親譲り
珠鈴視点です。
買い物を終わらせて、ハル姉とケーキの話しをしながら家に帰ってきた。
「あ、お昼ご飯ですね! 手伝います」
「いいのよ、ハルちゃん。買い物も疲れたでしょうし、ゆっくり休んでいて」
「そういう訳には……」
「ハル姉! お風呂の部屋の反対側の部屋、入って右川の棚の一番下にお兄ちゃんのアルバムがあるから」
「えっ!」
「ゆっくり見てて!」
「え、えっと……ありがとうございますっ!」
お母さんとハル姉についてを話したかったから、ハル姉にはさりげなくお兄ちゃんの昔のアルバムの場所を教えておいた。
アルバムに興味津々のハル姉は奥の部屋に行ってくれたし、今のうちにお母さんと話しておこう。
「お母さん、ハル姉の事なんだけど」
「うん?」
「目茶苦茶いい人だった」
「ふふっ、そうね」
お母さんは最初からハル姉を疑ってなんていなかったからな。
やっと分かったのって顔してる……
「でも、私達に隠し事があることを悩んでるみたいなの。一応は隠し事なんてあっても全然いいんだよって伝えたけど、まだ気にしてるみたい」
「そう……」
「話せない事なら無理に話さなくていいんだけどね」
「そうねぇ……圭は知ってるんでしょ?」
「話せる範囲で知ってるって。お兄ちゃんの事は何でも知りたいと思うからこそ、お兄ちゃんも自分の事を知りたいんじゃないかとかって、話せない範囲があることを悩んでるね」
「それでアルバム……」
「うん」
お母さんは料理の手を止める事なく聞いてくれてる……
多分この後も仕事があるだろう。
だからあまり時間がないんだ。
私も手伝ってるけど、私の手伝い程度でお母さんの仕事が減る訳じゃないし……
「離せる範囲の話、私達もちゃんと聞いてあげるべきだと思うんだけど、どうする? ハル姉の話は長くなりそうだったし、お母さんもお父さんも、あまり時間は作れないでしょ?」
「……いいえ、作れるわ!」
「え?」
「珠鈴、お昼ご飯1人で作れる?」
「う、うん……クオリティを気にしないでくれるなら」
「じゃあ、よろしくねー!」
バタバタバタッ!
お母さんは料理もやりかけのまま、飛び出していってしまった……
私の突飛な行動とかって、絶対にお母さん譲りなんだろうなぁ……と思いつつ、料理の続きをしていく……
お菓子作りは得意だけど、料理はそんなになんだよなぁ……
お菓子とかだと、ちゃんと分量を計ってから混ぜるけど、普通の料理だと目分量の事の方が多いし、大体いつも調味料を入れすぎちゃって、味が濃くなっちゃうし……
お母さんやお兄ちゃんみたいな美味しい料理は、なかなか出来ない……
「珠鈴ちゃん? 何か騒々しい音が聞こえた気がしたのですが、大丈夫ですか?」
「あぁハル姉、大丈夫だよ。お母さんが走って出ていっただけだから」
「あの純蓮さんが、走って……?」
「お母さんって大人しい人のイメージあるけど、そうでもないからね」
「そうなんですね。圭君と似てますね」
「え、そう?」
「はい!」
お兄ちゃんこそ大人しさの塊だと思うけどな……
焦ってるところなんて見たこともないし、怒ったりもしないのに……
やっぱり彼女の前では違うものなのかな?
ハル姉は私の知らないお兄ちゃんの姿も知ってるんだな。
それはなんかちょっと悔しいようにも思うけど、嬉しくも思う。
「純蓮さんが行かれたのなら、お料理も大変ですよね? お手伝いします」
「大丈夫だよ。ハル姉はお兄ちゃんのアルバム見ててくれていいよ?」
「いえいえ、是非手伝わせて下さい」
「そう? ありがとう!」
色々悩んでるみたいだし、本当はゆっくり休んでいてほしいけど、あまり何もしないでもらうっていうのも、ハル姉をお客さんとして腫れ物のように扱っているみたいになる。
家族の一員となってほしいから、お手伝いをしてもらえる事はすんなりと受け入れよう。
それに正直、私1人では心細かったから、手伝ってもらえるのはありがたい。
「でも、どうして急に走っていかれてしまったんですか?」
「今日の仕事を片付けにいったんだよ。そうしたら夜に時間がとれると思うから。だから、夜に教えてくれる? ハル姉の事情……」
「……分かりました」
ハル姉は覚悟を決めたような、少し重い様子だ……
「話さないといけない訳じゃないからね? ただ、さっきの感じからして、ハル姉は私達に話してない事を気にしちゃうでしょ?」
「私の為を思って、聞いて下さるんですよね。本当にありがとうございます」
「もー、固いって! もっと軽い感じでいこう?」
「……」
「どんな話でも、私達は大丈夫だから!」
「……はい」
ハル姉が凄く緊張してるのが伝わってくる……
ちゃんと和やかに話せるといいけどな……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




