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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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異例の事態

圭君視点です。

 ハルさんの石黒さん達への行動が、何故問題にされてしまったのかを聞くと、僕と恋人になったからだとハルさんは答えた。

 凄く照れながら話してくれているのが本当に可愛いと思うけど、今はそれを気にしていてはダメだ。

 話が進まなくなってしまうから……


「あの、どうして僕とハルさんが恋人だと問題になるんですか?」

「石黒さんを倒した理由が、"圭君を助けるため"になってしまうからです」

「僕を助けるため?」


 そうか……

 僕とハルさんが無関係だったら、ただ石黒さんが敵だったから倒したという事になるけど、僕を助けるために石黒さんを倒したとなれば、私情で力を使った事になってしまうのか……


「しかも、記憶も操作しているので、自分に都合よく記憶まで変えていると問題にされたんです……」

「自分に都合よくって……だってハルさんは、僕の記憶だって、消したくないのに消したじゃないですか!」

「そうなんですけど……それで、圭君の記憶を消したままだったら問題にされる事はなかったんですが、圭君の記憶は戻ってますからね……」

「あ……」

「なので、圭君をつかまえた石黒さんを倒してしまった手前、あとから圭君の記憶を戻す予定で、今回の件をでっち上げたんじゃないかという、訳の分からない主張をされているんです……」

「なんですか、それ……」


 そんなのは無茶苦茶だ……

 だいたい記憶を戻す予定で、大切な人との記憶を消したりなんて事、絶対にするはずないのに!


「何で、そんな無茶苦茶な主張が通るんですか?」

「普通はそんな主張は通らないんですけど、今回はちょっと、異例の事態が発生してしまっているので……」

「異例の事態?」

「あの、圭君……何故か私の記憶消去を打ち破りましたよね?」

「え? はい」

「あれがおかしいと……私達の力は、そう簡単に打ち破れるものではありませんから……だから、最初から記憶を戻す予定だったとか言われてるんですよね……」


 あのまま僕がハルさんを思い出さなければ、ハルさんの行動は何も問題じゃなかった。

 敵だった石黒さんを倒しただけなんだから。

 でも、僕はハルさんの力を打ち破ってまで思い出している……

 そんな事はあり得ないからこそ、ハルさんは問題にされてしまったという事か……

 しかもミオさんがいうには、僕があの力を打ち破る事が出来たのは、ハルさんが使った力が弱かったかららしいし、そうなればあとから記憶を戻すつもりだったと言われるのも、仕方がないように思える……


「でも……それにしたって、ハルさんがあんなに辛かった事を棚にあげて、でっち上げているだなんて……」

「私は、これでも一応会社の世界において、それなりに立場のある存在なんです。だから、私を落としたいという人も多いんですよ」

「えっ……」

「少しでも私に不備がありそうなこういう機会は、私を落とすチャンスですからね」

「会社の世界って、そんな殺伐とした感じなんですか?」

「殺伐とはしてませんよ? ただ、守りたい価値観というのは、人それぞれですからね。当然、合わない人もいるんですよ……あっ! だからこそ、規則も細かく決まっていますし、今回は石黒さん達が敵だったという証拠もありますので、本当に大丈夫ですからね?」

「……はい、分かりました」


 必死に誤魔化そうとしていたみたいだけど、今のハルさん言い方は、会社の世界には価値観の合わない敵がたくさんいるという風に聞こえた……

 ただでさえ世界のために頑張ってくれているというのに、会社の世界でも気が休まらないだなんて……

 それも1ヶ月も…………ん?


「あの、ハルさん?」

「はい?」

「1ヶ月というのは、この世界での1ヶ月ですよね? 会社の世界では、どれくらい時間が経つんですか?」

「え、えぇーっと……」

「ハルさん?」

「い、1年くらい……ですね……」

「1年!?」


 この世界と会社の世界とでは、時間の流れが違う。

 前にもこの世界での30分が向こうでの10日だったりしていた。

 それを踏まえて考えれば、今回も僕にとって1ヶ月だとしても、ハルさんにとっては違うという事は容易に想像が出来たけど、まさか1年だなんて……


「ハルさん……」

「はい?」

「今度からは、ちゃんと言って下さいね? ハルさんとどれだけ感じた時間の違いがあるのかも、僕はちゃんと知っておきたいですから」

「……はい。ありがとうございます」


 ハルさんは少し驚いたような顔をしてから、とても優しく笑ってくれた。

 その可愛さに、思わず抱き締めてしまった。

 でもずっと我慢してたし、これはもう仕方がないと思う。


「えっと……圭君?」

「ハルさんが無事に帰ってきてくれるのを、待っていますからね」

「はい。年越しも圭君の受験も共に過ごす事はできませんが、応援していますね」


 ハルさんも僕の背に手をまわし、抱き締め返してくれた……

 僕にとっては1ヶ月……ハルさんには1年もの間、僕達は会えなくなってしまう……

 その辛さを乗り越えるためにも、今はずっとこうしていたいと思った。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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