お話し
ハルさん視点です。
圭君の試験が終わって落ち着いたら、圭君のご実家の方へとお邪魔させてもらうことになりました。
私が一緒に行けるという事を、圭君は本当に喜んでくれているようで、私も嬉しいです。
でも、本当に大丈夫なんでしょうか?
圭君が大丈夫だと言ってくれているので、大丈夫なんだろうとは思いますが、私の事情というのはそう簡単に話すことも出来ませんし……
そもそも圭君が受け入れてくれるのが早すぎるだけで、普通はもっと混乱されますよね……?
そう考えるとやっぱりご家族と会うのは……
「ハルさん?」
「あ、すみません……」
「本当に、軽い気持ちで来ていただいて、大丈夫ですからね?」
「はい。ありがとうございます」
圭君は変わらず優しいですね。
大丈夫だと圭君が言ってくれているので、大丈夫だということは分かっているのですが、やっぱり不安は大きいですね……
これが挨拶に行く時の緊張というものでしょうか?
圭君のお父さんとお母さんに、嫌われないように動かないといけませんね……
こういう時に、相手の考えていることが分かるといいなぁと思ってしまいますよね?
今からでも、"人の心を読む力"を覚えましょうか?
そうすれば、嫌われない行動をするのも楽に……
……って、最低! 最低ですね、私は!
全く、何を考えているんですか!
私達の力というのは、私欲に使ってはいけないんですよ!
「ハルさん?」
「ハルちゃん、大丈夫か?」
「すみません……ちょっと緊張で……」
「まだ先の事じゃろうに……」
「そうですよね……」
「ハルさん。ちょっと待って下さいね」
圭君は携帯で電話をかけ始めました。
どうしたんでしょうか?
「あ、母さん? 今、大丈夫かな?」
えっ、お母様ですか?
もしかして……
「うん。話してた僕の大切な人、今度帰る時に一緒に来てくれる事になったから。……うん。ちょっと変わるね」
か、変わるって……
「ハルさん、僕の母なんですけど、全然気にしなくて大丈夫なので、少し話してもらえませんか?」
「は、はい……」
圭君の携帯をお借りして、
「あ、あの……」
と、私が言うと、
「はじめまして。いつも圭がお世話になっております。圭の母で、純蓮と申します」
と、挨拶をされました。
とても優しい声色の女性ですね。
「いえ、私の方がいつもお世話になっていまして、あの……その……」
「ふふっ、緊張されてるのかしら? 敬語が堅かったわね? 落ち着いて、深呼吸しましょうか?」
「あ、すみません……ふぅ。あの、私はハルといいます。いつも圭君には本当にお世話になっていまして……」
「ハルちゃんね、ありがとう。あなたとはたくさんお話をしたいわ。まだ少し先だけれど、会える日を楽しみにしているわね」
「ありがとうございます」
「あっ、そろそろごめんね。仕事に戻らないといけないから」
「はい。私もお会い出来る日を、楽しみにしていますね」
「ありがとう」
そうして純蓮さんとの電話は終わりました。
「圭君……ありがとうございました」
「いきなりですみませんでした。でも、少しでも話しておけば、緊張も和らぐかなと……」
「そうですね。かなり和らいだように思います」
「それならよかったです」
確かにさっきまでの緊張は大分和らぎましたね。
純蓮さんは、とても話しやすい人でした。
まだお会いしたこともない私に、とても好意的で、なんと言うか安心感がありました。
もう心を読みたいとか、そんなバカな発想もしていません……
そういえば、圭君は私達の力に"人の心を読む力"があるのを知っていたんですよね。
さっき圭君が私にも心が読めるんだと誤解した時は、圭君から一切の嫌悪感を感じませんでした。
それに、私にその力はないと言った時も、特に安堵しているようにも見えませんでしたが、圭君は私に心が読まれていても、気にしないのでしょうか……?
それを考えると、かなり恥ずかしいですね……
……あれ? でも、ミオの時はどうだったんでしょうか?
圭君はミオに心を読まれても、気にしないのでしょうか?
「あの、圭君……?」
「はい?」
「圭君は心を読まれるという事について、どう思いますか?」
「え? ハルさんになら、どんだけでも読んでもらっていいですけど? あ、母さん達の心を読む話ですか?」
「もし読めたら、ご迷惑お掛けせずに済むかと思ったのですが……あっ! もちろん会社的にアウトなのでしませんよ!」
ちょっと気になって聞いてみると、圭君は何で私がそんな事を聞いたのかを察してくれました。
でも、ちょっと聞きたい事とはズレてます……
直接的に聞かない私が悪いんですが……
「母さん達がどう思うのかまでは分かりませんけど、そんなに気にしなくて大丈夫ですからね?」
「あの、はい……それは、さっきの電話でそう思いました……」
「まだ不安ですか?」
「その……圭君は、ミオに心を読まれていて、どう思ったんですか?」
「え?」
圭君は私だから気にしていないのか、誰に読まれても気にしないのか……
「んー? 大変そうだなって、思いましたけど?」
「大変そう?」
「ミオさんは、僕に説明しながら、僕の質問にも答えていたのに、さらに心を読んでいた事になりますからね。凄く大変そうじゃないですか」
「では、読まれた事自体は、そんなに嫌ではなかったんですね……」
「それは、ちょっとは嫌でしたよ? でも謝ってくれましたし、それがミオさんにとって必要な事なら仕方ないかと……」
「ミオに必要?」
「僕がハルさんと一緒にいてもいいかどうかを判断して、ダメそうなら記憶を消そうとしていたそうです。一応ちゃんと認めて下さったみたいですから、僕は嬉しく思いますよ」
記憶消そうとしていた? ミオがですか?
あぁ……そういう事ですか……
ミオは闇堕ち担当ですからね……
これは少し、ミオと話し合った方がよさそうですね……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




