表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜色のネコ  作者: 猫人鳥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

151/331

2人の関係

珠鈴視点です。

 夜ご飯の片付けを手伝ってくれてから、ハル姉はお風呂に入りにいった。

 一番風呂だなんてと気にしていたけど、私達だって客人に失礼を働く訳にはいかないので、そこは聞いてもらった。


「お風呂、ありがとうございました~。とても気持ちよかったです」

「それはよかったわ」

「ハル姉のお部屋はこっちだよ」

「あ、ありがとうございます」


 お風呂から出てきたハル姉の手を引いて、客間へと案内する。

 お母さんがお部屋を整え終えているので、私がする事は特に何もない。

 ただ部屋へと案内しただけだ。


「ここだよ。部屋の物は何でも好きに使ってくれていいからね」

「ありがとうございます」

「一応聞くけど、お兄ちゃんと一緒の部屋がよかった?」

「そ、そ、そんなっ! だ、大丈夫です……圭君と一緒のお部屋で過ごすなんて、緊張してしまいますし……」

「でも、ずっとお兄ちゃんの家に遊びに行ってたんだよね?」

「それは、そうなのですが……」


 凄い照れてる……

 まだお兄ちゃんと夜を一緒に過ごした事はないみたいだ。


 さっきのお兄ちゃんを見つけて駆け出した様子や、お兄ちゃんとの馴れ初め話……

 こうして照れていたりするところから見れば、どう考えてもハル姉はお兄ちゃんの事が本当に好きな恋人さんだ。


 でも、変な事を隠したがるし、若干のおかしな言動もある……

 何より12月の中頃から付き合っていたというのなら、もうそれなりの時間を共に過ごしてきたはずだ。

 恋人なら絶対に盛り上がるクリスマスだってあったはずだし、こうして彼氏の実家に泊まる事が出来る人が、彼氏の家に泊まれない訳がない。


 となると、敢えて泊まっていなかったという事になるし、なんならお兄ちゃんを避けていたようにすら感じる……

 夜に何か用事でもない限りは、とっくに一緒に過ごしてるよね?

 12月なら、お兄ちゃんの夜勤バイトだって終わってたはずなんだから……あっ! 夜勤か……


 お兄ちゃんとハル姉が出会ったという7月なら、お兄ちゃんはまだ夜勤バイトをしていたはずだ。

 つまり、世の中の人との生活時間がズレていたという事になる。

 そんなお兄ちゃんと出会う事が出来るのは、同じように生活時間のズレた人だけだ。


 ハル姉はきっと、夜の仕事をしている人なんだ!

 だから仕事についても言わなかった……

 そういう事なんだろう。

 そして、お兄ちゃんもちゃんとそれを知っているんだ。


 偏見なのは分かってるけど、ああいう仕事をしている人達って、お金に困ってるイメージがあるけど……

 ハル姉はお金に困ってるんだろうか?


 ハル姉の格好は可愛くて、きらびやかではない、お淑やか系だった。

 派手な装飾品も着けていないし、お金を散財してしまうようなタイプには思えない。

 ってことは、親の作った借金とか…………?


 そういえば、名字も言わなかったな……

 あれは隠したんじゃなくて、親の事を思い出すから言いたくなかったとか、そういう感じだったのかもしれない。

 力持ちだったのも、女性がやらないようなキツイ仕事とかを重ねていたからなのかも……

 でもこうして家に泊まりに来れたって事は、もう仕事は辞めたって事だよね?


「珠鈴ちゃん、珠鈴ちゃーん?」

「え?」

「どうかしましたか? 何か悩んでいるみたいでしたが?」

「ううん、何でもない! じゃあおやすみ、ハル姉。また明日ね!」

「はい、おやすみなさい」


 ハル姉が詐欺師の可能性は、もうほとんどないと思う。

 騙している様子なんてないから。

 ただ、玉の輿狙いの可能性はかなり高まった。

 家に複雑な事情があるのは仕方がないにしても、お金目当てでお兄ちゃんに近づかれるというのは、あまりいい気がしない……

 それに、お兄ちゃんよりもっとお金を持っている人を見つけたら、そっちに行ってしまうかもしれないし……

 そんなお兄ちゃんが傷つくような事は認めない。


 怪我をしたというのが、借金取りとか、夜の仕事で出会った乱暴な男とかにつけられた怪我だったのなら、そこを助けたお兄ちゃんはハル姉にとってヒーローだったはずだ。

 その上、お兄ちゃんに凄くお世話になったって事は、ハル姉が困ってちたお金問題も、お兄ちゃんがお金も全部払って解決したのかもしれない。

 お兄ちゃんはあまり物欲がないから、お小遣いもあまり使っていなかっただろうし、夜勤バイトもしてたんだから、貯金は結構あったはずだからね!


 段々と2人の関係が分かってきた。

 ハル姉にとって、お兄ちゃんは今はヒーローなんだ。

 助けてもらった事で、好きになったのかもしれない。

 でもそれは結構薄い愛だと思う。

 何よりも、助けてもらったという幻想が入ってるんだから、素のお兄ちゃんが好きというのとは、また違うはずだから。

 そんな幻想は、だんだんと崩れていくものだと思う。


 ハル姉が本当に、心から素のお兄ちゃんの事が大好きで、仮にお兄ちゃんが一文無しだとしても構わないというくらいの覚悟なんじゃないと、私はハル姉を認められそうにないな……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ