神様事情
ハルさん視点です。
純蓮さんと健介さんが私を信用してくれていたのは、あの時の手紙の事が影響していたんだと分かりました。
私はただ、圭君とご家族の皆さんにちゃんと話し合って欲しかっただけなのですが、それがこんな風に私を受け入れて下さる事に繋がるとは……
全て、圭君の手紙に優しい思いが詰まっていたからこそですね!
「それで、ハルちゃんは危ない事はしていないのよね? 世界のバランス維持だなんて、かなり大変そうだけど……」
「あ、大丈夫ですよ! 何も危なくなんてありませんから」
「それならいいけど……」
何処となく、皆さんの表情が暗い気がします。
本当に何も危なくはないのですが、分からない仕事だからこそ、危険に感じてしまっているんですね。
私が圭君と出会った時に怪我をしていたというのも、心配される要因になってしまっていますし……
「そういえばハル姉? お金はどうしてるの? 匿名の通報とかパトロールじゃ、給料は出ないでしょ?」
「あ、その……私のような存在がたくさんいる世界がありまして、そっちで働いたお金をこの世界の通貨に換金してもらってます。なので、大丈夫です!」
「それは大変ね……ちゃんとこの世界で働いた方がいいんじゃない?」
「それはそうなのですが、何分戸籍がないもので……」
「あぁ……」
この世界では、どうしてもこの問題に直面してしまうんですね……
「戸籍がなくて働けないんだったら、家で一緒に農家やるか? ちゃんと給金も出すぞ?」
「それは大変ありがたいお話なのですが、出来るだけ世界の核の近くにいたいんです」
「世界の核? そんなの、どこにあるんだ?」
「それは……」
「あぁ、悪いな。答えにくい質問だったか。ようは向こうにあるって事だろ?」
「はい……」
健介さんの質問にすぐに答えれられずにいると、気を遣われてしまいました……
本当に申し訳ないです……
「たまにですが、世界が歪んだりもしますし、核から離れるのはあまり良くなくて……」
「今は大丈夫なのか?」
「はい。土地神様が見てくださってますから」
「土地神様っ!?」
「とても優しい方だよ」
「あら、圭もお会いしたことがあるのね」
「うん」
私の土地神様発言に皆さんを驚かせてしまいましたが、そこまでは気にされていないみたいです。
圭君が落ち着いて話してくれているからですかね?
「ハルちゃんは神様ともお知り合いなのね」
「そうですね。世界のバランスを保つ上で、協力して下さる事もあります。今回のように、少し核から離れるからと、核をお願いする事もありますし……」
「大きい神社の方の神様が、別の神様に代理を立てて来て、一緒に紅葉狩りをしたりもさせてもらったよ」
「凄いっ! でも、そんなに神様って沢山いるの?」
「各地域の信仰次第では、1ヵ所に沢山の神様がおられたりもしますよ。人々の信仰心によって生まれる神様もいらっしゃいますし、その土地に永く芽吹く事によって生まれる神様もいらっしゃいますね」
この世界には色んな神様がいらっしゃいますからね。
神様という同じ存在ではありますが、土地神様はあの大木から生まれられた方ですし、神ちゃんは信仰によって生まれた方です。
「ここの近くに泉があってな、昔からとても美しい女神様がいらっしゃると言われているんだが……」
「そうなんですか?」
「なんだ……ハルが知らないって事は、いないのか。ただの伝承だったんだな」
「いえ、お知り合いでないだけで、いらっしゃる可能性はありますよ! 私は全ての神様と知り合いという訳ではありませんから」
「そうなのか!」
私はあの地域以外の方と、あまり関わって来ませんでしたからね。
知り合いの神様というのは、本当に少ないです。
私が生まれてから後に生まれた神様だって存在してると思いますし……
「じゃあ、女神様は本当にいらっしゃるかもしれないのね!」
「はい! その泉って、どこにあるんですか?」
「あの山の奥よ」
純蓮さんが指を差して教えて下さいました。
このお家からかなり近い距離ですね!
もし女神様がいらっしゃるのであれば、これはご挨拶に行っておいた方がいいかも知れません。
「明日、見に行ってみてもいいですか?」
「じゃあ、私が案内するね!」
「ありがとうございます!」
珠鈴ちゃんに案内していただける事になりました。
泉の女神様ですか……
ずっとこの土地を守って下さっている方でしょうし、ちゃんとご挨拶をして、お礼を言わなければ行けませんね。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




