向上心
ハルさん視点です。
今日もパトロールに一区切りついたところで、圭君家に向かいました。
今日のお昼ご飯はなんでしょうか?
圭君の料理はどれも本当に美味しいですからね!
とても楽しみです。
あ、でも……考えてみたら、受験勉強に忙しい圭君にご飯を作ってもらって、特にやる事もなく暇な私が食べさせてもらっているのは、おかしいですよね?
私が作って、圭君をサポート出来るようにならないと!
ただ困った事に、私は料理が出来ません。
そして私が頼れる人達の中に、料理が出来る人もいません……
……なんか、前もこんな事に悩みましたね。
そして、圭君にお菓子作りを教えてもらう日々が始まったんですよね。
懐かしいです!
今回も圭君に教えてもらいましょうか!
そして私がご飯担当になれば、圭君は他の事に集中出来ますからね!
圭君と一緒に作るというのも楽しそうです!
そういえば、圭君って何が好きなんでしょうか?
いろんな料理を作ってますし、料理がお好きなご様子ですが、ちゃんと自分の好きな物を作っているのでしょうか?
私に合わせすぎていませんかね?
そうこう考えているうちに、圭君の家に到着しました。
こうやって圭君の家にお邪魔するのが、これからもずっと私の日課になるんですね……
あぁ、あまり考えると、顔がおかしくなってしまいます。
気持ちを切り替えて……
「お邪魔しますー。圭君、おはようございます」
「おはようございます、ハルさん」
「わゎっ!」
鳥から人に戻ると、急に圭君に抱きしめられてしまいました……
折角気持ちを切り替えて、おかしい顔を戻したというのに、こんな事をされては、余計におかしくなってしまいますよ……
でも本当に、急にどうしたのでしょうか?
「あの、圭君?」
「はい?」
「何かありました?」
「いえ……強いて言えば、ハルさんが来てくれたのが嬉しかった事くらいですかね?」
「これからも、ずっと来ますよ?」
「はい。ハルさん、嘘はダメですからね!」
「もちろんです!」
私が記憶を消したりなんてしたから、圭君もまだ少し不安定なんですね。
昨日も泣いてくれましたし……
圭君が落ち着けるようにと、私からも抱きしめ返しました。
とても安心感があって、暖かいです。
ずっとこのままでいたいですね……
ですが、流石にダメですよね。
「あの、圭君……?」
「どうしました?」
「えっと……そろそろ、落ち着きました?」
「そうですね」
なんでしょう?
私の質問に返事をしてくれる圭君の雰囲気は、不安定という感じがしません。
寧ろ最初から落ち着いていたような、そんな感じです。
「出来ればずっとこうしていたいんですけど……」
「はい……」
圭君が離してくれたので、私も離れます。
でも圭君は凄く残念そうで……
ずっと私の事を抱きしめていたかったかのような……
もう! こんな顔、圭君に見せられません!
きっと今の私は、茹で蛸のようなおかしな顔をしていますから!
全く、圭君には困ったものです!
「圭君は、結構衝動的な行動が多いですよね……」
「そうかもしれません」
圭君自信でも、多少の自覚はあるみたいですね……
まぁ、自覚があるのなら……
それはそれで恥ずかしいのですが……
「あ、ハルさん。今日は和食にしてみたんです。キャベツは使ってなくて、申し訳ないんですが……」
圭君はお昼ご飯をテーブルに用意しながらそう言ってくれました。
確かに今日は、キャベツも入っていませんし、全体的に野菜もそんなに多くはないメニューのようですね。
いつも私の為にと、野菜をふんだんに使ってくれているので、こういうのは珍しい気がします。
もしかして、今日は圭君の好きな食べ物なんでしょうか?
「そんなに毎日キャベツを使わなくて大丈夫ですから。圭君は和食が好きなんですか?」
「え? あぁ、そうですね。和食も好きですし、洋食も好きですよ?」
和食も洋食もですか……
確かに圭君の料理の幅は広いですよね。
「ハルさんは、和食か、洋食か……特に好きなものはありますか?」
「うーん? 特には?」
「中華とか、イタリアンとか……」
「何でも好きですよ?」
私が和食を好きかを聞いたからか、私の好きな料理のジャンルを聞かれました。
また私の好物を作ってくれようとしています。
トルコ料理! とかって言ったら、本当に作ってくれそうですよね。
「明日は、中華料理に挑戦してみますね」
「わぁ、楽しみです! でも圭君? 無理してませんか?」
「全然大丈夫です。今は勉強しかやることがないので、料理がいい気分転換になるんですよ。だから、ハルさんも食べたいものがあったら言ってくださいね」
「食べたいもの……」
今ここで、圭君が好きな料理を聞けば、圭君は自分の為に料理をしてくれますかね?
でも圭君は、気を遣い過ぎる傾向にありますし、自分の好きなものばかりになると、それを気にしてしまうかもしれません……
「ハルさん、何かあるんですか?」
「あの……」
「はい?」
でもやっぱり、圭君に好きな料理を食べてもらうことが大切ですね!
私の事はもう十分なので、これからは圭君の為のご飯にしていきたいですから!
「圭君の好きな料理がいいですっ!」
「え?」
「圭君はいつも、私がキャベツを好きだからと、キャベツ料理をたくさん作ってくれました。でも、圭君が好きな料理は作ってないじゃないですか!」
「そんな事もないですけど……」
「いえ、あります!」
圭君の料理はどれも美味しいですが、同じ物が続く事はありませんでした。
残っても違う料理にアレンジしてくれていましたし、私の為に色々と考えてくれていたんだと思います!
だからこそ、これからは私も頑張りたいです!
「私は圭君がどんな料理を好きなのかとか、全然知らないんです! だから、ちゃんと知っておきたいなって……それと……」
「それと?」
「も、もし、私にも作れそうなのがあれば、作り方を教えていただければと……」
私がそう言うと、圭君は優しく笑って、
「ハルさん、ありがとうございます。僕、好きな料理がいっぱいあるんですよ。だから、これからは一緒に作ってもらってもいいですか?」
と、言ってくれました。
「はいっ! ありがとうございます」
これからは私も、圭君の為に色々な料理を覚えていきたいと思います!
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




