核
圭君視点です。
ハルさんに力の事や、歳の差の事を話してもらいながら歩いて、土地神様の御神木の場所に到着した。
するとすぐに、
「おぉ! ハルちゃん、それに圭君、よくきたの」
と、土地神様が姿を現して下さった。
紅葉狩りの時以来だけど、とても久しぶりな気がするな。
それに今、土地神様は僕の事を"圭君"と呼んでくれた。
今までの"人の子"という呼び方じゃない。
これは、僕はハルさんの事情を知る、"ただの人間"ではない存在だと、認めてもらえた事になるのだろうか?
「神様……あの、その……」
「神様、お久しぶりです。僕はハルさんとお付き合いさせていただく事になりましたので、ご挨拶に伺いました」
「そうかそうか、ちゃんと前に進めたようじゃな」
「はい。本当にありがとうございました」
顔を真っ赤にして、上手く言葉が紡げていないハルさんに代わって、僕が土地神様へと報告をした。
でも、この報告より先に僕の事を"圭君"と呼んだという事は、土地神様は分かっていたんだろう。
誰かから聞いていたのかな?
やっぱりミオさんだろうか?
「これで圭君も晴れて"協力者"じゃな」
「協力者ですか?」
「おや、まだ聞いとらんかったか?」
「あ、はい。まだちゃんと説明していなくて……」
ハルさんはまだ照れているみたいで、顔がほんのりと赤い。
でも、誰かにこうして報告して、祝福してもらえることが、こんなに恥ずかしくて、嬉しい事だとは思ってなかったな……
きっとハルさんから見える僕も、顔は赤いんだろう。
「あの、圭君。協力者っていうのは、私達の使命をお手伝いしてくれる人の事を言うんです」
「使命の手伝い? えっと、ハルさんの仕事の、世界の浄化とか歪みの正常化とかを僕が手伝っていいって事ですか?」
「まぁ、そんな感じですね。ですが、安心して下さい。この世界での協力者の仕事は、そんなにありませんからね!」
「え、そうなんですか……」
とても可愛い笑顔でハルさんは安心して下さいと言ってくれたけど、僕としてはハルさんの仕事を沢山手伝える方が嬉しいんだけどな……
まぁ、ハルさんはあまり僕を巻き込みたくないと思っているみたいだし、仕方ないか……
僕がもっと、頼りがいのある人になればいいだけなんだから。
「それでも僕に手伝える事があったら、何でも言って下さいね。折角その協力者というのにしていただけたんですから、ちゃんと協力したいです」
「そんな、協力者になったからとか、変な使命感は持たなくて大丈夫ですよ! この世界はとても平和で、バランスも安定しています。なので、私の仕事もほぼないくらいですから」
そういえばミオさんも、この世界は多少の治安は悪いだけで、とても平和だと言っていた。
他の世界って本当にどんな所なんだろう?
少し怖いな……
「世界の"核"もしっかりとした結界で守られていて、土地神様達も居て下さいますからね!」
「そうじゃの~。ハルちゃん達のおかげで世界はずっと安定しておるからの。本当にありがとうな」
「いえいえ、皆様の協力があってこそですよ!」
とても楽しそうにハルさんと土地神様は話をしている。
話の弾んでいる所を申し訳ないと思いながら、
「あの、核って何ですか?」
と、質問してみた。
いくら仕事がほとんどないと言われたとしても、僕だってちゃんと知っておきたい。
分からない事を分からないままで放っておきたくはないから。
「核というのはですね、世界の穢れや淀みが溜まる場所ですね。溜まり過ぎると闇を発生させてしまい、その闇が増えすぎると世界が壊れてしまうんですよ」
「あぁ、昨日教えて下さった、ハルさん達に担当世界が決まっていて、世界が壊れないように常に浄化しているっていう、ハルさんの仕事の話ですね」
「そうです! その仕事をする場所が、世界の核がある所なんですよ。私達の使命というのは、世界の核を保つ事ですから」
つまり、この世界でのハルさんの職場が、世界の核がある所って事なんだな。
ハルさんは定期的にそこへ行かないといけないのか……
「あの、この世界の核はどこにあるんですか?」
そんな凄い事を聞いていいのかというのを若干悩みつつも、この世界の核の場所を聞いてみた。
僕の質問に対し、ハルさんはとても楽しそうに笑って、
「今いる、ここですよ」
と、教えてくれた。
「え? ここですか?」
「はい! まさに、ここです!」
これは、この御神木が世界の核だという事だろうか?
でも、この御神木って、土地神様の本体だったんじゃないか?
という事は、土地神様が核なんだろうか?
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




