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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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いい人

珠鈴視点です。

 お兄ちゃんの彼女として家に来たハル姉は、とても美人で、優しそうな人だった。

 でも事情だなんだと隠し事も多いみたいで、かなり怪しさがある。

 もしかしたら、お兄ちゃんを騙して家からお金を取ろうとしている詐欺師かもしれないし、私がちゃんと見極めないといけない。


 ハル姉は今、お兄ちゃんと一緒にお家見学中だ。

 お家見学というか、主に2階のお兄ちゃんの部屋見学だけど……

 とりあえず今のうちに、お母さんにも警戒を促しておかないと!


「ねぇ、お母さん。あの人、凄く怪しくない?」

「あの人って、ハルちゃんの事?」

「うん、きっと詐欺師だよ。お兄ちゃんを騙して、家からお金をとるつもりかもしれない」

「何を言ってるの、そんな訳ないでしょ? さっきの言動の事を怪しいとでも思ったの?」

「だって、当たり前の事も言えないし、お兄ちゃんの事をいうのもたどたどしかったよ?」

「緊張していただけでしょ? 言えない事があるっていうのも、最初に言ったじゃない。少し変わった子だからねって」


 確かにそれは聞いてたけど、変わりすぎでしょ?

 大体髪の色がピンクって……

 派手目に染めてる感じかと思ったら、私みたいな年下にも丁寧な敬語で話してくるし、凄く上品なおしとやかさがあるようにも思う。

 何より美人すぎる。


「少しどころじゃないじゃん! それに、ああいう美人さんは、もっと凄い人を相手に選ぶものでしょ? なんでお兄ちゃんなの? どう考えてもお金狙いだよ!」

「珠鈴にはそんな子に見えたの?」

「ううん、全く。だから言ってるんじゃん!」


 あんなに優しそうな人は見たことがない。

 会ったばっかりでも、この人絶対にいい人だって思えるような人だし……

 それに、お兄ちゃんの雰囲気だって良くなってた。

 それがあの人のお蔭なんだと思うと、本当にいい人にしか思えない。


 でもだからこそ、あの人が悪い人だった時に、お兄ちゃんは今度こそ壊れてしまうと思う。

 あんな暗いお兄ちゃんを私はもう見たくはない。

 妹の私の前では無理に気丈に振る舞って、お母さんにもお父さんにも何も相談しなくて……

 私達も何も出来なくて……


「そんなに気になるなら、色々と質問してみたら? でも、ハルちゃんを困らせないようにね?」

「名前とか歳を聞いただけで困るような人に、何を質問出来るっていうの?」

「圭との馴れ初めとか? あー、あとは、圭のせいで困ってる事とかも聞いておくといいわね。それは圭のためにもなるだろうし」

「ようはお兄ちゃん絡みの事を聞けって事だね」

「えぇ」


 お母さんは楽しそうに笑ってる。

 お兄ちゃんが彼女を連れてきたのが、本当に嬉しいんだろう。

 それは私もそうだから分かる。

 お兄ちゃんがあんなにも笑っていたんだし……


「圭君の学生時代のアルバムとかはないんですか?」

「ありますけど、あまり見てほしくはないですね」

「んー? でも気になります」

「まぁ、ハルさんがそういうなら……」


 お兄ちゃんとハル姉が2階から降りてきた。

 アルバムを見たいとか言ってるみたいだけど、そんなのを見たらお兄ちゃんがまた暗くなってしまうかもしれない!

 あのアルバムには、お兄ちゃんをずっと騙して友達の振りをしていた男とか、お兄ちゃんをバカにした女とかが載ってるんだから……


「ねぇー、ハル姉? お兄ちゃんとの馴れ初めは?」

「「えっ!?」」

「だから、馴れ初め。っていうか、お兄ちゃんの事はいつから好きだったの?」

「そうですね……初めて会った時から優しい好青年という印象でしたけど、好きになったのはいつからなんでしょうか? 気がついたら好きでしたね!」

「ハルさん……」


 お兄ちゃんがめっちゃ照れてる。

 好きって言ってもらえるのが嬉しいんだろうね。

 でも今の話、具体的な事が何もないじゃん。

 こんなの、別にお兄ちゃんを好きじゃなくたって言える事だ。


 もし詐欺師だったら、どういう行動をするんだろう?

 まずはお兄ちゃんの家族である私達に気に入られようとするはずだよね?

 お兄ちゃんもお母さんもハル姉を信じちゃってる以上は、2人に邪魔されないように、1人でハル姉の事を探っていかないと!


「あ、そうだハル姉! 畑仕事手伝って」

「え? あ、はい! すぐにでも!」

「おい珠鈴、いきなり何を言ってるんだ。ハルさんはお客さんなんだぞ?」

「でも、家にいる以上は畑仕事は必須じゃん。家に馴染んでもらうためにも、一緒やった方がいいかなって思うんだもん!」

「圭君、私もやりたいです!」

「そうですか? じゃあ僕も一緒に……」

「ダメ! お兄ちゃん無しでハル姉に聞きたい事がたくさんあるから、お兄ちゃんは着いて来ないで!」

「ハルさんを困らせようとしてるのか?」

「そんなんじゃないよ!」


 ちょっとお兄ちゃんと喧嘩みたいになっちゃった。

 まぁ、さっきも態度が少し悪かったから仕方ないか。


「圭君、私は大丈夫ですから。珠鈴ちゃん、畑仕事のお手伝い、是非やらせて下さい」

「あ、うん。じゃあこっちに来て」


 ハル姉の手を引いて畑の方へと連れていく。

 お兄ちゃんが心配そうに見送ってたけど、お母さんもいるし大丈夫だよね?


 それにしてもハル姉……

 さっきは私を庇ってくれたのかな?

 やっぱり本当にちゃんといい人なのかもしれないな。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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