朝の様子
珠鈴視点です。
コンコンッ! コンコンッ!
なんか、変な音が聞こえる……
まだ少し重たい目をあけて、時計を確認すると6時前……
いつもは目覚ましで6時に起きてるけど、まぁいいか。
ベッドから出て変な音がしていた部家の外を確認した。
「んぁ~、ハル姉~?」
「あ、珠鈴ちゃん! おはようございます!」
やっぱりハル姉か……
この時間ならお父さんもお母さんも畑に行ってるはずだからね。
お兄ちゃんも多分手伝いに行ったんだろう。
こんな朝からお兄ちゃんの部家の前にいるって事は、お兄ちゃんに何か用があったんだろうけど……
「おはよう~、早いね。こんなお兄ちゃんの部屋の前でどうしたの?」
「すみません、顔を洗おうと思ったのですが、洗面所の場所が……」
「あぁ、こっちだよ」
「ありがとうございます」
そっか、昨日私がちゃんと説明すればよかったな……
これは申し訳ない事をしてしまった。
「昨日案内しておくべきだったね、ごめんね」
「いえいえ、こちらこそ起こしてしまったようで申し訳ないです」
「大丈夫だよ。いつも6時に起きてるから、この時間ならいつもとそんなに変わらないの」
「そうなんですね。やっぱり農家さんは早起きなんですね!」
「まぁそうだね、お父さん達はもっと早いよ。ハル姉はいつも、何時起きだったの?」
「あ、えっと……」
また困ったようにいい淀んでる……
やっぱり夜の仕事をしていたとか、そういうのが言いにくいんだろう。
「これはまたまた事情って奴かな? まぁいいよ、答えにくいなら答えなくて。はい、ここだよ」
「……ありがとうございます」
私の言い方が冷たかったからかな?
ハル姉は少し暗くなってしまった。
私は別に、ハル姉の事は嫌いじゃない。
こんな綺麗で可愛い人が自分のお姉さんになるのかと思うと、嬉しさが溢れてくる。
だからお兄ちゃんとの関係は一応応援しているんだ。
でも、お兄ちゃんにはもう、傷付いて欲しくない……
前にみたい1人で全部抱え込んで、何も相談もしてくれないままに離れていってしまうような、あんなお兄ちゃんは見たくないんだ。
だからハル姉を疑ってるだけで、ハル姉に嫌われたいとかは全然思ってないんだけどな……
でも、私がこんなに冷たい態度じゃ、ハル姉も当然嫌だろう。
私が原因でお兄ちゃんと不仲になるなんて事は避けたいし、もっとハル姉と仲良くなれるといいけど……
ハル姉が私の事も好きになってくれる事で、もっとお兄ちゃんの事を好きになってくれたら、私も安心して2人を見ていられるんだけどな……
ん? なんかハル姉が鏡をガン見してるな?
自分の顔を初めて見たくらいに驚いてるみたいだけど、どうしたんだろう?
「ハル姉? どうかした?」
「あ、いえ……こんな恥ずかしい頭で歩いていたんだと思いまして……」
「恥ずかしい? そう? 可愛いよ」
「あ、ありがとうございます……」
寝癖の事を言っていたみたいだ。
ハル姉の淡いピンク色の髪が、少しだけクルンってなっていて、可愛いのに……
驚いてたって事は、普段はあんまり寝癖がつかないのかな?
家のお布団は寝にくかったとかじゃないといいけど。
「はい、寝癖直し。使って」
「ありがとうございます」
ハル姉は私に笑いかけてくれる。
美人さんの笑顔にあまり慣れていないから、結構反応に困るんだよな……
そういう私の反応が悪いせいなのか、ハル姉はどんどん暗くなっていった。
何か思い悩んでいるみたいな……
「ハル姉?」
「はい?」
「ぼーっとして、どうしたの? 眠いの?」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
顔も洗ってたし、眠い訳じゃないというのは分かっていたけど、少し冗談めかして聞いてみた。
でもハル姉の暗さは変わらない……
変わらないというより、余計に暗くなっていっている気がする……
ハル姉の表情は凄くよく変わる。
ほとんど顔の変わらないお兄ちゃんとは、正反対みたいな人だ。
家に来たときからずっと楽しそうに笑っていたし、畑作業をしていた時も、お父さんの大変な仕事を手伝っていた時もずっと笑っていたから、私達に取り入るために笑ってるんだとかも思っていたけど、こうして悩む事もあるんだな……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




