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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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明るい父さん

圭君視点です。

 実家に帰省するのに、ハルさんにも着いてきてもらった。

 ハルさんに会える事を本当に楽しみにしてくれていたようで、母さんは凄く喜んでくれた。

 珠鈴はハルさんが変わった人なのをちょっと気にしてるみたいだけど、もともと人懐っこい性格だし、面倒見のいいハルさんとは相性がいいだろう。

 特に心配する事はなさそうだ。


 でも、2人の帰りが遅い……

 野菜をとりに行っただけのはずなのに……


「母さん、僕もちょっと畑の方に行ってくるね」

「そんなに心配? 大丈夫よ」

「でもさ……」

「お父さんも近くで作業してるはずだし、話し込んでるだけじゃない?」

「そうかな?」


 まぁハルさん、野菜好きだしな……

 父さんとは話も合うだろうし……


「母さん、やっぱりちょっと行ってくる……」

「大丈夫だって。それよりこっち、手伝って」

「あ、うん……」


 今日はかなりのご馳走みたいだ。

 ハルさんの歓迎会なんだろうな。

 全部母さんが1人で用意するのは、かなり大変だ。


「こっちのは僕が作るよ」

「ありがとう、圭。あら、あなたまた料理の腕を上げたんじゃない?」

「そうかな?」

「ハルちゃんのため?」

「……まぁね」


 それからは母さんに散々茶化されたりもしながら、ハルさん歓迎会の準備をした。

 結構時間が経ったと思うんだけど、まだハルさんと珠鈴は帰って来ない……


「母さん……」

「そうね、ちょっと遅すぎるわね」

「様子を見てくるよ!」

「えぇ、よろしくね」


 畑の方へ向かって走り出した。

 ハルさんはかなり強い人だから、よっぽどの何かがない限りは大丈夫だろうけど、それでもやっぱり心配だ。

 この町の治安はそんなに悪くないし、鍵を開けっ放しで過ごしても大丈夫なほどに緩い町だけど、瑞樹家をよく思っていない人は当然いるし、ハルさんは美人だし……と、なんか色々心配しながら畑の方へと来ると、


「圭君! 圭くーん!」


と、手を振りながら走ってくるハルさんがいた。


「ハルさん……よかったです、無事で」

「無事? えっと何かあったんですか?」

「いえ、帰りが遅かったので、ちょっと心配で……」

「それはそれは、ご心配おかけしました。何事もなく、楽しく過ごして来ましたので、ご安心下さいね!」

「はい」


 ハルさんと話していると、


「まさか本当にお兄ちゃんがいるとはね」

「あんな遠くから見えていたんだな。こりゃ凄い視力だ!」


と、珠鈴と父さんが歩いてきた。


「父さん、ただいま」

「おう、圭。お帰り。いい娘を連れてきたな!」

「うん」

「歩いてたらよ、いきなり圭が走って来てるなんて言い出して、走って行っちまったんだ」

「すみません……」


 3人で歩いていたところで、僕に気付いて1人走って来てくれたみたいだ。

 それはなんか、凄く照れるな……


「私達には全然お兄ちゃんは見えてなかったのに……ハル姉、視力いくつ?」

「えっと、分からないです……」

「ふーん、視力も分からないんだ」

「珠鈴、言い方が悪いぞ! ハルに失礼だ」

「はぁーい。ごめんね、ハル姉」

「いえ……」


 やっぱり珠鈴はまだハルさんの事を気にしてるな……

 そのうちに馴れていくとは思うけど……


「父さん、今日の仕事はもういいの?」

「あぁ! ハルが手伝ってくれたからな!」

「え……」

「ハルは凄い力持ちなんだな! お蔭で本当に助かった」

「いえいえ、お役に立てたようでなによりです」


 そうか、父さんの仕事を手伝っていたからこんなに遅かったのか。

 でも父さんの仕事って、結構重労働だと思うんだけど……

 父さんもハルさんに力持ちとか言ってるし……


「ハルさん、大丈夫ですか? 無理してませんか?」

「大丈夫ですよ! 楽しくお手伝いさせてもらいました!」

「そうですか……」

「なんだ、圭? お前も手伝ってくれるのか?」

「あ、うん。いつでも手伝うよ」

「ありがとな!」


 もうずっと会ってなかったし、電話で話してた母さんと違って、父さんとは何の連絡もとってなかった。

 それは父さんが忙しいからというのもあったけど、きっと僕はずっと逃げてたんだろうな。

 自分みたいな暗い人間とは対極の、明るい父さんから……


「相変わらず、父さんは元気だね」

「それが俺の取り柄だからな。だが、圭は変わったな」

「そうかな?」

「あぁ、そんな彼女にデレデレの圭は初めてみたさ」

「……そ、それは、そうかもね」

「素敵な人に出会えたんだな」

「……うん」

「俺も嬉しいよ、こんな可愛い娘が、これから俺の新しい娘になるなんてな! はははっ!」


 さっき母さんに散々茶化されたのに、今度は父さんか……

 しかもハルさんも一緒だから、余計に照れる……


「は、話はこれくらいにして、そろそろ帰ろう」

「そうだな。家でゆっくりと2人の話を聞かせてもらおうか」

「それはちょっと、恥ずかしいから……」

「なーにが恥ずかしいだ! だったらそんなにデレデレするんじゃねぇよ」

「デレデレ? はしてないと思うんだけど……」

「いや、してる。なぁ、珠鈴」

「うん!」


 父さんと珠鈴は、楽しそうに笑っている。

 その姿を見ていると、胸が満たされるような、そんな変な感覚があった……


 僕は、ちゃんと帰ってこれたんだ。

 大切な人と一緒に、大切なこの温かい場所へ……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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