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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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マッサージ

圭君視点です。

 父さんの仕事の手伝いも一段落したところで、僕だけ先に家に帰ってきた。

 実家に戻ってきた以上、今まで全然出来ていなかった家の手伝いをたくさんしようとは思っていたけど、思った以上にハルさんと過ごせていない。

 もちろん父さんに言えば、仕事の手伝いはしなくていいって言ってくれるんだろうけど、それはそれで違う気がするし……

 でも、もっとハルさんと過ごしたいというのも思うし……

 難しいな。


 まぁでも、ハルさんは珠鈴と仲良くなってくれた。

 今日も2人で泉の女神様に会いに行ったはずだ。

 最初はハルさんの事を疑っていた珠鈴も、今は凄くハルさんを慕っているし、そういうところがハルさんの凄いところだとも思う。

 ハルさんは多分、僕の家族達が自分を受け入れるのが早すぎるとか、そんな事を思っているんだろうけど。


「ただいまー」

「あっ、おかえりなさい。圭君!」

「ただいまです、ハルさん」


 帰って来ると、ハルさんがおかえりと言って迎えてくれる。

 もう何度かこの光景は見たけれど、それでも毎回嬉しく思う。

 いつかはこれが当たり前になっていけばいいな……と、そんな未来も想像しながら、玄関の戸を閉めた。


 優しく笑うハルさんが可愛くて、抱きしめたいと思ってしまう。

 あの家でなら、そうしてしまっていただろうけど、ここは実家だ。

 家族もいるんだし、ちゃんと自重しないといけない……

 ハルさんに恥ずかしい思いをさせる訳にはいかないんだから。

 ……あの猫耳を恥ずかしがっていたハルさんも、可愛かったけど……


「ん? ハルさんは何をされていたんですか?」

「ロールキャベツを作ってました!」

「ロールキャベツ? あぁ、夜ご飯ですか」

「はい!」


 迎えてくれたハルさんは、ずっと手を上向きにしていて、他のものに触れないようにしているみたいだった。

 これは抱きしめなくてよかったな。

 ハルさんの邪魔になってしまうところだった。


「圭、おかえりなさい」

「お兄ちゃんおかえりー」

「ただいま、僕も手伝うよ」

「もう終わるから大丈夫よー」


 キッチンの方では、母さんと珠鈴がロールキャベツを茹でているところだった。

 という事は、ハルさんはキャベツで種を巻いていたんだろうし、丁度全部巻き終わったところだったんだな。

 それならやっぱり、抱きしめてもよかったか?

 いや、それは恥ずかしがらせちゃうから……


「ハル姉ももういいよ。お兄ちゃんも帰ってきたんだし、2人で休んでたら?」

「ですが……」

「畑仕事って結構疲れるし、お兄ちゃんみたいなひょろひょろは、全身やられちゃってると思うんだよね。だからハル姉が癒してあげて」

「……珠鈴」

「あ、分かりました! では、僭越ながら私がマッサージを!」

「……お願いします」


 僕がそんな不純な事を考えていると知ってか知らずか、珠鈴がハルさんに僕を労うようにと言ってくれた。

 普通にあまりハルさんと過ごせてない事を考慮してくれているんだろうけど、まさかマッサージをしてもらえる事になるとは……


「どこがいいですか?」

「どこでもいいですよ。ハルさんがやりやすければ」

「そういう訳にはいきませんよ。ちゃんと疲れは癒さないと!」

「そんなに疲れてませんからね?」

「無理はよくないですよ! とりあえず肩からいきますので、そこに座って下さい」

「はい、ありがとうございます」


 ハルさんに促されるままに椅子に座ると、ハルさんが後ろにまわって来てくれた。

 後ろから僕の肩を揉んでくれている。

 正直、凄く気持ちいい……


「ハルさん、マッサージとかよくやるんですか?」

「いえ、初挑戦です。おかしいですか?」

「おかしくないですよ、とても気持ちいいです」

「それは良かったです」


 ハルさんは見た目からは想像できない程に力も強いからな。

 今は加減してくれているようで、とても快適だ。

 僕ばっかり、こんなに幸せでいいのかな?


「そういえば、泉の女神様には会えました?」

「はい、咲夜様と仰るそうですよ。とても美しい方でした」

「僕達はずっと、その咲夜様に見守ってもらっていたんですね。今度、僕も何かお供え物を持っていきます」

「果物がお好きだそうですよ」

「そうなんですね」


 それなら家でとれる桃を……いや、それはじいちゃん達が供えるか。

 このあたりでは珍しいような、変わった果物の方がいいかもしれない。

 そう考えると、向こうの土地神様達へも、あっちではなかなか手に入らない野菜や、魚といった、この辺りでしか取れないような物をお土産にするのが良さそうだな。


「圭君? 何か考え事ですか?」

「あぁ、土地神様達へのお土産を考えていました。ハルさんがこうして来てくれたのも、土地神様のお陰ですからね」

「圭君は本当に優しいですね」

「そんな事は……」

「じゃあ次は腰をやるので、うつ伏せに寝て下さいね!」

「あ、はい。ありがとうございます」


 ハルさんはまだマッサージを続けてくれている。

 本当に優しいというのなら、それはハルさんのほうなのにな。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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