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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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神頼み

珠鈴視点です。

 信仰がなくなると神様は消えてしまうと、ハル姉はとても悲しそうに教えてくれた。

 きっと消えてしまった神様を知っているんだ……

 辛いだろうな……


 この泉の女神様である咲夜様は消える事はないみたいだけど、それでもあまり誰も来ないみたいだ。

 きっとうちのおじいちゃんとおばあちゃんくらいしか、そんなにお供え物もしないんだろう。

 おじいちゃん達でさえ、そこまでしょっちゅう来てる訳じゃないはずなのに、よく来ると言って下さっているんだから……


「あの、咲夜様の好きな物を教えて下さい!」

「好きな物?」

「お供え物は何がいいですか? 好きな物の方がいいですよね?」


 出来るだけ咲夜様に喜んで欲しいし、お供え物をするのなら咲夜様の好きな物の方がいいと思う。

 それをおじいちゃん達にも知らせて、出来るだけ町の人にも知らせていきたい。


「あぁ、瑞樹の者はいつも、野菜と花を供えてくれますね」

「野菜じゃない方がいいですか?」

「あれはあれで好きですよ」

「って事は、もっと好きな物があるという?」

「えっと……」

「いいんですよ、言ってしまって。女神だからと我慢する必要はないんですから」


 咲夜様はなかなか好きな物を教えてくれないなぁ~と思っていると、ハル姉も咲夜様に好きな物を言うようにと促してくれた。

 でもなんか、少し重い感じだ……


「ですがハル様……その、人々の生活を脅かす事に……」

「咲夜様、時代は変わりました。今は、人が都合のいい時だけ神を信じる時代です。普段は神様の事を思い出しもしないのに、年越しやお祭りの時だけ参拝したりするのが常になってしまっている所が殆どですよ」

「確かにここも、昔に比べると祭り事は減少しましたね……」

「昔ほどは、誰も神様を信じていないんですよ……神ちゃん達も、それで頭を悩ませていまして……」

「神ちゃん? もしやあの大柱の……?」

「そうです」


 なんか、難しげな神様談義が始まってしまっている……

 私はただ、お供え物のために咲夜様の好きな物を知りたかっただけなんだけど……


「ハル姉……?」

「あぁ……昔は、神様というのはもっともっと信仰されていたんです」

「うん?」

「雨がなかなか降らない、作物が虫に食べられる、嵐がくる等……そんな自然災害の解決を、全て神に委ねていたんですよ」


 私が聞くと、ハル姉は静かに話し始めてくれた。

 昔だったら天気予報とかも今ほど当たらないだろうし、植物に優しい殺虫剤もないと思う。

 だから神頼みだったって事は分かるんだけど、それとお供え物に何の関係があるんだろう?


「何か悪い事が起きれば、全ては神様がお怒りなのだからと、どんどんお供え物を増やしていく事は、珍しい事ではありません。ですが、いくらお供え物を増やされようと、神様には人々の生活に直接関わるような行いは出来ないんです」

「豊作を祈り、人々は本当に沢山のものを供えてくれました。それで自分達の食料がなくなってしまう事も厭わずに……」

「えっ……」


 それは本当に私達とは感覚が違う行いだ。

 神様にお供え物をするにしても、自分達の食料がなくなってしまう程に供えようとなんて、私達は思わない。

 でも昔の人達は、全て神様頼みだったんだ……

 自然災害の原因も分からなかったから……


「この地ではありませんが、嵐を止めるためと人が捧げられる地もあったと聞いた事があります。それほどに、人々は我々に頼っていたのです……」


 生け贄とか、人柱とかいう奴だろうか……?

 昔話とかゲームとかでなら聞いた事があるけど、実際にあったと言われると本当に怖いと思う……

 咲夜様もそういう事を気にしているから、お供え物に自分の好物を言う事を躊躇っているんだろう。

 持って行かなければいけないという責任感に駆られて欲しくはないから……


 でも、そんな事なら大丈夫だ!


「さっきハル姉も言ってましたけど、時代は進化してるんです! 科学の力も発展してきた今では、神頼みで自然災害を終わらせようなんて、誰も思ってないと思います! だから、計画性のないお供え物なんて誰もしませんから、大丈夫ですよ!」


 少し重い話だったし、出来るだけ明るくなるように言ってみると、ハル姉も咲夜様も、とても優しい笑顔を向けてくれた。

 神々しいとも思えるその2人の笑顔は、破壊力が凄い……


「ありがとう、珠鈴。そうですね、よく来てくれる瑞樹の者達も、私に願い事を言っていく訳ではありません。確かに、昔とは違うのでしょう」

「はい! だから好きな物を教えて下さい」

「……私は、瑞々しい果実が好きです。出来れば甘い物を」

「桃とかどうですか?」

「はい、大変好ましく思います」

「分かりました! おじいちゃん達に伝えておきますね!」


 うちは主に野菜を作ってる農家だから、果物はあまり育てていない。

 それでも桃と林檎は育ててるから丁度いい。


 少し重い話もあったけど、咲夜様の好きな物を知れて良かった。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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