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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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183/331

無計画

珠鈴視点です。

 この高い塔からの景色を一通り見終えたところで、


「日帰りなんだろ? そろそろ次へ行こうぜ」


と、熊さんが声をかけてくれた。


「次はどこ予定なんだ? 水族館か? 動物園か?」

「いえ、先に買い物を……もともとここは、買い物ついでに寄りましたから」

「そうだったのか。何を買うんだ?」

「圭君への、誕生日プレゼントです」

「あぁ、なるほどな」


 水族館も動物園も、かなり幼い頃に行ったっきりだ。

 この街のはかなり大きいだろうし、少し気にはなるけど、それよりは買い物優先だ。

 それになかなか見られない珍しい動物とかは、頼めばハル姉が変身してくれるだろうし……


 ……こういう考え方は良くないかも知れないな。

 ハル姉に特別な力があるからって頼ってしまってる。

 私だって、お金持ちなんでしょ? って、訳の分からない頼られ方をした時とか嫌だったし……


 何かを実行出来る力を持っているからといって、誰かにそれを頼られるのは、嬉しい時と嫌な時の両方があるんだから……

 ハル姉があの変身の力を頼られるのが好きかも分からない……

 この間はノリで猫耳になってもらったりなんてしてしまったけど、本当に本当は嫌だったのかも……


「珠鈴ちゃん? どうしました?」

「おい、大丈夫か? 気分でも悪くなったのか?」

「あ、ううん。大丈夫です! ちょっと考え事をしてただけなので」

「そうか」

「何かあれば、遠慮なく言って下さいね?」

「うん、ありがとう」


 私が少し暗いというだけで、ハル姉も熊さんも心配してくれる。

 ハル姉に皆がハル姉を心配してるという大切な事実を分かって欲しいと思うけど、それを分からせるのならば、私自身も皆から大切に思われているのだという事実をちゃんと分かっていないといけない。

 だからこそ皆の優しさを、本当にありがたいと思う。


「ハル姉もちゃんと言ってね? 嫌な事とか……」

「え? あ、はい」

「今日の買い物を付き合わされたのは、嫌じゃない?」

「もちろんですよ!」

「この間の、猫耳になってもらったのとかは?」

「嫌ではありませんが、少し恥ずかしかったですね……でも、圭君が喜んでくれていたので、良かったと……」

「ほう、圭は猫耳好きだったのか」


 ハル姉が照れながら嫌じゃなかったと言ってくれたところで、熊さんは面白がるようにからかってきた。


「ち、違います! あれは私が勝手にお願いしただけで、お兄ちゃんが猫耳推しとかじゃなくてですねっ」

「なら、クマ耳推しか? 俺の娘はよくクマ耳のパジャマを着てるんだが、あれは娘の彼氏がクマ耳推しとかじゃなくて、名字が熊谷だからだろうからな」


 お兄ちゃんが変な勘違いをされたら困ると思って私が否定すると、熊さんはニヤニヤと笑いながら茶化して話してくれた。

 だから私も乗っかって、


「そーですかー? 彼氏さんの趣味で着てあげてるのかも知れませんよー?」


と、笑いながら返しておいた。

 私が色々と考え過ぎて暗くなっていたんだと察してくれていたからこそ、こうして茶化してくれたんだろう。

 本当に熊さんはいい人だ。

 やっぱりハル姉にもちゃんと分かって欲しいな。


「そろそろ、この塔の下のお店を見に行きましょうか」

「そうだね! 何を渡すかも決めないといけないし」

「それもまだ決まってなかったのか……」

「無計画ですみません……」

「いや、いいさ。それに圭によく似ている。流石は兄妹だな」

「え?」

「圭も何をハルに渡すのかを悩んでいたからな」

「そうなんですねー」


 お店に行って、色んなものを見ているからこそ、渡したい物を思いつく事だってあると思う。

 だから何を買うかを決めてから買い物に来るんじゃなくて、買い物をしながら何を買うかを決めるという事は今までもよくあった。

 でも、言われてみると確かに、これはお兄ちゃんの影響かもしれない。

 昔から家族へのプレゼントとか、私が何か欲しいと行った時とか、具体的に買いたい物が決まっていない時でも買い物に連れて来てくれていたし……


私がそんな事を考えている間に、


「あの、圭君が私に渡す物を悩んでいたって……?」

「ん? あぁ、クリスマスプレゼントの話だよ。そのストールだろ?」


という会話を、ハル姉と熊さんはしていた。

 今日、というかほとんど毎日ハル姉が着けていたストールは、お兄ちゃんからのクリスマスプレゼントだったんだ。

 お兄ちゃん、愛されてるなぁ……


「それはそうですけど、どうして圭君が悩んでたって知ってるんですか? お会いしたんですか?」

「あぁ。たまたま俺も娘の服を買いに行っててな、会ったんだよ。そん時に、プレゼントにストールってどう思うかって話を少ししてな」

「そう、なんですか……」


 ハル姉はまた少し悩んでるみたいだ。

 多分、ハル姉が思っていた以上に、お兄ちゃんが熊さんのお世話になっているんだという事を考えているんだろう。

 ハル姉にとっての熊さんへの印象が、いい方へと変わってきているんならいいけどな。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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