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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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固有名詞

珠鈴視点です。

 ハル姉と一緒にお兄ちゃんが暮らす都会の方まできた。

 道中もハル姉はずっとナンパされていて面倒だった上に、観光をしようと寄った塔では、かなりしつこい男達に絡まれる事になってしまった。

 でも、そんな状況に困っていたところで助けてくれたおじさんは刑事さんで、しかもハル姉の知り合いみたいだ。


「お前みたいな目立つ奴がいたら、そりゃこうなるだろ?」

「すみません、髪を黒にしてから来るべきでした」

「そういう問題じゃねぇよ! ったく……圭はどうした?」

「圭君は今日は一緒じゃないです」


 この刑事さんはお兄ちゃんとも知り合いみたいだ。

 刑事さんと知り合いとか、なんか格好いいなー。


「で、こっちのはハルの妹か?」

「いえ、圭君の妹さんです」

「ハル姉の未来の妹さんでもあるから、ハル姉の妹っていう紹介でも間違ってないよ?」

「もうっ、珠鈴ちゃん!」


 ハル姉が照れてる。

 相変わらず可愛いな……


「なんだハル。もう小姑にも気に入られてんのか? 良かったな」

「義勝さんまで、何を言ってるんですか!」


 怖い顔をした刑事さんは、ふざけたように笑ってハル姉をからかっていた。

 怖そうではあるけど、とてもいい人なんだろう。

 でも、ハル姉が"義勝さん"って、名前の方でこの刑事さんを呼んだのが気になった……


「刑事さんは義勝さんですか?」

「あぁ、熊谷義勝。熊さんって呼ばれてる」

「へぇ~、よろしくお願いしますね、熊さんっ!」

「おっ! 君はいい子だねぇ~。どっかのお兄さんやお姉さんと違って」


 熊さんは私の頭を撫でながらそう言ってきた。

 私にこう言うって事は、そのどっかのお兄さんやお姉さんっていうのは、お兄ちゃんとハル姉の事なんだろう。

 きっと2人にも同じ自己紹介をしたのに、2人共"熊さん"とは呼ばなかったんだ。

 現にハル姉は義勝さんって呼んでいたし、お兄ちゃんも初対面の人に渾名で呼んだりするタイプじゃないから。

 あんなに熊さんって呼んで欲しそうだったのにな……ちょっと可哀想だ。


 それに、ハル姉の呼び方も気になる……


「ハル姉は熊さんの事を何で熊さんって呼ばないの?」

「はい?」

「義勝さんよりは呼びやすいよ?」

「この人と、そんなに親しい訳でもありませんからね」

「当人の前で、よくもまぁそんなはっきりと言えるもんだな」

「あなたのような方とは、親しくなりたいとも思いません」

「まだ怒ってんのかよ……だから、悪かったって」


 なんか、ハル姉の熊さんに対する態度は冷たい感じがする。

 私はいつものほわほわとした優しいハル姉しか知らないから、余計に違和感があるんだろうけど……


「熊さんは、何かハル姉を怒らせるような事をしたんですか?」

「あぁ、まぁな。君は圭の妹だったな?」

「あ、はい。珠鈴です」

「そうか。俺はな、珠鈴の兄ちゃんに盗聴器を仕掛けて、こいつ等の会話を盗み聞いたんだ。捜査のためではあったが、悪かったと思ってる」

「そんな事が……え、それって、お兄ちゃんが刑事さんに疑われてたって事ですか?」

「圭が疑われてた訳じゃないさ。ただ、ハルに接触するためにな」

「あー、なるほどー。なんとなく察しました!」

「お、流石は圭の妹だな!」


 ハル姉は動物になれたりする人だし、町をパトロールして警察に通報したりするとか言っていた。

 きっとそういう関係で探されていたんだろうな。

 そして、お兄ちゃんがハル姉と知り合いっぽそうだったから盗聴器を仕掛けたって事なんだろう。

 それをハル姉はまだ怒ってると……


 でも、だったら余計に、義勝さんなんて呼ぶのは不自然だ。

 たいして親しくない、寧ろ嫌いなような人を、名字ではなく名前で呼ぶなんて……


「ハル姉、いい人そうだし、熊さんって呼んであげなよ」

「え、嫌ですよ……」

「おい」

「じゃあ何で義勝さんなの?」

「はい?」

「熊谷さんでいいじゃん」

「あぁ、珠鈴はそれを気にしてたのか。俺も気になってたからな」

「えっと、何の事ですか?」

「まさかと思うけど、お兄ちゃんの前でも義勝さんって呼んでた?」

「呼んでたぞ」

「はぁ……」


 ハル姉は全く分かってないみたいだ。


「あのね、どうして名前の方を呼んでるのかって話。親しくないなら名字でいいじゃん」


 私がそういうと、


「え? 名前の方が固有名詞ではありませんか」


と、ハル姉は当たり前のように言ってきた。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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