高いですからね。でも、欲しいものがあれば私が買いますから、遠慮せずに言って下さいね!」
「もー、そうやって甘やかしてたらダメだよ! あそこの超高額な宝石が欲しいって言われたらどうするの?」
「え? もちろん買いますよ?」
「……はい?」
楽しそうに笑いながら話していた珠鈴ちゃんは、急に時が止まったみたいに固まってしまいました。
「珠鈴ちゃん?」
「……ちょっと待ってね。一旦整理しよう」
「はい、何をですか?」
「ハル姉ってもしかして、金銭感覚もヤバめ?」
「えっと……」
そう聞かれましても……
私は金銭感覚がヤバめなのでしょうか?
というか今、珠鈴ちゃんは"も"と言いましたよね?
既に金銭感覚以外がヤバめだと思われていると……?
「私がいきなり超高額なものを欲しいといったら?」
「買いますよ?」
「超高額なんだよ?」
「手持ちで足りなければ、おろしてきますよ?」
「そうじゃなくて、そんな大金使ったら……」
「大丈夫です。お金は結構持ってる方ですから」
「だからって……それは、ここで私に使ってしまってもいいお金ではないでしょ?」
「珠鈴ちゃんは私の大切な人ですよ。大切な人に喜んでもらうために使うのですから、いけない事ではありません」
それに、私は普段からあまりお金を使わないんですよね……
会社の方で働いて得た給料は、この世界で使えるお金として換金していますが、あまり使うところがないので貯まる一方です。
珠鈴ちゃんが喜んでくれるのは嬉しいですし、そう悪い使い道だとは思わないのですが……
「そういえばハル。お前、結構いい家に住んでたよな?」
「そうですね?」
「お前は働いてないのに、あんな家なんだから、親が結構金持ちなのか?」
「そういう訳では……それに、働いてなくはないです!」
「おっ、わりぃわりぃ。そう睨むな。別に怖くねぇけど」
「睨んでいません」
「そうか? 明らかに"お前と一緒にするな"って顔をしてたぞ?」
「どんな顔ですか……」
熊谷さんはバカにしたように笑って話してきます。
真面目に話したいのか、ふざけたいのか……
「にしても、働いてたんだな。どこでだ? ちゃんと目立たなくしてるか?」
「私が働いているのは、この世界ではありません。別のところで働いて得たお金を、この世界で使えるお金に換金しているんです」
「……そういう事か、なるほどな」
熊谷さんは急に俯いて、何かを考え込んでいるみたいです。
珠鈴ちゃんも困っているみたいですし……
本当にどうしたというのでしょうか?
「あの……」
「どう説明したらいいのかよく分からないから、とりあえず保留です」
「は、はい?」
「帰ったらお兄ちゃんも交えて、ちゃんと話し合おうね」
「そうだな、それがいい」
よく分からないままに、圭君と話し合うことが決定しました。
それは全然構わないのですが、今日はなんか、私のせいで珠鈴ちゃんを困らせてしまってばかりのようで、申し訳ないです。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




