お安い御用
ハルさん視点です。
「ただいまーっ!」
「ただいまです」
「2人共、お帰りなさい。泉の女神様には会えたの?」
「うんっ! 咲夜様っていうんだって。とっても綺麗な方だった」
「そう、それは良かったわ」
「果物が好きらしいし、持っていくなら桃とかの方がいいと思うんだ。後でおじいちゃん達に連絡しなきゃ」
「そうなのね」
帰って来てから、さっきの泉での話を珠鈴ちゃんが純蓮さんにしているのですが、純蓮に驚いている様子はありません。
私の話を聞いて、泉に女神様がいらっしゃるという事を、既に信じて下さっていたからこそですよね。
だからお会いしたという話にも、そこまで驚かれないんだとは思いますが、本当に凄い適応力だと思います。
「あ、後ね、今日の夜ご飯はロールキャベツになりました~!」
「いいけど、どうかしたの?」
「ハル姉の好物探し~」
「なるほどね!」
「そんな、本当にいいんですよ?」
「いいの、いいの。私が知りたいんだから! 作るのも手伝うし、お母さんが大変になるとかもないから、ハル姉は気にしないでー」
「そうよ、ハルちゃん。食べたいものがあったら、何でもリクエストして頂戴ね」
「その……ありがとうございます」
本当に皆さん優しいんですから……
食事のリクエストなんて、あの頃でもしたことはなかったんですけどね。
少し申し訳なくも思うのですが、純蓮さんも珠鈴ちゃんも、本当に嬉しそうに笑って下さっているので、申し訳なく思っている方が失礼なような気もしてきました。
私も夜ご飯を楽しみにしていようと思います。
「あ、そうだ! ねぇお母さん。この間の話、ハル姉が一緒ならいいでしょ?」
「あの事? うーん、そうねぇ……まぁいいけど、でもちゃんと気を付けるのよ?」
「それは分かってるよ!」
「あと、ハルちゃんに迷惑をかけないようにね」
「もちろん!」
珠鈴ちゃんは急に思い出したように、純蓮さんから何かの許可をもらっています。
何か私にも関係がある事のようですが……?
「あの……?」
「あ、ごめんね? ハル姉にちょっとお願いがあって……」
「はい、なんでしょうか?」
「私と一緒に、都会の方に行って欲しいんだよね。やっぱり田舎者1人で行くのは危ないと思うし……お父さんもお母さんも忙しいから、一緒には来れないんだよね……だからハル姉っ! お願い!」
「私が暮らしているあの町でいいのでしょうか?」
「うん!」
「分かりました! ご案内しますね!」
珠鈴ちゃんからのお願いは、都会に一緒に行って欲しいという事だったみたいです。
そういう事なお安い御用ですね!
若干治安の悪い町ではありますが、賑わいは一番ですからね。
それに先日、一番大きかった犯罪組織も解体されましたし、今は残る悪い人達も慎重になっているはずです。
善勝さん達警察の人も頑張ってくれていますし、何かあっても絶対に私が珠鈴ちゃんを守りますので、特に問題はありませんね。
「でも、何をしに行くんですか?」
「実は私、まだお兄ちゃんの誕生日プレゼント、何にするか決めてないんだよね。いいものも思い浮かばないし、折角ならお兄ちゃんがこれから暮らすところで探した方が、実用的な物が渡せるかと思ってね」
「なるほど~、そういう事でしたか」
「ハル姉はお兄ちゃんの誕生日プレゼントって、何か考えてる?」
「いえ、私もまだ悩んでいたんです。なかなか決まらなくて……」
クリスマスプレゼントの際はオーダーメイドのペンをお渡ししましたが、今度は何にするかが決まりません。
圭君の誕生日まではまだ結構日にちがあるとはいえ、そろそろ何を渡すのかをちゃんと考えて、用意しておいた方がいいですからね。
「じゃあ、一緒にお兄ちゃんの誕生日プレゼント選びしよ! あと、誕生日ケーキも作りたいから、こっちでは買えないような、変わった食材とかあるといいかなって思う!」
「いいですね~! では大きいお店に行ってみましょうか。私も行った事はありませんので、上手くご案内出来るかは分かりませんが……」
「大丈夫! じゃあ明日、よろしくね!」
「はい!」
明日は珠鈴ちゃんとあっちの町へ行くことになりました。
いつも私のためにとしてもらってばかりでしたので、こうして頼っていただけた事、私でも皆さんの役に立てるという事を、本当に嬉しく思います!
明日が楽しみですね!
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




