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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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泉の女神様

珠鈴視点です。

「ハル姉~! こっち、こっちー!」

「はーい!」


 私とハル姉は今、家の近くの山を登っている。

 ここには昔から女神様が住んでいるという泉があるからだ。


 女神様が本当にいるのかは分からないけど、土地神様とも知り合いだというハル姉が一緒なんだから、もしいたら会えるかもしれない。

 会えたら話したい事がたくさんある。

 いつも見守ってくれているお礼とか、ハル姉についてのお願いとか……


 昨日はハル姉の力について、お父さんとお母さんにも聞いてもらった。

 2人ともお兄ちゃんからの手紙のことで、最初からハル姉を信用していたとか……

 だったら私にもちゃんとそう言って欲しかった!

 まぁ多分、私にはちゃんと私が自分から納得した方がいいと思ったんだろうけど。


 私は、お母さんからお兄ちゃんに誰かが手紙を書くように勧めたみたいだという話を聞いた時、想像したのがご年配の方だった。

 だからまさかハル姉だとは思ってなかったし、お母さんが手紙の事を言い出した時は少し驚いた。

 でもハル姉の事をちゃんと知った上で考えてみれば、確かに納得だ。


 確かにあの手紙には私も本当に感謝してる。

 お兄ちゃんが悩んでいたのは分かっていたのに、妹の私の前ではしっかりものとして気丈に振る舞う姿をみていたら、何に悩んでいるのかなんて聞けなかった。

 ただお兄ちゃんが選んだ道を応援するしか出来なくて、全く連絡も取らないようになっていってしまって、あの時私はどうするのが正解だったのかと問い続ける毎日を終わらせてくれた。

 そして今がある。


 ハル姉が手紙を書くようにと言ってくれていなかったら、私達家族には結構深い溝が出来てしまっていたかもしれない。

 それを考えると、ハル姉には感謝しかないな。

 本当に凄い人だと思う。

 でも、少し困った所もある……


 ハル姉は凄い人だからこそ、私達から心配される事を理解出来ないんだろう。

 危なくないとか心配いらないとかばかり言っていて、危機感を持っているように見えない。

 それをハル姉にとって守る対象である私達が言ったところで、何も伝わらない。

 だからこそ、女神様から伝えて欲しいと思う!

 そういう方の言葉だったら、ハル姉もきっと素直に納得してくれるだろうし……


 ただ問題は、女神様とかって、私みたいな普通な人が喋っても大丈夫なのかって事だよね……

 お兄ちゃんは土地神様と話した事があるみたいだったし、優しい方だったと言っていたけど、全ての神様が優しいとは限らないと思う……

 女神様が怖い人の可能性も……


「追い付きましたよ~」

「うん! この辺りから、ちょっと滑りやすくなるから気をつけてね!」

「分かりました」


 もう走るのは止めて、ハル姉と2人でゆっくり山を登っていく。

 もう少しで泉がある場所だ。


「素敵な山ですね」

「ん? そう? 山なんてどこでもこんな感じじゃない?」

「この山は管理が行き届いていますよ」

「あぁ、前はゴミとか結構捨てられてたらしいけど、今はそういうのに厳しくなったからね!」

「あ、いえ……そういう人為的な事もそうなのですが、木々からエネルギーを感じるという意味です」

「そうなの? よく分かんないなぁ」

「ここの土地神様の力が行き届いているという事ですよ」


 ハル姉はそういうのも分かるのか……ってことは?


「じゃあやっぱり、女神様はいるって事なんだね!」

「泉に女神様がいるかどうかは別として、この山に土地神様がいらっしゃるという事は間違いないですよ」

「そうなんだ!」


 もしかしたら女神様じゃなくて男の神様かもしれないって事か……


「ですが、古くからある伝承というのは、信仰を絶さないために作られたものでしょうからね。そうそう間違っている事はありません。おそらくは、泉の女神様で間違いないと思いますよ」

「おぉ~」


 これはお会いするのが楽しみになってきた!


「でも、本当に女神様がいたとしても、出てきてくれるのかな? ハル姉は知り合いじゃないんでしょ?」

「そうですね……まぁ、出てきて下さると思いますよ」

「ん? それって、ハル姉が特別な力を使える人だから?」

「はい」

「じゃあお会いする時、私はいない方がいい?」

「いえ、大丈夫です」


 ハル姉はニコニコと笑っている。

 女神様にお願いがあって来てるんだから、会ったらダメって言われるのは困ってたから良かったけど、なんだろう?

 何か、ハル姉の雰囲気に違和感がある……?

 ハル姉は初対面の女神様に会うっていうのに、緊張したりしないんだろうか?


「あ、あそこだよ! ハル姉!」

「わぁ、これは本当に美しい泉ですね!」


 ついに泉に到着した。

 私が小走りで泉にちかづくと、ハル姉も綺麗だと辺りを見渡しながら、泉に近づいて来てくれた。

 そして、ハル姉が泉を覗き込もうとした時、


バッチャーンッ!


と、泉の中心の方から、凄い大きな水柱が立った。

 何事かと思ってそっちをみると、整った顔立ちで、透き通るように輝く金の長い髪の女性が1人……

 その女性はハル姉の方を見るやいなや、


「ハ、ハハッハハハ、ハル様ーーっ!?」


と、叫んだ……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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