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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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価値観

ハルさん視点です。

 珠鈴ちゃんと観光をしていたら、ガラの悪いご迷惑な人達に絡まれてしまいました。

 やっぱり私の髪がピンクのままなので、遊んでいる女に見えるんでしょうね……

 珠鈴ちゃんに多大なご迷惑だったのもあって、怒ろうとしていたら、義勝さんが上手く解決して下さいました。

 本当にありがたいとは思うのですが、義勝さんは何故ここにいたのでしょうか?

 地元民ではありますが、観光ですかね?


「ハル姉は熊さんの事を何で熊さんって呼ばないの?」

「はい?」

「義勝さんよりは呼びやすいよ?」


 私をからかいつつも、義勝さんと楽しそうに話していた珠鈴ちゃんは、私が義勝さんを渾名で呼ばない事を不思議に思っているみたいですね。

 確かに義勝さんは、自己紹介の時に"熊さん"と呼んで欲しいような雰囲気ではありましたが……


「この人と、そんなに親しい訳でもありませんからね」

「当人の前で、よくもまぁそんなはっきりと言えるもんだな」

「あなたのような方とは、親しくなりたいとも思いません」

「まだ怒ってんのかよ……だから、悪かったって」


 いまだに本当に刑事さんであるのかを疑いたくなります。

 盗聴器は仕掛けてきますし、ガラも悪いままです。

 まぁ確かに、お世話になったのも事実ではあるのですが……


「熊さんは、何かハル姉を怒らせるような事をしたんですか?」

「あぁ、まぁな。君は圭の妹だったな?」

「あ、はい。珠鈴です」

「そうか。俺はな、珠鈴の兄ちゃんに盗聴器を仕掛けて、こいつ等の会話を盗み聞いたんだ。捜査のためではあったが、悪かったと思ってる」

「そんな事が……え、それって、お兄ちゃんが刑事さんに疑われてたって事ですか?」

「圭が疑われてた訳じゃないさ。ただ、ハルに接触するためにな」

「あー、なるほどー。なんとなく察しました!」

「お、流石は圭の妹だな!」


 珠鈴ちゃんは義勝さんに笑いかけています。

 まさか、許したのでしょうか?

 こんなに失礼な人を?

 圭君といい、珠鈴ちゃんといい、なんという心の広さ……

 これは私も見習わないといけませんね。


「ハル姉、いい人そうだし、熊さんって呼んであげなよ」

「え、嫌ですよ……」

「おい」


 見習わないととは思いますが、だからといって渾名で呼ぶ程仲良くなろうとも思いませんし……と思っていると、


「じゃあ何で義勝さんなの?」


と、珠鈴ちゃんに聞かれました。


「はい?」

「熊谷さんでいいじゃん」

「あぁ、珠鈴はそれを気にしてたのか。俺も気になってたからな」

「えっと、何の事ですか?」


 何でしょうか?

 珠鈴ちゃんも義勝さんも、何をそんなに気にしているんでしょう?

 これはまるで、私が"熊さん"と呼ばない事を気にしているのではなく、"義勝さん"と呼んでいる事の方を気にしているみたいです。


「まさかと思うけど、お兄ちゃんの前でも義勝さんって呼んでた?」

「呼んでたぞ」

「はぁ……」


 珠鈴ちゃんの呆れたようなため息……

 義勝さんと呼んではいけなかったのでしょうか?

 私は一体どうしたら?


「あのね、どうして名前の方を呼んでるのかって話。親しくないなら名字でいいじゃん」

「え? 名前の方が固有名詞ではありませんか」

「こ、固有名詞?」

「はい。名字だと、同じ方が複数人存在しますよね? ご本人を特定するのであれば、名前が妥当かと?」

「そ、そうだけど……」


 熊谷さん家の義勝さんなのですから、熊谷さんというのはご本人を特定しているのではありませんよね。

 でしたら、やっぱり熊谷さんとお呼びするのは失礼だと思います。

 それは当人ではなく、家を呼んでいる事になるのですから。


「でも、熊さんの家族とまで知り合いって訳じゃないでしょ?」

「えぇ、知りませんよ?」


 何故ここで、義勝さんの家族と知り合いかという話になるのでしょうか?

 珠鈴ちゃんが何に困っているのかが、私にはよく分かりません……


「なぁハル。お前、圭と初めて会った時、圭の事をなんて呼んだ?」

「初めて? 最初からずっと圭君とお呼びしていますが?」

「私の事も珠鈴ちゃんだったし、お母さんとお父さんの事も名前で呼んでるよね」

「何っ! お義父さん、お義母さん、じゃなくてか?」

「そうなんですよー! お父さん達もいつでもお義父さんって呼んでくれていいって思ってるんですけどねー」

「小姑だけじゃなくて、両親にまで認めてもらうとはな……良かったじゃないか! これは俺の娘より結婚も早いかも……」

「熊さんは、娘さんがいらっしゃるんですね!」

「あぁ、彼氏はいるんだが、なかなか結婚しないんだよ……彼氏の方が渋ってるみたいでな……」

「えっ、それって大丈夫な人なんですか? 二股とか……」

「いや、それはない。本当に立派な好青年なんだが……」


 なんか、楽しそうに盛り上がっておられますが、結局のところ何だったのでしょうか?


「あぁごめんね、ハル姉。ようはハル姉と私達とでは、名前の価値観が違うって事なんだね」

「名前の価値観?」

「ハル姉からしたら、固有名詞を呼ぶのが当たり前かもしれないけど、私達からすると、名前で呼ぶのは親しくなってからなんだよ」


 私が状況を分かっていないと察してくれたようで、珠鈴ちゃんが説明して下さいました。

 つまり私は、ずっと義勝さんをとても親しい人のように呼んでいたという事なんですね……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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