馴れ初め
ハルさん視点です。
「ただいまー!」
「お帰りなさい。あら、あなたも一緒だったのね」
「おう、今帰った!」
「えっと、ただいまです」
「えぇ! お帰りなさい! ハルちゃん!」
圭君のお家に帰って来ました。
お帰りと迎えて頂けるのは、本当に嬉しいですね!
「こんなに素敵な料理の数々を……ありがとうございます!」
「ハルちゃんが来てくれた事、本当に嬉しいの。だから遠慮せずにたくさん食べてね!」
「はい!」
まだ料理に関しては勉強中ですが、今ここに並んでいる料理が凝った物ばかりだというのは分かります。
しかも、どれも野菜がふんだんに使われていて美味しそうです!
「圭君のお料理上手は、純蓮さんの影響だったんですね!」
「そうですね。母さんは本当に何でも作りますからね」
「あら、私の影響という事もないでしょ? 圭は自分で調べて、どんどん作っていってるんだから。私に料理の仕方なんて、聞いてきた事もないじゃない」
「そうだった?」
「そうよ! 気が付いたら私より料理上手なんだから……ほらハルちゃん、こっちのは圭が作った料理だから」
「あ、いただきます! わぁ、美味しいです。こっちのも……美味しいですね! 見た目もこんなに美しいのに、味もよくて……あぁ、これも美味しいです!」
純蓮さんがどんどん勧めて下さって、たくさんいただいているのですが、美味しい以外の言葉が言えませんね。
何かもっと気のきいた言葉を言えたらよかったんですが……
「圭はよくご飯を作ったりしたのか?」
「はい! 毎日作って下さいました! いつもとても美味しくて、最近では私も教えてもらってるんです」
「ははっ! まずは胃袋を掴んだって訳か! やるなぁ、圭」
「そういう訳じゃ……」
健介さんは嬉しそうに圭君の背中をバシバシと叩いています。
なんというか、微笑ましい光景ですね!
「じゃあハル姉は、お兄ちゃんと会うまでは料理とかしなかったの?」
「全然しませんでしたね」
「買った物ばかり食べてたって事? 栄養偏るよ?」
「その、食べる事自体があまりなかったので……」
「えっ! ダメじゃない! ご飯は大切なのよ?」
「だから僕もハルさんに食べてもらおうと思って、料理を作ってたんだよ」
あまりなかったといいますか、全く食べていない状態だったのですが、そう言う訳にはいきませんからね。
嘘をつかないように、気をつけて話しています。
「で、どっちから告白したんだ?」
「なっ! 父さん、急に何言い出すんだよ」
「そりゃ気になるだろ?」
「気になるも何も、圭に決まってるじゃない」
「うんうん」
「……僕からだよ」
「やっぱり~」
圭君は顔を真っ赤にして照れています!
可愛いですね!
確かに、告白は圭君からしてくれましたね。
でもあの告白を、私は……
「ハルちゃん?」
「あ、すみません。何でした?」
「あ、ううん。なんか、落ち込んでるようにみえたから。ごめんね、恥ずかしい話を聞いてしまったわね」
「そんな事ありませんよ! 圭君と出会えて、私には嬉しい事ばかりですから!」
「そう言ってもらえると、嬉しいわ」
純蓮さんがとても優しく笑ってくれています。
こんなおかしな私に対して、ここまで優しくして下さるのは、私の事情を考えてくれているからですよね。
敢えて聞かないで下さっているんですね。
「さっき結局ちゃんと聞かなかったけど、2人馴れ初めはなんなの? お兄ちゃんはどこでこんな美人さんに出会ったの?」
「美人さんに出会ったのは、僕の家でだね」
「家? ハル姉の家は、お兄ちゃんの家のご近所さんなの?」
「そういう訳じゃないけど、偶然ハルさんが僕の家の近くを通ってたんだよ」
圭君も言い方が上手いですね!
路地裏で拾った猫が私だなんて言えませんからね。
でも、あまり圭君に無理をしないと話せないような話はしてほしくありません。
「私が困っていたところで、圭君が助けてくれたんです」
「困ってた? なんで?」
「ちょっと怪我をしてしまっていて……」
「怪我!? ハルちゃん、大丈夫なの?」
「はい、もう完治してますから。それに、そんなに大した怪我でもなかったので……」
「いえ、大した怪我でした! もう本当に気をつけて下さいね?」
「あ、はい……」
若干圭君に怒られてしまいました。
多少弾に撃たれた程度の怪我は、私にとっては大した事ありませんが、この比較的平和な世界で考えれば、結構大きい怪我に分類されますからね。
嘘は言っていませんが、発言には気をつけていないと……
気が緩んでいると、変な事も言ってしまいますからね。
「そもそも、それはいつの話なの? お兄ちゃん達は、いつから付き合ってるの?」
「あれは……7月になってすぐ位の頃ですね。それから何度も圭君にお世話になりまして、正式にお付き合いしていただく事にはなったのは、12月の中頃です」
「え? じゃあ付き合い始めたのはまだ最近なんだね」
「そうなりますね」
しかもあの裁判のせいであまり会えませんでしたからね。
本当にまだまだ付き合いたてという感じです。
「お兄ちゃんはなんて告白したの?」
「そ、そういうのは恥ずかしいから……」
「じゃあ、ハル姉は何て言ってオッケーしたの?」
「えっ、えっと……」
私、あの時なんて言いましたっけ?
圭君が本当に私達の力を打ち破ったという驚きと喜びで、感情もいっぱいいっぱいでしたし、何と言ったかは覚えていませんね。
「珠鈴、そのくらいにして。ハルちゃん、ごめんなさいね。ゆっくり落ち着いて食べてくれればいいからね」
私がかなり動揺していたのを察して下さったみたいです。
確かに恥ずかしい事は恥ずかしいのですが、こうして聞いて頂けるというのは、とても嬉しいです。
私はちゃんと、皆さんに迎えてもらえているんですね……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




