呼び出し
ハルさん視点です。
今日も圭君家にお邪魔していると、
「ハルさん、明日の夜は空いてますか?」
と、圭君に聞かれました。
「クリスマスイヴですね! もちろん空いてますよ!」
クリスマスイヴといえば、恋人と共に過ごす日ですよね?
具体的に何をするのかというのは知りませんが、この時期には街中に幸せそうなカップルさんをたくさんみますからね!
私も圭君と恋人になったんですし、楽しく過ごしたいと思います!
「あの、一緒にケーキを作りませんか?」
「それは、是非お願いします!」
「ブッシュ・ド・ノエルを作ろうかなと思ってるんです」
「ブッシュ・ド・ノエルですか?」
「"クリスマスの木"って意味で、丸太を模して作る、ロールケーキの事です」
「わぁ、素敵ですね!」
そんなクリスマスにピッタリなケーキもあるんですね!
本当に圭君は物知りで、凄いですよね!
「私は何を準備すればいいですか?」
「ハルさんは、元気に家に来てくれればいいですよ?」
「ですが、いつも何もかもを圭君に準備してもらっているので、私も何かしたいです」
「そうですか? じゃあ、ケーキに飾りたいものとか、選んでもらっていいですか?」
「はい!」
圭君は、いつも何でも用意してくれてしまいます。
前にお家がそれなりに大きいとかもいっていましたし、自分で夜勤バイトもしていました。
なので圭君がお金に困ったりはしていないのは知っています。
ですが私も、会社の世界の方で働いたお金は、この世界の通貨として両替してもらっていますし、特に使う必要がなかったので、結構な貯蓄もあります。
私の方が歳上なのも間違いありませんし、もっと頼っていただけると嬉しいのですが……
まぁ、自分の正確な歳は覚えていないんですけどね……
「僕、こっちに来る前は、よく珠鈴と一緒にクリスマスケーキを作っていたんですよ」
「やっぱり圭君は、優しいお兄さんなんですね!」
「そうでしょうか?」
「そうですよ!」
圭君と一緒に今日のご飯を作っていると、圭君がとても嬉しそうに、珠鈴ちゃんの話をしてくれました。
その圭君の様子からも、珠鈴ちゃんとどれだけ仲がいいのかが伝わってきますし、微笑ましいです。
こんな優しいお兄さんである圭君と一緒に、ケーキを作っていたという珠鈴ちゃん。
今度お会いする時は、私も仲良くなれるといいのですが……
でも、優しいお兄さんがいるという気持ちは私にも分かりますし、きっと話も合うんじゃないかな~と、勝手に思っています。
純蓮さんもとてもお優しい方でしたし、圭君のご家族と会えるのも楽しみですね!
それからはまたいつもと同じように、圭君とご飯を作ったり、圭君の勉強中に私はお菓子を作らせてもらったりして、日が暮れて来ました。
「今日はもう、お暇しますね」
「もっとずっと、この家にいていいんですからね?」
「ありがとうございます。でも、ただでさえ何もしていないので、少しでも何か仕事をしていたいんです。じゃないと、本当に何もしないで、圭君に甘えて過ごすだけになってしまいますからね」
「僕はそれでも嬉しいですけど……分かりました」
私にも他の皆のように、ちゃんとこの世界の一員として過ごしていく方法があればよかったんですけど……
記憶の消去もできますし、戸籍を偽造する事も出来なくはないのですが、そういう事をすると多少なりと世界が歪みますからね。
その歪みも自力で直せるのですが、私の私的理由で世界を歪ませたくはありません。
それにやっぱり、嘘は嫌いですからね。
どんな事情があるにせよ、"偽造"とか、"捏造"とかといった事は、やりたくありません。
だから今もこうして、住んでいるけど住んでいないような、曖昧な感じにして誤魔化している訳ですし……
「ハルさん?」
「あ、ごめんなさい。少し考え事をしていました」
「大丈夫ですか?」
「はい! 明日は夜遅くまでお邪魔させてもらう予定ですが、特に遅く来たりはしませんので!」
「僕もその方が嬉しいです」
「ふふっ、ではまた明日」
「お待ちしてますね」
圭君の家をお暇して、帰ってきました。
明日が本当にたのしみです。
これから先は、いろんな行事も盛りだくさんですからね!
それに圭君の受験や、圭君の帰省もあります。
私も圭君のか、か……彼女として、精一杯協力させていただく所存ですからね!
まずは料理を覚えて、食事面で圭君を支えていけるようになります!
それから次は……ん? 連絡がきてますね……?
これは…………あぁ、そうなってしまいましたか……
折角クリスマスに、年越しに、新年と、圭君と楽しく過ごせると思っていたのですが、そういう訳にもいかなくなりましたね……
本当に残念ですが、無視する事もできません。
何とか明日だけでも圭君と過ごせるように、時間を調整してもらわないといけませんね……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




