調査
圭君視点です。
朝起きて、朝食を食べ、勉強を少しやっておく。
お昼前くらいに買い物に行き、帰って来てからすぐに昼御飯を作った。
今日は、キャベツを一切使っていない和食だ。
ご飯と味噌汁と焼き魚と肉じゃがの、焼き魚定食的なものを用意してみた。
ハルさんの好物だと分かっているキャベツをあえて使わない事で、ハルさんの好きなものの傾向を探っていこうと思う。
でも、あまりあからさまだと、好きなものを探っているとバレてしまうかもしれないので、明日はちゃんとキャベツを使おう……
昼御飯を作り終わって、また勉強をしていると、
「お邪魔しますー。圭君、おはようございます」
「おはようございます、ハルさん」
「わゎっ!」
と、今日もハルさんが来てくれた。
これが、これからもずっと当たり前である事を信じて、人の姿に戻ったハルさんを抱き締める。
「あの、圭君?」
「はい?」
「何かありました?」
「いえ……強いて言えば、ハルさんが来てくれたのが嬉しかった事くらいですかね?」
「これからも、ずっと来ますよ?」
「はい。ハルさん、嘘はダメですからね!」
「もちろんです!」
ハルさんの方からも抱き返してくれて、凄い幸福感がある。
それにちゃんと言質も取った。
だからもう大丈夫だ。
でも、離したくないな……
どうしようか?
「あの、圭君……?」
「どうしました?」
「えっと……そろそろ、落ち着きました?」
「そうですね」
離して欲しそうな感じで聞いてくるハルさん。
でも、腕は僕の背の方に回ったままだ。
ハルさんも離れたい訳じゃないんだと思うと、より一層に離したくなくなってしまう……
「出来ればずっとこうしていたいんですけど……」
「はい……」
仕方なく腕の力を弱めると、ハルさんが離れていってしまった。
しかも、僕にそっぽを向いている……
でも、顔が赤いのがわかるので、かなり照れているんだろう。
「圭君は、結構衝動的な行動が多いですよね……」
「そうかもしれません」
思い返すと、結構衝動的にハルさんを抱き締めているな……
悪い事だとは思わないけど、自分で自分を抑えられないのは、今後困るかもしれない。
ちょっと反省しておこう……
「あ、ハルさん。今日は和食にしてみたんです。キャベツは使ってなくて、申し訳ないんですが……」
「そんなに毎日キャベツを使わなくて大丈夫ですから。圭君は和食が好きなんですか?」
「え? あぁ、そうですね。和食も好きですし、洋食も好きですよ?」
まさか、ハルさんの方から聞かれるとは思ってなかったな。
でも、これで僕も聞きやすい。
「ハルさんは、和食か、洋食か……特に好きなものはありますか?」
「うーん? 特には?」
「中華とか、イタリアンとか……」
「何でも好きですよ?」
やっぱりダメか……
そもそも食事にあまり興味を持たない人だからな……
やっぱり、探っていくしかないな。
「明日は、中華料理に挑戦してみますね」
「わぁ、楽しみです! でも圭君? 無理してませんか?」
「全然大丈夫です。今は勉強しかやることがないので、料理がいい気分転換になるんですよ。だから、ハルさんも食べたいものがあったら言ってくださいね」
「食べたいもの……」
ん? ハルさんならきっと、"ありがとうございます、でも大丈夫ですよ"って言うと思ったのに、以外にも何かに悩んでる……
本当に食べたい料理があるのか?
だったら、聞き出さないと!
「ハルさん、何かあるんですか?」
「あの……」
「はい?」
少し言いにくそうだな……
そんなに難しい料理なのか?
僕でも作れるレベルのものだといいけど……
「圭君の好きな料理がいいですっ!」
「え?」
「圭君はいつも、私がキャベツを好きだからと、キャベツ料理をたくさん作ってくれました。でも、圭君が好きな料理は作ってないじゃないですか!」
「そんな事もないですけど……」
「いえ、あります!」
確かにずっと、キャベツ料理でって考えてたからな……
「私は圭君がどんな料理を好きなのかとか、全然知らないんです! だから、ちゃんと知っておきたいなって……それと……」
「それと?」
「も、もし、私にも作れそうなのがあれば、作り方を教えていただければと……」
少し照れながら、そう言ってくれたハルさん。
僕がハルさんの好きなものを探ろうとしていたのと同じように、ハルさんも僕の好きな食べ物を知ろうとしてくれていたんだ。
その上、ハルさんが作ってくれるなんて……
嬉しすぎて、おかしくなりそうだ。
「ハルさん、ありがとうございます。僕、好きな料理がいっぱいあるんですよ。だから、これからは一緒に作ってもらってもいいですか?」
「はいっ! ありがとうございます」
ハルさんは、とても可愛い笑顔で笑ってくれた。
また抱き締めたかったけど、終らなくなってしまうので、ここは頑張って堪えておく。
ちゃんと衝動を抑えれるようになっておかないといけないし……
そういえば、ハルさんと出会ってすぐの頃、料理にも興味をもってもらえたらいいなって、思ってたんだ。
あの目標が、こんなに嬉しい形で達成出来たんだと思うと、あの時の自分に教えてあげたいと思った。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




