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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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了見

ハルさん視点です。

 試験会場の入り口のところで、圭君と無事に再会できました。

 思わず抱きついてしまいましたが、かなりの人目もあって、恥ずかしかったです。

 なので今は、圭君の家に向かって帰宅中です。

 圭君は手をつないでくれているので、温もりも伝わってきて、とても安心できますね。


「本当に、圭君がご無事で何よりです……」

「ぶ、無事って……?」

「心配したんですよ? お家に行ってもいないですし、電話をかけてもでないですし……」


 電話で安否の確認だなんて……

 普段ミオに連絡手段を持ち歩くようにと怒られている私の行動にしては、かなりの成長ではないでしょうか?


「それは、心配をかけてしまって、すみませんでした」

「いえ、圭君が謝らないといけない事なんて、何一つありません。私が1人で慌てていただけの事ですから」

「ですが……」

「それに、結局応援も間に合いませんでしたね。本当にごめんなさい」

「それこそ、ハルさんが謝る必要はありませんよ。お仕事、お疲れ様でした」


 圭君は、繋いでいない方の手で私の頭を撫でながら、優しく笑ってくれました。

 本当に、ずっと圭君に会いたかった……

 9ヶ月ぶりの圭君です……


 なんか、色々と考えていたら、涙が溢れてきてしまって……

 圭君がまた、抱きしめて下さいました。


「ずっとハルさんに会いたかったです」

「はい……」

「勉強が手につかないくらいに、ハルさんの事ばかり考えていました」

「……え? ダメじゃないですか!」

「でも、ハルさんがくれた、あのボールペンを使い始めたら、凄い集中出来て……だから僕は、ずっとハルさんに応援してもらっていましたよ?」

「そ、そうだったんですね……」


 私も圭君のくれたストールに安心感をもらっていましたからね。

 なんなら今も羽織っているので、私がずっと圭君を思っていたというのは、圭君にも伝わっているはずです。

 プレゼント効果は、お互い様でしたね。


「そういえばハルさん? 今日が試験って知らなかったのなら、どうして来れたんですか?」

「あ、善勝さんに連絡して、今日が試験って教えてもらったんですよ」

「それは……」

「どうしました?」

「ハルさんが帰ってきて、一番に話したのが僕じゃないっていうのが、悔しいなって思いまして……」

「ふふっ、やきもちですか?」

「そうですね」


 私を抱きしめる圭君の力が、さっきよりも少し強くなりました。

 なので私もお返します。

 とはいえ、ずっとこうしてる訳にもいきませんので、


「圭君、帰りましょう?」


と、声をかけさせてもらいました。

 少し残念そうに離れた圭君は、抱きしめてくれていた事で少し乱れたストールを直してくれて、また手を繋いでくれました。


「試験の手応えはどうでした?」

「結果を待つしかないですけど、今の僕にやれる限りの事はやりきったという感じですね」

「結果が楽しみですね!」

「はい!」


 圭君と話ながら歩いていると、圭君の家の近くで、見覚えのある車を発見しました。

 中に人は乗っていないみたいですが……?


「こらっ! そこのバカップル! 電話かけるだけかけておいて、こっちからのには出ないとは、どういう了見だ?」


 急に後ろから声が聞こえました。

 車から降りていたみたいですね。


「善勝さん、何かご用がありました?」

「何かご用がじゃねぇよ。電話も急に切りやがって」

「急に?」

「"ありがとうござっ"までしか、俺には聞こえてねぇんだよ! どんだけ急いでたのか知らねぇけど、言葉くらい言い切ってから電話を切れ! なんかあったのかと思うだろーが!」

「それで来てくれたんですか?」

「かけ直しても電話にはでねぇし、圭の方もまだ繋がんねぇし」

「すみません、まだ電源を切ったままでした」


 善勝さんから圭君が試験だと聞いて、すぐに試験会場を調べたりしていましたからね。

 携帯も、ほったらかしていました……

 やっぱりミオの言う通り、普段から持ち歩いた方がいいですかね?

 でもあれ、向こうの世界で作った携帯なので、この世界には存在しない機種なんですよね……

 だから、もし落としたりして、誰かに拾われたりしたら、この世界に存在しないものが認識された事になって、歪みの発生に繋がってしまいますからね……

 やっぱり持ち歩かない方が……


「おい、ハル! 聞いてねぇだろ?」

「はい?」

「だから、お前はなんで出ないんだよ! 携帯は?」

「あぁ、部屋に置いてあります。私が出ないのは、いつもの事なので、今後は気にしないで下さい。それと、仮に私に何かあったのだとしても、それは自力で解決します。なので、善勝さんが仕事を放棄してまで来てくださる必要はありません」

「ったく……じゃあ俺は、お前に連絡する時は、圭にかければいいんだな?」

「そうですね。圭君には申し訳ないですけど、私の携帯に連絡されるよりは、伝わりやすいと思いますよ」

「申し訳なくなんてないですよ?」

「ありがとうございます」


 圭君は本当に優しいですね。

 善勝さんからの伝言板に使われてしまうというのに……

 ん? さっきまでよりも、圭君の元気がなくなったような気がします。

 やっぱり、伝言板に使われるのは嫌なんでしょうか?


「そういう事ならハル! お前は圭から離れるんじゃねぇぞ!」

「離れませんよ」

「圭もしっかり捕まえておけ!」

「もちろんです」

「じゃあな」


 善勝さんはそれだけ言って、帰って行きました。


「行きましょうか」

「……」

「圭君? 圭君?」

「あ、はい」


 圭君は元気もない上に、何か考えているようで、俯いています。

 そんな悩むような話は特にしていなかったと思うのですが、どうしたのでしょうか?


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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