話せる範囲
珠鈴視点です。
ずっと疑ってた事を打ち明けると、ハル姉は落ち込んでしまった……
もう思ってないからってちゃんと伝えているんだけど、そう思われていた事が辛いみたい……
謝りたかったから言ったんだけど、言わない方が良かったかな……?
「ハル姉、本当にごめんね? もう疑ってなんていないからね! それに疑っていたのは私だけで、お父さんもお母さんも全く疑ってなんていなかったから!」
「……はい、ありがとうございます。でも私……そんなに信用していただけるような存在じゃないですよ?」
「……ハル姉?」
ハル姉の表情は暗い……
かなり思い詰めてしまっているみたいだ。
「私、皆さんに話していない事があるんです……本当は話さないつもりでした。出来る限り、隠しておきたかったので……」
「うん?」
「でも、隠し事なんてしている自分を信用してもらっているなんて、いけないと思います! ですので、聞いていただけませんか? お忙しいのは重々承知なのですが、皆さんにちゃんと私の事を知っていただきたいです!」
少し震えながら、まるで何かを焦っているかのように、ハル姉は隠し事を聞いてほしいと言った。
凄く必死なのが伝わってくる。
隠しておきたかったって言ってるし、本当は話したくない事なんだろう。
それでも私達に失礼だからと、無理をして話そうとしてくれているんだ。
そんな事をしなくても、私達はちゃんとハル姉を信じているのに……
「あのね、ハル姉。隠し事なんて、誰だって1つや2つや3つや4つ、あるもんだよ。それは仲のいい友達だろうと家族だろうと隠したいものなんだよ」
「珠鈴ちゃん……」
「でも、そうやって隠し事があるからといって、友達ではなくなる訳じゃないし、家族は家族だよ。隠し事を話していないからって、相手を信用していないという事ではないし、自分が信用されないって事もないんだよ?」
ハル姉の隠し事というのを知りたくない訳じゃないし、なんなら全力で知りたい。
でも、無理に話して欲しいとは思わない。
ハル姉が本当に話したいと思った時に話してくれれば、それで十分なんだから。
「珠鈴ちゃんは、本当に優しいですね。珠鈴ちゃんだけでなく、純蓮さんも健介さんも……」
「お兄ちゃんの家族だって、納得できるでしょ?」
「はい」
ハル姉は落ち着いたみたいだ。
真面目な人だからこそ、隠し事はいけない、話さなければいけないって思ってしまってたんだろうな。
自分が責任感で話そうとしていた事に気付いてくれたのなら良かったと思う。
「圭君も、ちゃんと話さなくてもいいと言って下さいました。無理に私の事を話さなくても、少し変わった人だと説明していればいいと……」
「そうだったんだね」
ハル姉がとても優しい素敵な人だと分かった今なら、私もその説明で十分だと思う。
危険な人ではないのなら、自分の事を全然語らないのも、変わった人だからで納得できるし。
「でも、お兄ちゃんは知ってるんでしょ? ハル姉の事」
「話せる範囲でお話してあります」
話せない範囲もあると……
それを決めているのは、ハル姉なのか、違うのか……
「珠鈴ちゃん。私は今、少し不思議な感覚なんですよ……」
「え? 何が?」
「先程の圭君の同級生だったという皆さん……彼等は私の知らない圭君を知っていますよね?」
「そりゃあ、まぁ、そうだね」
「それを、ズルいと思ってしまっているんです……」
「あぁ……」
自分の知らないお兄ちゃんの事を知ってるからって、嫉妬してるのかな?
まぁあいつ等が知ってるお兄ちゃんの事なんて、お兄ちゃんからしたらあまり知られたくない事だろうけど……
「そうやって圭君の事をどんな些細な事でも知りたいと思ってしまってる自分がいて……」
「うん?」
「もしかしたら、圭君もそうなのではないかと……」
「ハル姉の事を、どんな事でも知りたいかって? そりゃそうだよ。お兄ちゃんはハル姉の事が大好きなんだから」
「……私も圭君が大好きですよ」
「うん」
いや、私に惚気られても……
いいけどね!
「えっと、その、つまりですね……」
「お兄ちゃんへの隠し事なんてやめたいって事だね!」
「はい。でもそれは出来なくて……」
「出来ないならしょうがないね!」
「はい……」
落ち込んでるというか、なんというか、感情が顔に出過ぎだ。
なんとかしてあげたいけど、事情を知らない私にはなんとも出来ない。
これは事情をしっかりときいて、一緒に考えてあげるのが良さそうだな……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




