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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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真名

珠鈴視点です。

 ハル姉と私達では、名前というものに対する認識が違うって事が分かった。

 私の説明で、ハル姉も私達が名前で呼ばれるというのをどういう風に捉えているのかを分かってくれたみたいだし、今後はこれで悩む事もないと思う。


 それにしても、今のうちに気付いて本当によかった。

 もし今後、お兄ちゃんの男友達とかとハル姉が会った時に、ハル姉がその人を名前で呼んじゃったりしたら、大問題になっていたところだ。

 当然お兄ちゃんはいい気はしないだろうし、お兄ちゃんの友達も変な誤解をしてしまうだろうから。

 まぁ、お兄ちゃんに友達が出来るかどうかっていう、別の問題はあるけど……


「そうなのですね……では、今後は私も熊谷さんとお呼びします」

「俺は別にいいが、今まで義勝って呼んでたのが急に熊谷に変わったら、圭が心配するんじゃないか?」

「そうだね。何かハル姉を怒らせるような事を熊さんがしたんじゃないかって思うだろうね」

「で、では……どうしたら……」

「熊さんでいいじゃん! 私がそう呼ぼうって言った事にすればいいだけだよ」

「……」


 ハル姉は少し俯いて考え込んでいる。

 そこまで熊さんって呼ぶのが嫌なのかな?


「ハル姉は渾名とかで呼ぶのは嫌いなの?」

「いえ、そんな事はありませんが……」

「どうしても熊さんは嫌?」

「嫌といいますか……」

「嫌なんだろ? 無理に呼ばなくていい。圭にも変な心配をされる前に、ちゃんと事の経緯を話せよ」

「……はい。お気遣いありがとうございます、熊谷さん……」


 やっぱり呼ばないみたいだ。

 盗聴されてたのが許せないっていうのは分からなくもないんだけど、熊さんはいい人そうなんだから、そこまで拒絶しなくてもいいと思うんだけどなぁ……

 何か他にも理由があるのかな?


 そういえば、ハル姉には名字がないな……

 異世界とかも行ったりする特別な人だし、名前に関する認識も私達とは違っていた。

 もしかしたら、ハル姉にとっての名前の認識として、渾名で呼ぶのは相当におかしい事とか、そういう事なのかもしれない。


「ねぇ、ハル姉は"ハル"っていうのが名前なんだよね?」

「え? はい、そうですよ」

「名字とかは特にないんだよね?」

「そうですね……」

「それって、皆そうなの?」

「皆?」

「外国の人って、名前が目茶苦茶長い人がいたりするでしょ? ハル姉の職場だって、色んな世界……? とかが関係してるんだから、色んな名前の人がいるんじゃないかと思って」


 そっちの決まり事とかで、渾名が禁止されてるとか、そういう事を気にしてるんじゃないかと思ったんだけど……?


「あぁ、お察しの通り、色んな名前の人がいますよ。もちろん名字がある方もいますし、やたらと名前が長い方もいます。ですがまぁ基本的には皆、短くて呼びやすい名前を登録しますからね」

「登録?」

「はい。芸能人さんの芸名みたいなものですよ。基本的に真名、というか……本名を知られる事は危険に繋がるものなんです。だから会社の方で仕事をする時用の偽名のような、自分の活動用の名前を登録するんです」

「危険に繋がるって……」

「その……相手の本名を知っているからこそ、名を縛って思い通りに操るとか……そういう術の存在する世界もありますから……」


 あー、何かフィクションの世界としてなら、そういうのも知ってるな……

 名前を呼ばれて返事をしたら吸収されちゃうとか、名前を書いただけで死んじゃったりとか……

 ハル姉にとっては、ああいうものが実際に存在してるんだろうな……


「って事はハル。お前のハルっていうのも登録名で、本名は別にあるのか?」

「……いえ、()()()()()、ハルしかありません」

「ん?」


 何か今の言い方、ちょっと変だった……?

 気のせいかな?


「私はハルが名前ですし、登録名もハルです」

「それは危ないんじゃないのか?」

「私は危なくないです」

「なんだその過信は?」

「過信ではなく事実です。先程言った名を縛る術というものは、相手にも同じ事が出来る場合、効果を発揮しません。互いに力を打ち消し合ってしまいますから」

「って事は、ハル姉も名を縛って人を操れるの?」

「……一応」


 何かハル姉、嫌そうだな……

 人を操れるなんて事、知られたら気味悪がられるとでも思ってるんだろうな。

 私達はそんなことでハル姉を嫌ったりしないのに。


「ハル姉、何か嫌な事聞いちゃってごめんね! ただ、ハル姉が渾名で呼ぶのが嫌いかどうかを知りたかっただけだから」

「あ、本当に嫌いではありませんよ? ただ、この人と親しくなりたくないだけです」

「おい」


 何でそんなに熊さんの事を嫌うのかは分かんないけど、ハル姉の雰囲気からして、本当に心の底から熊さんの事が嫌いという訳ではないのは分かる。

 だからハル姉が熊さんって呼んであげない事に関して、これ以上とやかく言うつもりはない。


 でも、さっきのハル姉の話は明らかにおかしかった。

 ハル姉は嘘を言わない人だから、嘘ではないんだろうけど、変に誤魔化しながら喋っているような感じ……


 そもそも、名を登録したというのは会社の世界の方で働くためになんだったら、それはかなり幼い時のはずだ。

 そんな最初から相手の名を縛って操れる訳がないんだから、最初から本名を登録する訳がない。

 それに、"もう"ハルしかないんだったら、以前はハル以外の名前があったって事だ。

 つまりハル姉のハルというのも仕事用の名前で、本名は別にあったのに、今はハルが本名であり、登録名となっているという事になる。


 何でそんな事になってしまったのかが凄く気にはなるんだけど、追及するのはやめておこう。

 ハル姉も、話したくないから誤魔化しているんだろうから……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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