表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜色のネコ  作者: 猫人鳥
12/324

心配事

圭君視点です。

 警察もなんとか解決出来たし、ハルさんが嘘を嫌いな理由も聞くことが出来た。

 嘘嫌いの理由については、多分全部を話してくれた訳ではないだろう……

 少し悲しそうな顔をしていたし、嘘に対しての嫌な思い出があるのかもしれない。

 ハルさんが嫌な事はしたくないので、僕はもう二度と嘘をつかないと誓った。


 とりあえず、ハルさんを抱えて部屋まで戻って来た。

 ハルさんは今、黒猫状態なので怪我がない。

 玄関の棚に飛び乗った事で傷口が開いたりして、怪我が悪化していないかが心配だ。


「ハルさん、一旦人の姿に戻って下さい」

「え? どうかしたんですか?」

「足の容態を見ておきたくて。さっき飛び乗ってましたし……奥の部屋は、外から見えるかも知れないのでこっちで」


 ハルさんに洗面所で人の姿に戻ってもらった。

 洗面所なら外から見えたりする心配はない。

 ハルさんが人に戻る時は少し部屋が明るくなるけど、それもここなら気にする必要はないだろう。


 足の包帯を外して怪我の様子を見たけど、出血とかは無く、悪化しているようにも見えなかった。

 確か、自然治癒力が高いみたいな事を言ってたっけ?


 怪我は順調に治っているみたいで安心した。

 でもだからといって、強く足をついたりしたら痛いだろうし、さっきの飛び乗りは痛かったと思う。


「悪化はしていないみたいですけど、もうあんな危ないことをしたらダメですよ。痛みは大丈夫なんですか?」

「全然大丈夫です。そんなにこの足を軸にしてないですし……」


 ハルさんは感情が顔に出やすいのですぐに分かる。

 本当は痛いと思ってるんだろう。

 それでも嘘をつかないんだから、"大丈夫"だというのも嘘ではないという事になってしまう。

 だったら聞き方を変えればいい。


「ハルさん、嘘はダメなんですよね? 本当に痛くないんですか?」

「……多少、痛いです」

「なら、もう無茶はしないで下さいね」

「はい……」


 そもそもこんな怪我、普通はしない。

 やっぱり危ない事とかをしているんだろうか?

 本当は刑事さんが言っていたように、危ない事は全部止めてほしいけど、それは僕が踏み込んではいけない事だと思うので言えない。

 そうやって悩んでるだけで、言いたいことも言えない僕は本当に情けない……


「圭君? どうかしましたか? 大丈夫ですか?」

「あ、いえ……すみません。少し考え事をしていて……えっと、包帯巻き直しておきますね」

「ありがとうございます」


 ハルさんに心配されてしまった……

 僕は無表情とか、感情が無いとか、何を考えているのか分からないとかをよく言われるから、考え事をしていてもいつもなら気にされない。

 でもハルさんが心配してくれたって事は、余程変な顔でもしていたんだろうか?

 僕が心配しているのはハルさんの事なのに……


 あまり考えていてもまたハルさんに心配されてしまうし、何か他の事を考えよう。

 顔を上げると、洗面所の洗う予定で溜めてあった衣服が目に入った。


「そういえば、洗濯……じゃなくて浄化、ありがとうございました」

「いえいえ、これくらいの事しか出来ませんからね。他にも私にやれる事があったら、何でも言って下さいね」


 洗濯じゃなく浄化だからだろうか?

 お店に並んでいる新品の服より綺麗になっているように思う。

 まるでゲームとかで宝物を見つけた時に出る、キラキラしたエフェクトがついているみたいだ。


 ん? 何故か一着だけたたんでおいてあるな。

 コンビニの制服だ。

 これも浄化してくれたのか……

 捨てようと思って除けておいた奴なんだけど。

 

「あっ、それは……」

「何でこれだけたたんであるんですか?」

「えっ、そこですか? ん~、他の衣服の中に下着とかがあったら、私に触られるの嫌かな~って思ったので、他はたたみませんでした」

「それは……僕の配慮が足りず、申し訳ございませんでした」

「いえいえ、圭君が気にしないなら全然いいんです。明日からは全部たたんでおきましょうか?」

「さすがにちょっと恥ずかしいので、たたまなくて大丈夫です」


 特に何も考えずに浄化をお願いしてしまったけど、よく考えたら女性に対して失礼な事をさせてしまっていた。

 今日は反省する事が多い日だ……


「ハルさんはもうお風呂入りました?」

「いえ、私は自分を浄化しているのでお風呂も必要ありません」


 自分も浄化できるのか。

 でもお風呂は汚れを落とすだけじゃなく、疲れをとるためにも入った方がいいと思うんだけど……

 あの怪我のこともあるし、僕が入った方がいいとか言うのも失礼だと思うし……

 色々と難しい……


「僕は帰って来たらお風呂に入って寝る生活をしているので、必要であれば先に入って下さいね?」

「えっ? 圭君は帰ってからご飯を食べないんですか?」

「あ、すみません……ご飯作りますね。いつもこの時間は作らないので忘れていました」

「いえ、私は特にお腹が空いているわけではないので大丈夫ですが、圭君はいつも1日2食生活なんですか? お仕事がお休みの時も?」

「そうですね。バイトの有無で習慣を変えるのもどうかと思いますし、寝る直前に食べるのは体に良くないと思うので、いつも食べないんですよ」

「それも体に良くない気がしますが……」


 僕はいつも、昼に起きた時と夜の出かける前の2回しかご飯は食べない。

 でもハルさんも昨日から僕と同じタイミングで食べているので、今食べてもらっておいた方がいいか?


「ハルさんは僕に合わせなくていいので、お腹が空いたら好きに食べて下さいね。今、作っておきましょうか?」

「いえ、そもそも私は空腹になる事がないので、何日食べなくても基本的には大丈夫なんです」

「そうなんですか……」


 そういえば今までも、お腹空いてるかの確認もしないで作ってから、食べてもらっていた。

 ハルさんから"お腹が空いた"とは言われてはいない。

 もしかしてあまりご飯を食べないで生きてきたんだろうか?

 "何日食べなくても基本的には大丈夫"っていう発言も気になるし……


 本当は痛いのに大丈夫だと言ったり、食事を軽んじていたりする事から考えても、ハルさんはあまり自分を大切にしていないのかもしれない。

 危ない事を止めさせるのは無理でも、食事を食べてもらう事くらいは出来るはずだ。

 これからはご飯を先に作ってしまってから、食べてもらえるように誘導する事にしよう。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ