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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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135/335

些細

圭君視点です。

 1人で御神木の場所にまで来ることが出来た。

 葉っぱが光って案内をしてくれたって事は、土地神様が呼んでくれたって事なんだろうけど……


「土地神様? いらっしゃいますか?」


 あまり大きい声で呼んだりするのも失礼かと思って、御神木に向かって少し控えめな声で呼び掛けてみた。


「ほほっ。よく来たの圭君」

「あ、よかった。おはようございます、土地神様。今年は大変お世話になりました」

「儂の方こそ世話になったからの。何度もお供えに来てくれて、ありがとうな」

「いえいえ。今日も作って来ました」

「お~」


 僕の呼び掛けに応じて、土地神様は姿を現して下さった。

 ちゃんとご挨拶が出来たし、直接焼きとうもろこしとコーンスープが渡せたので、本当によかったと思う。


「あの、ハルさんの事で少し伺いたい事があるんですが……」

「うむ。そんな様子だったのが分かったから、ここに呼んでみたんじゃ。本来は協力者の圭君といえど、ハルちゃんの許可なく呼ぶ事は出来ぬからな」

「そうだったんですね。ありがとうございます」


 この場所は、ハルさんが維持してくれているこの世界の核がある場所だ。

 そんな場所に簡単に入ってはいけないのも当たり前だと思う。

 でもその判断をしているのは、土地神様じゃなくてハルさんの方だったんだな……


「それで、ハルちゃんの何を気にしておったのだ?」

「ハルさんが皆さんの記憶を変えた事についてなのですが、その結果で事実ではないことが警察の記録に残ってしまうみたいなんです。それがハルさんにとって問題ない事なのかが分からなくて……」

「んー、それはの……特に気にせんでいいと思うぞ」

「そうなのですか?」

「ハルちゃんの事情を少し知っておる、あの人の子が悩んでおるのだろう?」

「あ、はい……」


 土地神様からすると、熊谷さんも人の子なんだな……

 協力者ではないから名前も呼ばない……

 本当に線引きというのを徹底されているんだ。


「ハルちゃん達は、自分達に都合がいいように人の記憶を変える事がある。だがそれは、違和感を持たないように思わせるもので、勝手に違う記憶を捏造するものではない。だから、事実ではない記録が残ってしまうとしても、そこにハルちゃんの責任はないわけじゃ」

「単に、警察が間違った記録を残しただけって事になるんですか?」

「そうじゃな。世界には何も影響せんし、ハルちゃんが嫌うような"嘘"ともならん。ただの勘違いじゃな」


 確かに僕の記憶も捏造された訳ではなかった。

 猫を拾った事実は覚えていたし、足りない記憶に違和感を感じては、気のせいだと思ってしまっていた。

 本当に凄い力だと思う。

 その凄い力を使った結果で、今石黒さんが証言しているんだから、それは全部記録に残っても問題ない事なんだろう。

 ハルさんや土地神様、こういう世界そのものを管理している人達からしたら、事実ではない事が記録に残るというのも、ただの勘違いという言葉1つで、気にしないでいられる事なんだ……


「そもそもあの人の子は、ハルちゃんの事情を少し知っておるから、そうして悩んでおるのだろう? 本来はあの人の子の記憶も消されておるはずじゃからな。何も知らんかった態で、残すべき記録を残せばよいぞ」

「ありがとうございます。ここで連絡してもいいですか?」

「もちろんじゃ」


 土地神様に確認をしてから、熊谷さんに電話をかける……


「お、圭か? 早かったな」

「はい。あの、さっきの件についてなんですが、石黒さんの話通りに書類を作って頂いて、問題ないそうです」

「そうか。それでハルは困らないんだな?」

「はい。熊谷さんが、ハルさんの事情を全く知らなかった場合に、石黒さんの話を聞いて作るような書類で大丈夫だと思います」

「ありがとな!」

「いえ……」


 僕はお礼を言われるような事は、特にしてないんだけどな……

 でも、教えて下さったのが土地神様だなんて言えないし……


「なぁ、圭。ちなみになんだが、それって誰に聞いたんだ?」

「え?」

「あの山の神社の神様とかか?」

「えっと……」


 まさか熊谷さんにそんな事を聞かれるとは……

 どう答えようかと悩んでいると、


「あぁ、悪いな。答えなくていいんだ。色々あるんだろ?」


と、熊谷さんの方から言ってくれた。


「……はい。すみません」

「いいって。じゃ、ありがとなー」


と、熊谷さんは電話を切ってくれた。

 きっと気になってただろうに……


「あの人の子も、いい子じゃな」

「はい。とても優しい方ですよ」

「ハルちゃんが倒れたあの日、儂の神社までハルちゃんを運んで来たのがあの人の子じゃった。おそらくハルちゃんが頼んだんじゃろうが……」


 ハルさんが倒れた日……

 僕の記憶も消していったあの日か……

 だからさっき熊谷さんも、一番にあの神社の神様かどうかを聞いてきたのか。

 熊谷さんを信用するかどうかとか言っていたし、その時の熊谷さんの行動で、ハルさんは熊谷さんを信用すると決めたんだろう。


 でも、優しい熊谷さんだったから良かったものの、危ない人だったらどうするつもりだったんだ。

 倒れていたハルさんに抵抗なんて出来なかっただろうに……

 ハルさんの危機管理能力は、かなり見直しが必要だな……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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