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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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裁判

圭君視点です。

 今日は楽しみにしていたクリスマスイヴだ。

 ハルさんも夜までいてくれると言っていたし、2人でブッシュ・ド・ノエルを作って、クリスマスプレゼントに買ったストールを渡そう。

 少し刺繍も施した、コバルトブルーのストール……

 ハルさんが喜んでくれるといいな……


 いつもと同じように、朝食を食べてから片付け、勉強をしようとしていると、


コンコンッ!


と、ベランダの方から音がした。

 何かと思って見ると美しい鳥が1羽、ベランダの戸の前にいる。

 普通の鳥がこんな風に来る訳がない。

 間違いなく、ハルさんだろう。


「おはようございます、ハルさん。今日は早くに来てくれたんですね!」


 戸を開け、鳥を招き入れながら声をかけると、鳥は少し奥まで飛んで行き、白く光った。

 そして、


「おはようございます、圭君……急に来てしまって、ごめんなさい……」


 早く来てくれた事は本当に嬉しいんだけど、ハルさんはどこか浮かない顔をしているように見える。

 昨日はあんなに楽しそうにしてくれていたのに……

 もしかして、会社の世界の方で何かあったのか?

 それで、今日は一緒にいられないとか……?


「あ、あの、ハルさん? 何かありました?」

「その……」


 このハルさんの反応……

 嫌な予感しかしないな……


「ハルさん? もしかして、今日は一緒にいられなくなりました?」

「あ、いえっ! ()()()大丈夫なのですが……」


 "今日は"って事は、他の日って事か。

 やっぱり会社の都合で、家に来れない日が出来てしまったんだろう……


「いつが来れなくなったんですか? 明日とかですか?」

「あの、いえ……明日から、約1ヶ月間くらいです……」

「い、いっか、げつ……?」


 明日から1ヶ月間?

 そんなに?

 僕はそんなにハルさんに会えないのか?


「な、なんでそんなに……」

「先日の石黒さんの件について、会社の世界の方で問題になりまして……それで、今度裁判のようなものが開かれる事になってしまったんです……」

「さ、裁判ですか?」

「はい……その裁判中は、会社の世界から出ることが出来なくなりますので、この世界に帰ってくる事が出来ません……」


 だから1ヶ月も、ハルさんに会えないのか……


「でも裁判だなんて……あの時のハルさんの行動が、何かいけなかったんですか? それって大丈夫なんですか?」


 ハルさんが何か罰せられるのなんて嫌だ。

 でも会社の世界の事なんて、僕にはどうする事も出来ない……


「えっと、ごめんなさい。裁判なんていう大袈裟な言い方をしてしまいましたね。大丈夫です。ようは、あの時の行動は会社の違反となる行動ではなかったと説明するための、説明会です」

「説明会……」


 急に言い方が優しくなった。

 僕が心配しないように、配慮してくれているんだろう。


 でも、説明会程度の事で会社の世界から出るのが禁止にされる訳がない。

 最初に裁判だと例えてくれた事から考えても、やっぱり裁判みたいなものが行われるんだろう……


「その……説明をして、ちゃんと分かってもらえるんですか? ハルさんに何か、罰則が科せられたりとかはしませんか?」

「大丈夫です! 話せば分かってもらえますよ!」

「そうですか?」

「はい!」


 でも、話せば分かってもらえるはずの事なら、もう既に解決しているはずだ。

 それがしていなくて、しかもこういう裁判にまでなったという事は、やっぱりそう簡単には解決出来ない問題なんじゃないか?


「僕に何か出来る事は……あ、何か証言とか必要ですか?」

「本当に大丈夫ですからね」

「でも……」

「えっとですね……裁判風に言うと、今回の件について、私の弁護人的な役割をしてくれるのが、"ミオ"なんですよ!」

「えっ? ミオさん……」

「はい!」


 ミオさんって、あのミオさんだよな?


「ミオさんが弁護人だと、大丈夫なんですか?」

「はい! この世界風に言うと、ミオは裁判で負けなしの弁護士さんですよ!」

「それは凄いですね」


 そう言われると、確かに大丈夫に思えてくる。


「ミオは本当に凄いんですよ! すぐに違反をする友人がいるんですけど、彼女はいつもミオに弁護してもらっていまして、一度も罰せられた事がないんですよ!」


 ハルさんはミオさんを褒める話をしてくれている。

 でも僕が一番気になったのは、すぐに違反をするハルさんの友人だ……

 ハルさんには、そんな友人がいるのか……


「明らかに友人の方が不利な時でも、ミオは負けていませんからね。まぁ私もミオも、友人にはそろそろ違反を自重して欲しいとは思ってるんですけどね、何分自由が大好きな子なので……あ、話が逸れましたね」

「いえ、大丈夫ですよ」

「ようは、そういう時に比べれば、今回の私の件なんて、明らかに私の方が有利ですからね! 本当に絶対に罰則なんて科せられたりはしませんから、安心して下さいね」

「はい、分かりました」


 ハルさんは嘘をついたりはしない。

 だから、罰則が科せられる事は本当にないんだろう。

 でも、1ヶ月も会えないだなんて……


 そもそも、ハルさんの行動の何が違反だったっていうんだろう?


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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