失念
ハルさん視点です。
やっと会社の世界の方での問題が解決しました。
ミオのお蔭で思っていたよりも早く解決する事が出来ましたし、早く帰るとしましょう!
圭君は今頃何をしているんでしょうか?
そろそろ受験の日だと思いますし、勉強のラストスパートといったところでしょうか?
私が贈ったボールペン……
使ってくれていますかね?
私の時間では、約9ヶ月も圭君に会っていなかった事になります。
もともとこういう環境で生きていますので、まぁ慣れていると言えば慣れているのですが、やはり大切な人に会えない日々というのは、辛いものがありますよね……
でも圭君がくれたストールもありましたし、昔のような寂しさを感じる事はありませんでしたね。
全部圭君のお蔭です!
色々思うところもあるのですが、とりあえずは早急に圭君に会いたいので、自分の部屋へと帰ってきてから急いで鳥に化けました。
そして、圭君の家に向かって飛んでいきます。
1ヶ月は帰って来ないという話をしましたし、圭君もまだ私が帰ってきているとは思っていないはずです。
だからベランダも開いてないかもしれませんね……
と、そんな事も考えながら飛んで、最速で圭君の家に到着しました。
思っていた通り、ベランダは閉まっていますね。
嘴でノックしてみたのですが、特に応答もありません。
外出中でしょうか?
どこに行っているのかも分かりませんし、このままここで待ちましょうか……
でも、そういう時間の無駄なことをするのは、あまり好きではありませんし、となればパトロールに行こうと思ってしまうのですが、それで圭君とすれ違ってしまうのは嫌です……
何か圭君に連絡する方法は……
あ! 携帯で圭君に連絡をすればよかったんですね。
普段からあまり私用に携帯を使わないので、携帯という存在の事を失念していました。
でも私、普段から携帯を携帯していないんですよね……
連絡手段は持ち歩くようにとミオがよく言ってくるのですが、何分化けて行動する事が多いので、あまり余計なものを持ち歩くのは嫌ですからね。
それに、携帯は異空間に入れてしまうと、連絡が来なくなってしまいますし……
でも今は、そんな言い訳をしている場合ではありません!
急いで携帯を取りに行かなくては!
また最速記録を叩き出せそうな勢いで飛び、自分の家へと帰ります。
そして携帯で圭君の番号にかけてみたのですが、
「お掛けになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていない為、かかりません」
というアナウンスが流れてしまいました……
これは、どういう事でしょうか?
圭君に何かあったんでしょうか?
あの結界内だって電波は届くんですよ?
それなのに電波の届かない場所だなんて……
あのしっかり者の圭君が、充電をし損ねて電池がなくなったというのも考えられませんし、電源を入れ忘れているという事もないでしょう。
つまり、圭君に電話が出来ないというのは、圭君が何か問題に巻き込まれてしまった可能性があるという事ですよね……
私がいない間に……
兎に角、圭君を探すしかありません!
パトロールをしながら圭君を探す……いえ、そんなの非効率過ぎます!
となれば、匂いで探すという方法もありますが、圭君の部屋に入れない以上、圭君の匂いもありませんし……
まぁ、部屋には"諸々の力"を使えば入れるのですが、それをまた訴えられても困りますし……
なにか、圭君が巻き込まれそうなトラブルについてでも分かっていれば……
私がいなかったこの3週間程で起こった事件から調べるのがいいか、土地神様に聞いてみるというのがいいか……ん? 聞く……?
善勝さんに聞けばよかったんですね!
こんなに早く善勝さんに頼る事になるとは……
警察の人と知り合いになったのは、正解だったかもしれないです。
急いで善勝さんに連絡をします。
♪♪♪♪♪
なかなか出ませんね……
刑事さんですし、そう簡単には出られないのでしょうか?
「はい、熊谷だ」
「あ、よかった。善勝さん、お久しぶりです」
「ん? お前、ハルか?」
「はい!」
「お前帰って来てたんだな」
善勝さんには出掛けるという話をしていませんでしたが、こう仰るという事は、圭君が話していたんでしょうか?
「で、なんだ? なんか事件でも目撃したか?」
「いえ、そうではなくて、圭君と連絡が取れないんです! 何か事件に巻き込まれているのかも知れませんし、心当たりはないかと」
「あ? 圭?」
「はい!」
「圭なら今日は、試験の日だろ?」
「……え?」
「だから、圭は試験に行ってるはずだって。連絡つかねぇのも、試験会場では携帯の電源を切ってるからだろ」
「……あぁ、そういう……」
「解決したか?」
「……ありがとうございました」
本当に私は、失念だらけですね……
今日、だったんですね、圭君の受験の日は……
大晦日もお正月も受験の日も、本当に全部間に合いませんでした……
でも、やっぱり、一番に圭君に会いたいです。
試験会場を調べて急いで向かいます。
ピンクでは目立ってしまうので、髪色は黒で……
少し待っていると、続々と人が出て来ました。
そしてついに私は、圭君を見つけました。
「あっ! 圭君! 圭君っ!」
圭君に会えた嬉しさと、圭君が無事で本当に良かったと安堵した気持ちが溢れて、思わず圭君に抱きついてしまいました。
そんな私に、
「ハルさん……おかえりなさい!」
と、圭君は抱きしめ返してくれて……
「はいっ! ただいまですっ!」
本当に、やっと会う事が出来ましたね……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




