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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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認識の違い

圭君視点です。

 僕達を心配して来てくれた熊谷さんに対して、冷たすぎるハルさん。

 いくらあの"盗聴"の事を許していないにしても、心配されるような連絡をしたのも、その後に電話に出なかったのもハルさんが問題なのに、熊谷さんに謝りもしない……

 それどころか、熊谷さんが今、仕事を放棄してまでここに来たという事に対して、怒っているみたいだ……

 しかも、何かあっても自力で解決するから、気にしなくていいと……


 "()()で解決"という事は、ハルさん1人で解決出来るという事だ。

 誰にも頼る気なんてない。

 つまり僕にも頼ってくれるつもりはない……

 ハルさんにその気がなくても、ハルさんがとても冷たく熊谷さんに言った言葉は、僕に言っているのと同じだ……


 確かにハルさんなら、何か問題が起きたとしても、本当に自力で解決出来てしまうだろう。

 それこそ仮に怪我をしたとしても、もう"治癒の力"も使えるようになっているんだから、以前のように僕に拾われてしまうなんて事も起こらないはずだ。

 そして、もし1人ではどうしようもない事が起きてしまったら、その時に頼るのはミオさん達のようなハルさんと同じ仕事をしている人達だけだ。

 だからハルさんには、僕や熊谷さんに頼るという発想がない。


 それはある意味、仕方のない事だ……

 ハルさん達は特別な力が使える人達で、僕や熊谷さんは何の力も持たないんだから……


 僕達の事を下に見ているという訳ではないんだろうけど、僕達に心配される事は理解できないのか……

 いや、僕の前では既に怪我をしていたのを見られているし、何度も心配しているので、僕が心配することは理解しているだろう。

 でもそれも、僕の事を"心配性"くらいに思っているんだろうな。


 熊谷さんがハルさんを心配していた事が理解できないハルさんにとって、熊谷さんは携帯に出ない程度で仕事を放棄してまで会いに来る人という認識なんだ。

 そんな事はもう気にしなくていいから、早く仕事に戻るべきだと、いつまでここで油を売っているつもりだと、そう考えているからこそ、この冷たさなんだろう……

 あと盗聴の事と、今の僕との時間を邪魔された事に対する怒りもあるかな……?


「ったく……じゃあ俺は、お前に連絡する時は、圭にかければいいんだな?」

「そうですね。圭君には申し訳ないですけど、私の携帯に連絡されるよりは、伝わりやすいと思いますよ」

「申し訳なくなんてないですよ?」

「ありがとうございます」


 熊谷さんも、今のハルさんの態度で分かったみたいだな。

 ハルさんは特別な力があるがゆえに、人に心配される事を理解できないんだって……

 でも何かあった時に頼ってくれる事はないけど、こういう日常的な事は僕にも頼ってくれるから。

 今すぐにハルさんの考え方を変えていくのなんて無理だし、今は少しとはいえ頼ってくれている事を喜ぶしかないな……


「そういう事ならハル! お前は圭から離れるんじゃねぇぞ!」

「離れませんよ」

「圭もしっかり捕まえておけ!」

「もちろんです」

「じゃあな」


 熊谷さんはそう言って、車に乗って行ってしまった。

 "捕まえておけ"か……

 確かに捕まえておかないと、ハルさんは何処かへ行ってしまうからな……

 でも、"離れません"という言葉を、ハルさんの口から聞けた事は、本当に嬉しく思う。


「圭君? 圭君?」

「あ、はい」


 ちょっと考え過ぎていたみたいで、ハルさんが呼んでいるのに気がつかなかった。

 ハルさんは僕を心配するように、顔を覗き込んでくれている。


「大丈夫ですか?」

「はい、ちょっと考え事をしていただけです」

「考え事?」

「ハルさんが、熊谷さんに冷たいなぁと……」

「えっ! そ、それは……あの人は刑事さんという、とても大切な仕事があるというのに、刑事さんらしからぬ事ばかりするからで……」


 ハルさんの中での熊谷さんの存在は、"刑事さんらしからぬ人"なのかもしれないけど、僕にとっては恩人だ。

 あの捕まった時だって、熊谷さんはずっと僕を庇ってくれていた。

 ハルさんに記憶を消されてしまった時も、僕がちゃんとハルさんの事を思い出すって信じてくれていた。

 プレゼント選びもお世話になったし、今日みたいな時だって駆けつけてくれる、本当に優しい人だ。

 そんな優しい人だからこそ、ハルさんが誤解したままなのは嫌だと思う……


「でもダメですよ? 僕達を心配して来てくれてるんですから、あんなに冷たい態度は失礼ですよ」

「心配……?」

「熊谷さんって、本当に優しいですよね!」

「優しい……ですか?」

「はいっ!」


 僕の発言にハルさんはかなり悩んでいる。

 まだうまくは理解出来ないだろうけど、さっきの熊谷さんの行動を僕が優しさだと捉えているという事は伝わったはずだ。


 これからも、少しづつにはなってしまうだろうけど、ハルさんの考え方が少しでも変わるように、頑張っていこう。

 そして、ハルさんがちゃんと頼れるような存在に、僕がなっていかないといけないな。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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