弁明
ハルさん視点です。
珠鈴ちゃんに言われて、猫耳と尻尾がある状態の人に化けました。
そのまま帰って来た圭君達を迎えたのですが、圭君は唖然としていました……
当然ですよね。
すぐに戻ろうと思ったのですが、また光ってしまいますし、珠鈴ちゃんに引っ張られて奥へと来てしまったので、ちゃんとした弁明が出来ていません……
「それで、ハルちゃんの隠し事っていうのは、この事だったのね?」
「はい……あの、戻りますね」
「ダメっ! 可愛いんだから!」
「えっと……」
「ハルちゃんが嫌じゃないのなら、そのままでいいわよ」
「そうだな。圭もさっきから喜んでるし」
「あ、うん……凄く可愛いですよ?」
真面目な話をするためにも戻ろうと思ったのですが、珠鈴ちゃんに止められてしまいました。
圭君も可愛いと言ってくれていますし、このままで……
おかしい気もしますが……
「化けれるっていうのは、どういう事なの?」
「あの、私は普通の人ではないんです。こういう特殊な力を持った存在で、世界のバランスを維持するのが仕事なんです」
「あら、壮大ね~」
純蓮さんの珠鈴ちゃんと似たような反応……
流石親子ですね!
「世界のバランス維持に、化けれる事って関係あるのか?」
「あ、殆どありません。この化けれる力に関しては、私固有のものです。バランス維持には浄化の力を使います」
「浄化もできるのか」
「重力操作とかも出来ますよ!」
「重力を! それであの荷物が持てたんだな!」
「いえ……あれは、素です」
「そうか!」
健介さんも楽しそうに話してくれています。
こんな化け物だと分かったはずなのに、警戒してはいないみたいですね……?
「あ、あの……大丈夫、ですか?」
「ん? なにが?」
「私、こんなに怪しい存在なんですよ? それが息子さんの彼女だなんて……もっと疑った方がいいですよ……」
「ふふっ、そんな事、気にしないわよ」
私が皆さんに危機感を持って欲しくていうと、純蓮さんは楽しそうに笑ってくれました。
本当に全く私を疑ってくれません……
「そんなに簡単に信じては……」
「別に簡単に信じた訳じゃないさ。なぁ?」
「えぇ、そうね」
「はい?」
簡単に信じた訳じゃないと健介さんは仰っていますが、私がこの家にお邪魔した時から既に、お2人は私を疑っていませんでしたよね?
圭君が選んだ人だからと思っていたにしても、こんなに怪しい存在だったのに……
「ハルちゃんよね? 圭に手紙を書くように言ったのは」
「え? あぁ、はい。そうですね」
「ありがとうね。本当に嬉しかったわ」
「ずっと仕事で忙しくてな、全然子供達を見てられなかったんだ。仕事を言い訳にしてるって言われたらそれまでなんだが……」
「お父さんとお母さんが忙しいのは、私達も分かってるよ。それに頑張って時間を作ろうとしてくれてるのも知ってる」
「おう、ありがとな。圭も珠鈴もこういう出来た子供になってくれたからな。頼りすぎちまってるんだよ……」
「そんな事ないって」
健介さんは圭君や珠鈴ちゃんとあまり一緒には過ごせていないんですね……
それを気にしているみたいです。
「恥ずかしい話だが、圭が向こうに行くって言った時も、俺は何を言ってやればいいのかが分からなかった。圭が何か悩んでるっていのは分かってたんだがな」
「そうだったんだ……」
「私も圭の邪魔になってしまうのが嫌で、段々連絡出来なくなっちゃっててね……あまり心配しなくても、圭ならきっと大丈夫だって思って……」
「あれは、僕も連絡取りにくい環境にいたからで……」
ようやくあの時の話が出来ているみたいですね。
圭君も家族との関わり方に凄く悩んでいましたもんね。
「だからあの手紙は本当に嬉しかった……」
「そうだな」
「あとから手紙を書くようにと言った人がいると知った時は、もうすぐにその人にお礼を言いたいっ! って、思ったのよ?」
「飛び出して行きそうな勢いだったな」
「もう、恥ずかしいじゃない」
お二人共、とても楽しそうです!
「だからね、ハルちゃん。私達はあなたに会う前から、ずっと感謝してるし、信用してるわ」
「ありがとうな、ハル」
「いえ……」
そういう事だったんですね……
あの時は私も突飛に言ってしまったのですが、今の事を思うと本当に良かったと思います。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




