旅行
ハルさん視点です。
向こうから帰って来てからは、私が圭君の身に何かあったのではないかと1人で騒いでしまいましたが、それ以外は特に何の問題もない、穏やかな日が続きました。
私は相変わらずの生活をしていましたし、圭君は受験が終わったからといって浮かれる事もなく、いつもと同じように勉強をする日々でした。
もう少し休んでもいいとは思うんですけどね……
とはいえ、やっぱり受験という一大緊張イベントが終了した事で、それなりに圭君もリラックスは出来ているみたいです。
そして今日はついに、私が圭君のご実家の方へとお邪魔する予定になっている日です。
本当にとても緊張しています……
圭君のお母様の純蓮さんとはお話させてもらいましたし、とても好意的なご様子でした。
でも、お父様や妹の珠鈴ちゃんとは話した事がありませんし、そもそも私のようなおかしな存在を認めてもらえるとも思えませんし……
と、解決しない事を問題にしていてもキリがありませんからね!
そろそろ勇気を出して行くとしましょうか!
圭君との約束の駅へ行くと、まだ約束の時間より30分も前なのに、圭君は待っていてくれました。
私を待たすまいと思ってくれたんだと思いますが、そんな気遣いは不要なんですよ? 本当に……
「圭君! お待たせしました」
「ハルさん。まだ約束の時間より前ですし、全然待ってなんていませんよ?」
「そうですか?」
「はい。あ、でもこれなら1本前の電車に乗れそうですね」
「そうなんですか? じゃあ、行きましょう!」
もういつぶりかも覚えていない程に久しぶりな電車に乗り、圭君とちょっとした旅行です!
もちろん旅行気分なのは私だけで、圭君にとったら帰省なんですけどね……
「ハルさん、彼処凄く綺麗ですよ!」
「わぁ! 本当ですね!」
「ハルさんはあの街からあまり出たりはされないんでしたよね? こっちの方とかは来るのは初めてですか?」
「歪みが発生した時なら来ますよ! でも、解決させたらすぐに帰ってしまいますし、あまり景色観光というものはしませんね……」
「歪みの発生だったら、遠すぎるところとかも行かれるんですか?」
「遠すぎるところ?」
「外国とか……」
「あぁ、もちろん歪みが発生すれば行きますよ。でも遠すぎるところへは"ゲート"を使って行きますので、道中をこうして観光したりすることはありませんね」
「そうなんですね。これからは、僕と一緒に、たくさん観光をして下さいね」
「はい! ありがとうございます」
圭君との旅行は楽しいですね!
お互い生活時間が変わってきてしまうので、そうそう行けるものではありませんが、色んな所へ行ってみたいと思います。
「あ、見えますか? あそこが僕の家ですよ」
「あの山よりにある、大きなお家ですか?」
「そうです」
「とても立派なお家ですね」
電車から見えた圭君のお家は、とても大きな和風のお家でした。
あまりしっかりと見えたわけではありませんが、回りにはかなりの数のビニールハウスがあったように思います。
お家はそれなりに大きい農家さんだという話は聞いていましたが、あそこまでとは思っていませんでしたね。
「ハルさん、こっちですよ」
「はい」
電車旅も終わりら私の手を引いて案内してくれる圭君。
本当にとても楽しそうです。
でも私は、さっきまで圭君との楽しい空気で若干忘れかけていた緊張感が戻って来ました……
いよいよ、いよいよですね。
「ただいまー」
「あ、帰ってきた!」
「お帰りない、圭」
「ただいま、母さん。こちらが僕の彼女、ハルさん」
「ハルです。よろしくお願いします!」
圭君の声に反応してお家の玄関へと急いで出てきてくれた2人。
純蓮さんと珠鈴ちゃんですね。
圭君が紹介してくれた声に合わせて頭を下げましたが、何か間違っていたりはしないでしょうか?
こんな女にうちの子は……みたいな事は……
「まぁ! 驚いた……本当に可愛らしいお嬢さんじゃないの!」
「え、えっと……」
「ハルちゃん、ハルちゃんね。自分の家だと思って、寛いでちょうだいね。もちろん、いきなりは難しいでしょうけど」
「あ、ありがとうございます」
「とりあえずは、ここで好きに過ごしてて。今お茶を淹れるわね」
「そんな、お構いなく……」
純蓮さんに肩を捕まれ、手を引かれ、そのまま奥の部屋まで案内されてしまいました。
とりあえずは、受け入れてもらえたみたいたです……?
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




