紹介
ハルさん視点です。
冬のこの時期は、日が沈むのも早いです。
買い物もそれなりにゆっくりした事で、外はもう大分暗くなっていました。
「あ、ハルさん……もしよかったら、コンビニに寄っていってもいいですか?」
「コンビニですか?」
「この時間なら、店長と稲村さんにも会えると思うので……その、挨拶をしておきたいなと」
「あぁ、そうなんですね! それは是非行きましょうか!」
「ありがとうございます!」
凄く嬉しそうですね!
圭君がずっとお世話になっていた方々ですもんね、私もちゃんとご挨拶したいと思います。
ですが……
「あの……髪色、変えましょうか?」
「それは、ハルさんが変えたかったらでいいです。無理に黒にしたりはしなくていいですよ。その美しいピンク色が、ハルさんの髪色なんですから」
そんな風に言われたら、変えれないじゃないですか……
店長さん達を驚かせてしまう事は間違いないと思いますが、このままご挨拶をさせていただくことにします。
「いらっしゃいませー」
「いっしゃ……あれ? 瑞樹さんじゃないですか? お久しぶりですね!」
「あ、はい。店長、稲村さん、お久しぶりです!」
コンビニに入ると、店員さんがすぐに圭君に気づいてくれました。
この方が稲村さんですね。
明るく元気な男性で、とても話しやすそうという印象を受けます。
「え? 瑞樹君?」
「店長、あまり来れずすみません。なかなか夜に出掛けられなくて……」
「いいんだよ、無理に来なくても。勉強が一番だからね!」
奥で品出しをしていた様子だった店長さんも来てくれて、圭君のまわりが少し賑やかになっています。
なんといいますか……とても、暖かい職場ですね!
圭君がこういう所で働いていたというのは、嬉しい限りです!
「あの、紹介させて下さい。こちら、僕の彼女のハルさんです」
「あの、初めまして。お2人にお会いできて、大変光栄です」
「……え、瑞樹君の彼女? おぉ、これはこれは……」
「あー、もしかして、前に悩んでた?」
「そうです」
「そうなんすね! おめでとうございます。俺の応援は意味ありました?」
「もちろんです」
店長さんはかなり驚いた顔のまま硬直されてしまいましたが、稲村さんは優しい笑顔を私に向けて下さいました。
やっぱり髪がピンクなのは、驚きますよね……
若い方は髪を染める方も多いので、以外と当たり前のようですけど……
「こんなに美人さんだとは……羨ましいっすね! 瑞樹さんもやりますね!」
「そ、そうですね」
「えっと、ハルさん? 瑞樹君とはどういう出会いで、どうして好きになったんだい?」
「え、店長……?」
「いや、やっぱりね……」
私を見る店長さんの目は、疑心にみちているように見えます。
やっぱりこんな怪しい女は、圭君を心配して下さる方々にはそう簡単に受け入れてもらえないんですよね……
「あの、私が圭君に助けてもらったんです」
「助けてもらった?」
「私が怪我をして、動けなくて困っていた所を、圭君は助けてくれました」
「それで好きになったって言うの?」
店長さんはまだ私を疑っているみたいです。
全てを詳しくお話しする事が出来ないので、こういう曖昧な感じで話す事しかできないんですが、確かにこんなとってつけたような話では納得出来ませんよね。
なので、どういう出会いかというのはこれ以上話さず、私がどんな思いでいたのかという事を話させていただこうかと思います。
「助けてもらって、それですぐに好きになったのかは自分でもちょっとよく分からないんですけど、その当時は圭君と離れる事を思うと胸が痛くなる感じでした」
「え、ハルさん……そうだったんですか?」
「そうですよ。でも、圭君に迷惑をかけ続けるのも嫌だったので、離れる事にしたんです。それなのに圭君は優し過ぎて、どこまでも私の事を心配してしまって……」
「あぁ、瑞樹君ってそういう所あるよね」
「そうなんですよ。圭君は優し過ぎますし、理解力も本当に高いですし、こんな私でも受け入れて下さる程に、包容力が凄いんですよ!」
「それで瑞樹君の事が好きなんだね?」
「はいっ!」
よかったです。
店長さんの私を見る目から、疑心が消えていった感じがします。
これは、ちゃんと認めてもらえたという事でしょう。
「これは……ヤバイっすね」
「え?」
稲村さんが少し困ったようにそう呟かれたので、気になって見ると、私の方に背を向けて、顔を両手で押さえ、少し俯いている圭君がいました。
稲村さんはその圭君の肩を、ポンポンと優しく叩いているみたいです。
少し前まで私の話を店長さんと一緒に聞いていたのに、急にどうしたんでしょうか?
「圭君? どうしました? 大丈夫ですか?」
「あ、はい……大丈夫、なんですけど……」
「ハルさん。瑞樹君はね、今物凄く恥ずかしいんだよ?」
「え?」
「ハルさんからあんな風に自分を好きだと言ってもらえたんだからね、照れてるんだ。今はそっとしておいてあげて」
「……はい」
そんな事を言われたら、私まで照れてしまうではありませんか……
私も恥ずかしさで少し俯く中、
「瑞樹君の感情表現がどんどん豊かになって来ていたのは、ハルさんのお陰だったんだね」
という、店長さんの優しい呟きが聞こえました。
本当にずっと圭君を心配してくれていた、優しい店長さんなんですね。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




